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映画・演劇のレビュー

ももの会『コイナカデアル』他

2024-08-07 17:59:00 | 演劇
深津篤史没後10年の記念イベント。盛りだくさんの内容でたくさんの観客、関係者を集めて行われた。深津さんを偲んで、彼のたくさんの作品を今一度思い出す。

森本洋史演出の中編作品の上演は楽しみだった。本格的な演劇作品としての上演のはずが、リーディング上演になったのは残念だ。キャストの3人はいずれも演劇関係ではなく、シタール奏者作曲家、アイドル(俳優)、現代美術家とある。

これを見ながら改めて深津作品は難しいということを再認識した。それは今まで何本も演出された森本さん本人も当日パンフに書かれている。言葉が流れていく。それを繋ぎ止めて作品化しなくてはならないけど、それはとても難しい。桃園会では当然いつも深津さんが自然にそれをしていたから気がつかなかった。あまりに当たり前で。だけどこの複雑な内面を抱く人たちの姿を作品として繋ぎ止めるのはあまりに困難なことだと思う。

今回戯曲を読む(本読みの時間)のコーナーで、これまで何度も見た(キタモト演出による初演も、もちろん深津演出も見た)『のたりのたり』を読んでいる秋津ねをさんたちのパフォーマンスを見ながら、「そうなんだ!」と改めて思わされた。彼女たちは深津戯曲と格闘していた。さらには『カエルデンチ』の一部を演じた桃園会の森川万里さんたちによるやりとりを見ながら、その軽やかで白熱する演技に魅了される。そうそう、こんなふうにして桃園会の芝居は演じられる。

この日は深津戯曲をまるで軽々と演出したジャブジャブサーキットのはせひろいちさんも来場されていたが、彼のように深津戯曲を自在に作品化するのはきっと至難の業なのだろう。この10周年を記念して、今年、さまざまな人たちが深津戯曲に挑戦するようだ。まるで大竹野没後10年の(ボツジュウ「没十」)時のようだ。僕が座った席の後ろにはその挑戦者であるカラフルの織田拓己さんや大阪新撰組の栖参蔵さんがいらっしゃる。実力者である彼らからどんな深津芝居が生まれてくるのかも楽しみである。

この日のイベントは1時から始まって夜の9時くらいまで続くみたいで、平日の昼間なのにウイングフィールドは満席だった。深津さんを偲んでたくさんの人が集まって、さまざまな話やパフォーマンスを繰り広げたことだろう。

残念ながら僕は家の事情から4時半くらいに中抜けさせてもらったから、後半はどうなったかわからない。桃園会のメンバーが仕切り、たくさんの支援者が見守るイベントはきっと幸せな時間をみんなに提供したことだろう。もちろん深津さん本人が1番喜んでいたはず。僕は初めてこの劇場で桃園会の芝居を見て、深津さんとおしゃべりをした夜を思い出していた。

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