ウエス・アンダーソン監督の作品はおもしろいのだが、かなり微妙だ。おもしろいと思ったなら、確かにおもしろいのだが、何も感じないで終わらせたなら、何が何だかよくわからない、ということにもなりかねない。それはわかる人にはわかる、なんていうちょっとスノッブな感じ方ではなく、人様々なんで、感じない場合は何も思わない、という実に単純なことなのである。わからない人は鈍感だ、なんていうわけではない。現に僕も今回はあまりピンと来なかった。でも、先の2本はあんなに乗れたのである。その差は作品の完成度ではない、と思う。今回の作品の方が『ライフ・アクアティック』よりいいという人はきっと多いだろう。趣味の問題とも言い切れない。だから微妙だ、というのである。
『ロイヤル・テネンバウムズ』からこっちその曖昧さがどんどんパワーアップしてきている。今回のオープニング短編(ホテルの一室での三男とその恋人との再会を描く)を見て、えっ?と思うが、それはただそれだけで終わって、そのまま本編に突入する。あれなんだったんだ?なんて考える暇も与えない。次男がダージリン急行に飛び乗ったシーンから始まり、3兄弟の久々の再会。この列車の中での、彼らのいきなりのぶつかりあいと勝手きままな行為の数々が描かれる。この前半はなんだか少し単調で乗り切れないが、後半、列車から放り出された3人が、川で溺れている3兄弟を助けて、彼らの暮らす村に導かれていくところからラストまではとてもテンポがいい。
たった91分の作品(プロローグの13分の短編は除く)なので、一気に流していってもあっという間のことになるのだが、前半はゆっくり見せて、後半は話を一気に広げていき、畳み込むので、メリハリのある映画になっている。
ウエス・アンダーソンはストーリーを追っかけていくタイプの作家ではないが、後で考えると後半なんて盛りだくさんになっている。なのに、ストーリーはあまり印象に残らない。インドへの旅を通して、父への思いとか、母への気持ちが、それぞれの勝手な生き方と呼応して描かれていく。こんなにもメリハリのある話なのにそれをここまでフラットな印象を残す映画に仕立てるなんて彼らしい。
とてもぼんやりした映画で、いろんな要素がてんこもりされているのに、何もなかったような印象を残す。父を失い、インドで暮らす母に会いに行ったのに、母は再会した後、消えてしまう。喧嘩ばかりしていた兄弟が仲良くなったりして、心がひとつになったりするように見えて、きっと彼らは変わらないだろうな、なんて思わせる。なんだかへんてこな映画なのだ。ハートフルコメディーなんていう言い方はこの映画には出来ない。
『ロイヤル・テネンバウムズ』からこっちその曖昧さがどんどんパワーアップしてきている。今回のオープニング短編(ホテルの一室での三男とその恋人との再会を描く)を見て、えっ?と思うが、それはただそれだけで終わって、そのまま本編に突入する。あれなんだったんだ?なんて考える暇も与えない。次男がダージリン急行に飛び乗ったシーンから始まり、3兄弟の久々の再会。この列車の中での、彼らのいきなりのぶつかりあいと勝手きままな行為の数々が描かれる。この前半はなんだか少し単調で乗り切れないが、後半、列車から放り出された3人が、川で溺れている3兄弟を助けて、彼らの暮らす村に導かれていくところからラストまではとてもテンポがいい。
たった91分の作品(プロローグの13分の短編は除く)なので、一気に流していってもあっという間のことになるのだが、前半はゆっくり見せて、後半は話を一気に広げていき、畳み込むので、メリハリのある映画になっている。
ウエス・アンダーソンはストーリーを追っかけていくタイプの作家ではないが、後で考えると後半なんて盛りだくさんになっている。なのに、ストーリーはあまり印象に残らない。インドへの旅を通して、父への思いとか、母への気持ちが、それぞれの勝手な生き方と呼応して描かれていく。こんなにもメリハリのある話なのにそれをここまでフラットな印象を残す映画に仕立てるなんて彼らしい。
とてもぼんやりした映画で、いろんな要素がてんこもりされているのに、何もなかったような印象を残す。父を失い、インドで暮らす母に会いに行ったのに、母は再会した後、消えてしまう。喧嘩ばかりしていた兄弟が仲良くなったりして、心がひとつになったりするように見えて、きっと彼らは変わらないだろうな、なんて思わせる。なんだかへんてこな映画なのだ。ハートフルコメディーなんていう言い方はこの映画には出来ない。