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映画・演劇のレビュー

中脇初枝『きみはいい子』

2013-04-19 21:56:47 | その他
これはキツイ。5話からなる短編連作なのだが、いずれの話も痛ましい。ここに登場する子供たちと、大人たちが、それぞれ今ある状況の中で、ただあるがまま受け入れて生きている。

給食費を払えない(払わない)親を持つ子供。家でも満足な食事を与えられていないから、給食が一番の楽しみなのだが、心ないクラスメートは、おかわりする彼を糾弾する。そんな生徒を持つ担任は、やがてクラスを学級崩壊させる。子供を虐待する母親は、かつて自分も母親から虐待されてきた過去を持つ。親から愛されないで育った子供はどうなるのか。さまざまな大人と、同じように様々な子供たちが、ある街を舞台にして、繰り広げるドラマは、それでも、みんないい子だから、と言ってあげるしかない。

ここではたくさんの世代の大人たちが、子供たちと向き合うさまが描かれる。さまざまな時代が描かれる。たった5つの話なのだが、なんだかとてもたくさんのドラマをそこに見る。親と子なのにこんなにも距離がある。わかりあうことは難しい。でも、あきらめるわけにはいかない。どうしようもない、とは言いたくはない。


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