
6人の作家たちによる短編連作アンソロジー。共通するテーマはタイトルにあるように、「行きたくない」という気持ち。それがエスカレートすると「生きたくない」になるのは必定のことだ。それぞれの作品が様々な角度から「行きたくない」想いを切実に語る。僕も少し同じような気分だったから、わかる。仕事に行きたくない、という想いを抱えながら電車に乗る。その電車の中でこの本を読む。もちろん、共感する。そして、職場にたどりつく。お気に入りの渡辺優や小嶋陽太郎、奥田亜希子が参加しているので読んだのだが、6つとも面白い。(他2名は阿川センリと住野よる)
ストレートに学校に行きたくない、とか、会社に行きたくないとか言われると、なんだかなぁ、と思うけど、そんなお話も交えて、どの話も切実に生きたくないにつながる可能性を秘めているのが怖い。引きこもりの話でもいいけど、それがただの甘えではなく、切実なものにつながるのも必定のことだ。ただ、それを単純な図式では描かない。奇をてらうわけでもない。実に巧みにドラマ作りをしてあるから、飽きささない。
誰もがさまざまな事情を抱えて生きている。他人からはわからない悩みや苦しみがある。そんなささいなことがどうしてそこまで自分を苦しめるのか、きっとあなたにはわからない。6つの短編が描く痛みはそんな痛ましさだ。それでいいんだよ、と言われた気分にさせられる。とてもやさしい気分になれる。