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映画・演劇のレビュー

『パール Pearl』

2024-08-05 16:36:00 | 映画

タイ・ウェスト監督、ミア・ゴス主演のホラー『X エックス』は期待外れの1作だったが、あの作品の続編がこれである。だからあまり期待してなかったけどA24作品だから、きっと普通じゃないし、なんだか前作とはまるでタッチが違うから少し気になっていた。

続編だと言われなくてはまるでそうとは思えないほど印象は異なる。あの暗くて重くて残酷だった作品とは打って変わってパステルカラーの明るくて悲しい物語に。シリーズ第2作だが、前作の60年前が描かれる。殺人犯パールの若き日の物語。

パールはミュージカル女優を夢見て農場から出ていきたいと願う若き人妻。厳格な母親と全身不随で自分では動けない父親の面倒を見て暮らす。戦争に行った夫の帰りを待つ日々。これがホラー映画だなんて最後までわからない。というか終盤になってようやく惨劇になってもなんか違和感がある。まだパステルカラーで極彩色の夢見る映画のままだ。

最初はアヒルを殺して、やがて母を殺し、父も、映写技師の優しい恋人だって殺してしまう。最後は自分の代わりにオーディションに受かった親友も。前作『X』はほとんど真っ暗な夜だったけど、本作はほとんどのシーンが明るい昼間の家の中。そこで殺していく。

パールは『オズの魔法使』のドロシーみたいな女の子。夢見る少女のまま大人になった。カカシさんとダンスを踊るシーンがすごい。だんだん狂気に至る過程が見事に描かれて怖い。ダンスからやがてカカシに跨がって擬似ファックをするシーンにつながる。

優しい女性がまさかの殺人鬼になる。ラストの帰還した夫との再会シーンで見せる笑顔がすごい。延々と彼女の顔のアップが続く。なんとそこにエンドクレジットが流れる始末だ。ミア・ゴスの目には涙が。やがてそれも止まる。




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