このタイトルにそそられた。お金をテーマにした短編集。5人の作家たちがそれぞれの視点から「お金」の挑む。でも、あまり彼らはお金には縁のない人たちばかりだ。というか、興味なさそう。
僕の大好きな平田俊子さんなんて、まるで興味ないのだろう。だから、彼女の今回書く小説『バスと遺産』は、お金を最後には棄ててきてしまうのだ。なんとも太っ腹だ。いくら小説の中とはいえ、ポンと100万円! である。まぁ、失くしたと思ったものがポケットの中にあったのだから、失くしたままだと思うと惜しくない、ということなのだが、それでもなぁ、である。いくら小説の中の話とはいえ、なんだかもったいない。バスの中で出会った幸薄そうな老婆のカバンの中に100万円入りの封筒を入れて、自分はバスを降りるのだが、家に帰ったおばあさんはびっくりするだろうなぁ。きっと、ねこばば出来ずに警察に届けてしまうのではないか。そうすると、なんだかおばあさんが気の毒かも、と思う。主人公の女は、そこまで考えてない。
この小説は、この主人公の女性と、けちな彼女の兄との話だ。親の残した遺産を渡すから家に来い、と言われて仕方なしに行くと、たった3万円の入った封筒を渡される。冗談にも程がある。だが、彼女は文句も言わない。あきれたけど。
こんなことを、延々書いていてもまるでらちが明かない。だいたいこんな話、この小説の話でもなんでもない。一応あらすじは追ってるけど。この短編は、平田さんらしい相変わらずのすっとぼけたところがいい。兄嫁がいくらなんでも3万円はないよね、と言って自分のへそくりである100万円を彼女に渡す。彼女はどうしたもんか、とも思うが、兄嫁の好意を受け取ることにする。この兄嫁は別に彼女に対して好意を抱いているわけではない。だが、いくらなんでも自分の夫の暴挙は見てられなかったのだろう。
もらった100万円の使い道を考える。最初の3万円は、ぱあぁっと自分のものを買って使った。こだわりは何もない。こんなのは、お金ではない。遺産というより、小遣いでしかないし。両親の死に関してこんな形で決着をつけるのは、なんだかなぁ、と思う。でも、兄はこれでケリを付けたいのだろう。5年前の母の死、そして今回の父の死。これで、もう実家とは切れた。兄夫婦の暮らす家はもう自分の住んでいた家ではない、と思う。ただいま、ではなく、ごめんください、でしかない。大体兄から家のカギを取り上げられたとき、終わっている。「お金」の話のはずなのに、この小説はそんなこんなで、まるで、そんな話であることを忘れさせる。
他の4作品のことにも、少しは触れたい。山崎ナオコーラ『誇りに関して』もなんだか彼女らしくて、いい感じだった。変なこだわりがいい。姉と弟の話だ。まるでやる気なく定職にもつかずブラブラしている弟と、家を出て独立して産婦人科の医者として自立した生活する姉。(彼女は年収2000万円で、貯金は3000万円あるらしい。凄い。そんな金持ちは、まるで想像できない。)両親は2人に何も言わない。子どもたちの自由にさせる。だから働かない弟も、結婚もしない姉も、それでいいみたいだ。そんな両親のことを、姉はなんだかなぁ、と思うのだが、思うだけで、何もしない。まぁ、自分は干渉されたいわけではないし。これは、そんな2人が一緒にレストランで食事を摂る、というだけの話だ。
やはりこの2作品がおもしろい。でもその他3作もそれぞれ面白いから、これはちょっとした拾い物であろう。確かにすべてお金を巡る話だ。こんなことに拘った小説なんて、なかなかない。だから、読みながらちゃんとお金のことを考えた。でも、やっぱりなんか、これらの小説と同じで、あまり興味ない。ないよりある方がいいし、お金は欲しいけど、お金のことを、考えるのは苦手だ。1000円以上のお金をあまり持たないし、100万円なんて言われても想像がつかない。10円、20円のことはよく考える。スーパーで買い物していてちょっと安く買えたらうれしい。そんなこんなで、なんだかなんのためにこの文章を書いているのか、わからなくなってきた。
僕の大好きな平田俊子さんなんて、まるで興味ないのだろう。だから、彼女の今回書く小説『バスと遺産』は、お金を最後には棄ててきてしまうのだ。なんとも太っ腹だ。いくら小説の中とはいえ、ポンと100万円! である。まぁ、失くしたと思ったものがポケットの中にあったのだから、失くしたままだと思うと惜しくない、ということなのだが、それでもなぁ、である。いくら小説の中の話とはいえ、なんだかもったいない。バスの中で出会った幸薄そうな老婆のカバンの中に100万円入りの封筒を入れて、自分はバスを降りるのだが、家に帰ったおばあさんはびっくりするだろうなぁ。きっと、ねこばば出来ずに警察に届けてしまうのではないか。そうすると、なんだかおばあさんが気の毒かも、と思う。主人公の女は、そこまで考えてない。
この小説は、この主人公の女性と、けちな彼女の兄との話だ。親の残した遺産を渡すから家に来い、と言われて仕方なしに行くと、たった3万円の入った封筒を渡される。冗談にも程がある。だが、彼女は文句も言わない。あきれたけど。
こんなことを、延々書いていてもまるでらちが明かない。だいたいこんな話、この小説の話でもなんでもない。一応あらすじは追ってるけど。この短編は、平田さんらしい相変わらずのすっとぼけたところがいい。兄嫁がいくらなんでも3万円はないよね、と言って自分のへそくりである100万円を彼女に渡す。彼女はどうしたもんか、とも思うが、兄嫁の好意を受け取ることにする。この兄嫁は別に彼女に対して好意を抱いているわけではない。だが、いくらなんでも自分の夫の暴挙は見てられなかったのだろう。
もらった100万円の使い道を考える。最初の3万円は、ぱあぁっと自分のものを買って使った。こだわりは何もない。こんなのは、お金ではない。遺産というより、小遣いでしかないし。両親の死に関してこんな形で決着をつけるのは、なんだかなぁ、と思う。でも、兄はこれでケリを付けたいのだろう。5年前の母の死、そして今回の父の死。これで、もう実家とは切れた。兄夫婦の暮らす家はもう自分の住んでいた家ではない、と思う。ただいま、ではなく、ごめんください、でしかない。大体兄から家のカギを取り上げられたとき、終わっている。「お金」の話のはずなのに、この小説はそんなこんなで、まるで、そんな話であることを忘れさせる。
他の4作品のことにも、少しは触れたい。山崎ナオコーラ『誇りに関して』もなんだか彼女らしくて、いい感じだった。変なこだわりがいい。姉と弟の話だ。まるでやる気なく定職にもつかずブラブラしている弟と、家を出て独立して産婦人科の医者として自立した生活する姉。(彼女は年収2000万円で、貯金は3000万円あるらしい。凄い。そんな金持ちは、まるで想像できない。)両親は2人に何も言わない。子どもたちの自由にさせる。だから働かない弟も、結婚もしない姉も、それでいいみたいだ。そんな両親のことを、姉はなんだかなぁ、と思うのだが、思うだけで、何もしない。まぁ、自分は干渉されたいわけではないし。これは、そんな2人が一緒にレストランで食事を摂る、というだけの話だ。
やはりこの2作品がおもしろい。でもその他3作もそれぞれ面白いから、これはちょっとした拾い物であろう。確かにすべてお金を巡る話だ。こんなことに拘った小説なんて、なかなかない。だから、読みながらちゃんとお金のことを考えた。でも、やっぱりなんか、これらの小説と同じで、あまり興味ない。ないよりある方がいいし、お金は欲しいけど、お金のことを、考えるのは苦手だ。1000円以上のお金をあまり持たないし、100万円なんて言われても想像がつかない。10円、20円のことはよく考える。スーパーで買い物していてちょっと安く買えたらうれしい。そんなこんなで、なんだかなんのためにこの文章を書いているのか、わからなくなってきた。