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映画・演劇のレビュー

大阪新撰組『誰ソ彼』

2024-05-21 07:45:00 | 演劇

昨年に引き続いて座長である南田吉信の新作が上演された。今回も3話からなるオムニバス・スタイルの連作長編。学校を舞台にしたSFホラー・スタイルの作品。完全に前作の流れを組むスピンオフ作品というか、続編。設定は同じだが、今回は前作よりタッチが軽い。シックスという超能力保持者が蔓延る世界。ダブルという超能力に、もちろん前作で描かれたサードもあるし、だいたい人口の90%が超能力保持者だから、そんなのは超能力ではなくただの能力。もうそれは当たり前の個性のひとつでしかない。そんな時代の学校生活を教師の側から描く。

1話は引きこもりの生徒の母親が懇談にやって来るのを待つ担任の話。やって来た母親との面談。母親は何故かぬいぐるみを持参してくるが。これはちょっとしたホラータッチ。古川智子が不気味な保護者をさらりと演じた。
 
次の話はその引きこもりの生徒。遡って1話の生徒の昨年の話だ。家にやって来てドア越しに話をする1年時の担任との会話。担任は声だけ。

最後は一気に時が経って母校の教師になった彼(引きこもりだった彼)が学年団の先生たちと次年度のクラス分けをする話。1話の担任だった先生もいる。彼は彼女と同じ学年を受け持っている。
 
前作と同じ設定だが、前回程のインパクトはない。怖さがないからだ。軽さと怖さのバランスが悪いから中途半端な作品になった。死者が見える(『シックスセンス』)という能力が生かされてない。さらにはダブル(もうひとりの自分が見えてしまい、やがてその自分に侵食されるかもしれない)の恐怖も表面的にしか描かれない。
 
オチになる虎になる話も(もちろん『山月記』だけど)含めて収めどころが浅いからだ。彼らにとってこの能力がどんな影響を及ぼしたか。もう一歩踏み込んで描くとよかったのだが、あまりに軽い。もちろんこの軽さが持ち味なのはわかっているけど、それが生かしきれてないのが惜しい。次回の完結編は(かってに決めつけている!)は、ぜひ本格長篇として作って欲しい。南田さん、よろしくお願いします。

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