近未来の架空の国(といっても、充分、日本だけど)を舞台にしたコメディ。戦争が終わって荒廃した国を復興させるためにひとりのアイドルが奮闘する。戦後の何もない焼け跡から生まれた歌。山崎モモエは、山口百恵ではなく美空ひばりがモデルになるべきだろうが、さすがにそれはない。
アイドルとテロを中心に据えて、今の日本にむけての皮肉が描かれる。アイドルを作ることが、国の復興につながるというコンセプトのもと、そこに当然政治が絡んでくるという図式から、もっとシビアでリアルな怖い話にも出来たのだが、世界観の提示も含めて、作品全体の作りがゆるいから、軽いコメディの域を出ない。
戦後初のスーパーアイドルを主人公にして、彼女が国民を幸せにするために歌う。そんな単純な事実がどこにつながっていくのか。彼女の純粋な想いは周囲の思惑のなかで徐々にゆがめられていく。反政府軍ゲリラが彼女を拉致して、現政権にNOを突きつける。だが、彼女がいなくなったなら、簡単に次の新しいアイドルを作ればいい。首のすげ替えなんかいくらでもできる。国民を騙すことなんて簡単なことだ。
こういうお話自体はパターンだけど、悪くはない。90分飽きさせることなく見せるエンタメ作品だ。だけど、それだけでは寂しい。