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毎回渾身の長編を連打する角田光代の最新作は67年生まれの男(角田さんと同い年)と同年に子供を産んだ女(戦後すぐの生まれで、たぶん角田さんの母親世代)のふたりを主人公にして彼らの辿り着く人生を描く。
99年の7の月、恐怖の大王が落ちてくるというノストラダムスの予言を信じた少年時代から話は始まる。女は健康食品を信じて自然食品を信奉する。
壮大なクロニクルである。どこにでもいるような子供と母親。60年代に生まれ、生きた。前半は99年までの軌跡を凄いスピードで追いかけていく。交互に描かれる世代の違う、全く接点のないふたりのドラマ。少年は32歳になり、女は50になる。
後半の第二部ではいきなり17年後に飛ぶ。2016年。話は大きく展開し、ようやくふたりが出会う。なんと300ページを越えてからである。(420ページまであるけど)離婚して40代になった飛馬と60代の不三子は子ども食堂のボランティアで出会う。そこから先、なんとお話はコロナ禍に突入する。ワクチン接種の是非を巡り、フェイク情報に翻弄される中、人は何を信じて生きるのか、に迫る。虐待を受けている恐れのある少女を接点にしてふたりが向き合うラストはスリリングだ。箱舟に乗るか否かの選択に象徴させて、2020から2022年を描き、さらには集中豪雨からの避難を巡るクライマックスまで、クロニクルは確かな今を、さらにはこの先の未来を照射する。