習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

万博設計『SERVICE』

2016-07-03 08:11:03 | 演劇

 

何がなんだか、よくわからない。でも、この不思議な世界に引き込まれる。田舎の国道沿い。車の中に鍵を入れたまま、ドアをロックした男(もう少しで40歳になるヤンキー)とその年の離れた彼女(まだ高校生)。そんなふたりと、彼らのいる駐車場にあるコンビニ。(というか、彼らはコンビニの駐車場にいるのだが)そのなかで、引き継ぎをしている朝番と夜番のバイト。そんなふたつの風景を交互に描く。でも、そのふたつのエピソードは交差しない。こんなにも近いのに、別々のエピソードのまま描かれていく。

なんだかわからないけど、事故が起きたようだ。それでコンビニは電気も落ちて店を開けることができない。店長(彼も雇われ店長であまりやる気はない)は奥で寝ている。起きている事実は明確にしないまま、なんだかとんでもないトラブルが襲い、サービスは機能しない。またまた震災を描くのか、とも思う。最初にノストラダムスの大予言の話が振られるからこれはまだ20世紀の終わりのお話なのか。描かれる世界の時間すら曖昧なのだ。とりあえず、ここでは本来我々を安心させるはずのサービスが機能しない。

 

このタイトルはそこからきているようなのだが、これは単純にサービスを巡るお話というわけでもなさそうだ。そんなことは最初からわかっている。では、何が問題なのか。八百屋舞台で、ゴムを縦横に使い仕切りや境界(同じ事かぁ)を作る。そんな抽象的でシンプルな装置が、この不安と混乱を助長する。お話はストレートには流れていかない。停滞し、あちらこちらへと拡散する。単純にストーリーを追おうとすると、混乱は増幅するばかりだ。

そんな彼らのところに、救助のために2人(なぜか、ヤクザと歯科医)と一匹(犬)が来る。だが、彼ら(と、言いつつも演じるのは女性だが)はさらなる混乱を巻き起こすばかりで、事態を何一つ収集してくれない。都市の機能が停止して、自分の存在が無になる瞬間。何をどうしたなら事態を収拾できるのか。車の事故ならジャフ(?)を呼べばいい、というけど、そんなことで収拾しないこともある。というか、ジャフも来ない。電話もない(車の中)から連絡も出来ない。10円のお金がないから公衆電話からかける事すら不可能。だいたい公衆電話なんて、もうどこにもないし。

 

抽象的な空間で、リアルな事態を理解不能なドラマとして展開していく。不条理劇のようなのだが、それにしては細部はやはり、リアル。悪夢のような(悪夢です)時間をいつまでも堂々巡りで描いて行く。100分間のサバイバル。どこにも行けない。


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