これは短歌集。歌集はふだんなかなか読まないけど、なんとなく気になってこの本を手にとっていくつかを読む。なんだか心惹かれて借りてきてしまった。歌集なんて昔、俵万智の『サラダ記念日』が大ベストセラーになった時、以来かもしれない。(穂村弘は好きだけど)あれは革命だった。彼女は短歌を身近なものにした。正岡子規や松尾芭蕉並の革命、なんて言うとやはり大袈裟か。(ふたりは俳句、俳諧の人だけど)もちろん堀静香は俵万智とは違う。俵万智はわかりやすいし、共感するけど、堀静香はわかりにくいし、理解に苦しむ。(もちろんそんなものばかりではないけど)
当たり前だけど、俳句は季節詩であり、写生。短いからそれだけでは伝わらない。伝わらないくらいのものなのに余白がある。短歌は俳句よりは長いから,いろんなことが伝わる。はずなのに。堀さんの短歌は伝わらない。言葉が足りない。余白の余裕はない。31音の外にはみ出す。だから立ち止まってしまう。この先には何があるのかと。彼女の内面と目の前の現実。内と外のせめぎ合いが短い尺の中に描かれていく。