
戸田彬弘監督2022年作品。舞台となるのはコロナ禍の2020年11月。撮影はコロナ禍の中、2022年に(あるいは2021年?)行われたはず。リアルタイムのコロナ禍でコロナ禍を真正面から扱った映画を作るってとても勇気ある行為ではないか。
コロナによって失われたものと向き合う人たちによる群像劇。ここには特別な主人公はひとりもいない。出てくる膨大な人々のみんながそれぞれ主人公である。ほんの一瞬しか出てこない人もいるけど、彼らだって脇役ではなく、その時間この映画のセンターに立つ。そんなふうに作っている。もちろんお話全体を引っ張っていくメインのキャストはいる。冒頭に登場する女性と彼女のところを訪れる若い夫婦の3人だ。彼女は自宅でふたりの結婚パーティーを行う。友人ふたりを呼んでいるから出席者は合計5人だけ(途中からもうひとり飛び入り参加があるが)のささやかなお祝いを企画した。コロナ禍だから結婚式もしなかったふたりを対面で祝ってあげたい。そんな想いから企画した。
こんな3人とふたりをお話の起点にして彼らが偶然関わっていくさまざまな人たちのドラマが並行して描かれるのである。流星群がやって来る夜に向けての1日が描かれる。タクシー運転手とコロナで飲食店が潰れてしまったというお客さん。流星群を見るために学校に忍び込む中学3年の男女。役者志望のウーバーの配達員、彼と同じく配達の仕事をしている外国人たちや夜中の公園で漫才の稽古をするふたり組の女の子。
気がつくだけでこれだけの人たちが登場している。結婚パーティーと並行して彼らのドラマがお互いどこかでほんの少しすれ違う程度にかかわりながら、等価に描かれていく。コロナ禍のなんでもない1日さりげなく描く。だけどこの時間は愛おしい。