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2009年の入江悠監督デビュー作。もう15年になる。今ではメジャー映画でも引っ張りだこの彼はこの作品で一躍名を挙げた。今見たらまだまだ稚拙な見せ方をする映画だがここに彼の原点がある。力強いラップのシーンも含めてワンシーン、ワンカットで見せていく気合いの入った映画だ。
埼玉のど田舎で鬱屈して暮らすラップシンガー、SHOGUNのメンバーの3人。彼らの日常が綴られる。東京に出てAV女優になっていた幼なじみとの再会。地元の活性化のために場違いな町内会の集まりに呼ばれてラップを披露して顰蹙を買う。仕事もなく、ふらふらする日々。デブで内気な主人公に寄り添って田舎暮らしの何もない退屈と鬱屈が交錯していく。ラストの食堂のシーンはいささか恥ずかしい。あまりにあからさますぎる。だけど、あれがしたかったのだ、という想いは確かに伝わってくる。
今年最新作『あんのこと』では原点帰りしてドキュメンタリータッチで優れた作品を作った。そんな入江監督のまさに原点であるこの作品を見て、器用に商業映画をこなしているように見える今の彼とは違う初々しさに驚く。さまざまな作品を手掛けながら作家としての自分を模索する彼が次に何を手掛けるのか、楽しみだ。