前作から30年後。あの小説の(まだ子どもだったふたりの)子どもたちが今回の主人公。2010年の現代を舞台に、10歳から11歳へと成長する二人の少年少女を描き、お話は2011年3・11に向かう。絵とりら。ふたりの交互の語りでお話は続く。
子どもだけれど、子どもだから、凄いスピードで成長している。体も心も急成長。だからそんな変わりゆく自分たちに戸惑う。絵は男の子だから少し鈍感だけど、りらは女の子だから変化に敏感だ。
公園で泣いていた19歳のメイと友だちになる。メイは大学生だけど、りらより幼いところもある。大人って感じはしない。
日常のスケッチを通して気がつくと少しずつ大人になっていくふたり。4年生という微妙な年齢からスタートして翌年の春先に。
終盤になるクライマックス『ふたりの夜』で、ふたりは父や母とふたりの母校である欅野高校に行く。そこでやまもとさんたちや大ネズミのグリクレルと出会う。大切なものを探す。それまでとタッチが変わり、お話は核心に迫る。いきなり、東日本大震災、さらには10数年後、そしてふたりの孫であるさくらの話に。怒濤のように一気に終わる。1年間のふたりの話は前作を含む4世代の話へとつながる。3・11で日本は終わったと思ったりらは、その後の時間を生きる。
1年って大きい。2010年に小学4年という時間を生きたふたりのドラマを通して未来を見つける。