
今更書くのも何なんだが、今年の1月、リンチが亡くなった。あれから3ヶ月が経つ。先日ビリー・ワイルダーの『アパートの鍵貸します』を見てふとリンチを思い出した。リンチはあの映画が好きだったらしい。あれを再見した時、僕はテリー・ギリアムの『未来世紀ブラジル』を思い出した。あれは今見たら50年代のアメリカが近未来の世界に見えるSF映画だった。
さらに先週、坂本サクの2作品を見て、やはりリンチを思った。そんなことで改めて今デビット・リンチって何だったのか、と考えている。(キネマ旬報はディヴィットと表記しているけど、僕はやはり昔ながらのデビットがいい)
そして、昨日読み終えた村田沙耶香『世界99』。これを読みながらリンチが映画化したらきっと面白い作品になるだろうな、と思った。
最初に見た『エレファントマン』は確かに衝撃的な映画だった。だけどほんとの驚きは『イレイザーヘッド』だ。大学の頃、授業後の河原町、菊映で見た。なんとクロネンバーグの『スキャナーズ』と二本立だったのだ。ふたりの人生観を揺るがす映画作家に同時に出会ったあの一日を忘れない。
『イレイザーヘッド』。こんな悪夢はなかった。あれからずっと僕はリンチの映画はすべて封切の劇場で見ている。リンチには暗闇が似合う。昨年スピルバーグの『フェイブルマンズ』で俳優リンチに出会ったのが最後となった。なんと彼はジョン・フォードを演じた。だけど、最後は映画作家リンチの作品を見たかった。