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映画・演劇のレビュー

『極道大戦争』

2015-07-01 23:49:55 | 映画

予告編を見た時の印象とはまるで違う映画で、驚く。バカバカしくて、笑えて、はしゃいだ映画ではない。とても緊張感のあるドラマで、何かがここで起きているのか、起きようとしているのか、ハラハラしながら見守ることになる。確かにとんでもないことが起きている。

正統的なやくざ映画である。バイオレンスシーンもたくさんある。エロもある。残酷もあり、物騒なシーンのオンパレードだ。思わず目をそむけたくなる過激さである。情け容赦しない。まるで、昔のやくざ映画のような汗臭さ。華やかさとか、派手さとは無縁の世界だ。60年代の終わりから、70年代に作られた東映映画の雰囲気を纏う。もちろん最初からそれを狙っている。特注のポスター(昔のやくざ映画の図柄を踏襲したもの)も作られた。(なんばTOHOで見た)完全に時代に逆行した。

ただ、唯一の違いは、これがバンパイアもの、ということだ。やくざのバンパイアに噛まれたものは誰もがやくざになる、という部分。もうこのあほらしい設定だけでこれはコメディだと誰もが思ったはずだ。そんな予告編を作っていたし。だが、映画はまるで弾まない。重くて暗いタッチを貫く。こんなバカな話なのに、だ。ストイックにスタイルを守る。予告編であれだけ笑わせた女子高生がつぼを振り、啖呵を切る「なんとか高校何年何組というちんけな組のもんです」という部分まで、シリアスなのだ。

だが、こんなにも過激なのに、静かな映画なのだ。おだやかなリリーフランキー演じる組長のたたずまい。時の流れが止まったような小さな町。平和の時が過ぎていく。任侠の精神を守る親分と子分たち。町の人たちは彼らに守られて幸せに過ごす。しかし、何かが水面下で進行している。やがて、町は混乱に陥る。組長惨殺(首を捩じって落とす!)シーンからお話の本題に入るのだが、タッチは変わらない。主人公は市原隼人。組長を慕うやくざ。彼が組長の遺志を継ぎ、バンパイアやくざになる。

最初は組長の跡目を継いだ高島礼子(極妻!)と敵対する。キャバ嬢も、学校の先生も生徒も、みんなやくざになる。やくざたちのほうが彼らの存在に怯える。しかし背後にいる組織は実はとんでもない存在で、最後には巨大化したカエルの化け物が町を襲う。もう何が何だか、である。

あきれてものも言えないような映画を作った。最初から確信犯だ。三池崇史だから許されることだろう。しかし、さすがにここまでマニアックな映画に観客は集まらない。ガラガラの映画館で、早々に2週間で上映は打ち切られるようだ。やばいと思って、慌てて見に行ったけど、納得の映画だった。これでは客はこない。

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