ハレンチキャラメルは神原さんが10年前、春の演劇まつりに初めて参加した時、旗揚げした集団、だったらしい。当日パンフを見て知った。というか、気づいた。まぁ、そんなこと、気にも留めてなかったけど。(その年は僕が春演の審査、講評を引き受けた最初の年だったから、今年はハレンチキャラメルの10周年であるばかりでなく、春演の審査員として10年になるということなのだ。まぁ、そんなことは個人的なお話で恐縮なのですが。)
それまでも彼女は浮狼舎を中心にして様々なユニットを通して芝居を作り続けていたから、あまり個々の事は気にしてなかったのだ。でも、改めて、10年10作品という区切りに達したという事実を目の当たりにして、あたりまえのお話だが、神原さんのバイタリティには驚嘆させられる。何があろうとも、芝居を作り、どんどん作り、上演していく。猪突猛進の快進撃をどこまでも続ける。そんな彼女の姿を目にするだけで、元気にさせられるのは僕だけではあるまい。スタッフ、キャスト、支援する観客。、みんなが神原さんに押し切られている。「わたしがやりたいんだから、あんたたちはついてきなさい、」と言われたら、「はい、」としか言いようがない。今回彼女が「もうやめるからね、」と言ったのだろう。だから、優しい座長の島上さんは「いいよ、」と応えた。そこで、この最終公演の運びとなる。
なんと今回は、最後だからきばって「大作」、ではない。反対に初心に帰って1幕物の中編にする。(70分と神原さんは言ってたけど、80分はあった)あっさりと、気持ちよく見せたいのだ。からっと、「さらば!」と手を振るシーンで終わらせるため、「旅芝居の人情時代劇」スタイルの王道を行こうとした。
もしかしたら、今回は誰も死なない芝居なのか、と、一瞬だけ思わせて、ラストでは無用なまでもの大立ち回りを見せて、死ななくてもいい人まで死なせてしまう大判振る舞い。ちょっと笑える。
こんなふうに、いつも自由で楽しそうな芝居を作るのが、神原さんだ。ハレンチキャラメルはそういうコンセプトで作られている。思い切り、ふざけているように見せながら、実は大真面目。それが初心で、こういう集団名なのに、「最後まで演劇的テロ集団」を自任する。あっぱれだ。