■ 年金積立金のリスク運用 ■
年金積立金の運用方法の早期見直しを安倍首相が支持した様です。先に麻生財務大臣が株価下落の際にリークしていたので、今更驚く事もありません。ところで、私達の年金積立金は現在どの様に運用されているのでしょうか?
私達の年金は年金積立金管理運用独立行政法人(以下GPIF)によって運用されています。
しかし、GPIFの職員が実際に運用を行うのでは無く、信託銀行などの金融機関に運用を委託しています。
良く言えば「プロが運用しているのだから安心」、
悪く言えば「市場関係者の市場操作の資金を年金積立金から捻出している」事になります。
■ 運用の内訳 ■
GPIFが運用する資金は、12年度末で120兆4,653億円。
これは、世界第二位の年金運用基金であるのノルウェー政府年金基金の倍以上の金額で、堂々世界第一位の年金運用基金です。
その運用の内訳は、昨年に株式と海外債権の枠が拡大された結果次の様になっています。(12年度末)
国内債券が55.2%(ほぼ日本国債?)
国内株式が17.2%
外国債券が10.6%(ほぼ米国債?)
外国株式が15.2%
短期資産が1.8%
■ 日本国債購入は日銀に任せ、リスク市場の高値を維持する年金資金 ■
現在日本国債は日銀が絶賛お買い上げ中ですので、年金資金が日本国債を買い支える必要は軽減しています。一方、アベノミクスは株価維持で「景気回復」を演出していますので、どうしても日経平均の高値は維持したい所。
そこで、「年金の積立金の運用比率を変更して、日本株をもっと買える様にましょう」というのが、表向きの理由です。
これは証券業界や金融業界の総意でもあるので、スムーズにGPIFの運用比率は変更されるでしょう。
■ 米国債を買い支える年金積立金 ■
市場は日本株の値上がり材料として運用比率見直しを好感しますが、既に麻生財務大臣がリークした時点で、既に株価には織り込まれているかも知れません。
一方、先の運用比率の見直しでは、日本株と同時に外国債と外国株の運用比率が拡大されました。日本人の年金積立金で日本株を買い支える事は理解出来ますが、米国債や米株を買う必要が何処にあるのでしょう?
1) 日本株や国内債券よりも、海外株式や米国債の金利が高い
2) 将来的に円安が進行した場合、海外資産は相対的に値上がりし、価値を保存できる
ここら辺が海外資産を購入する理由となりあそうです。
■ ダウが暴落する様な状況では米株を売却するであろう ■
本来年金積立金は長期の利益を目的としているので、短期の資産運用は好まれません。しかし、ダウが暴落してドルの下落が進行する様な事態がもし訪れたとしたならば、GPIFは見る見る膨らむ損失を止める為に、海外資産を売却するはずです。
この時に為替差損も含め、膨大な損失が発生すると思われます。
■ 国内でもゾンビ企業の株価操作に使われるかも知れません ■
国内の運用でも、運用を委託された金融機関が、SONYなどの株を買い支えたり、或いはソフトバンクやファーストリテーリン株やトヨタ自動車などと言った、日経平均に大きく影響を与える銘柄の株価操作に年金資金を使わないとも限りません。
■ 短期的な利益と長期的な損失 ■
本来は年金運用は安全資産で運用されるべきですが、仮にリスク運用するのであれば、長期的な運用で損失が発生しない銘柄を選んで投資するべきです。しかし、それでは短期的な運用利益は限定的になりますから、運用を委託された金融機関は多少のリスクを取って外債や日本株で利益を拡大しようとするはずです。
一見正しい様に思われる短期的な利益の拡大ですが、長期的には金融危機などが発生すれば損失が膨らむ事になります。
■ 外国人投資家に濡れてに粟の鷲掴み状態? ■
昨年来日本株を買い上げていたのは海外投資家達です。彼らはある程度利益を確保したら日本株を売って儲け出そうとしています。しかし、肝心の日本人投資家達が消極的なので、中々売り場を確保出来ていません。
日本の年金資金が数兆円流入しれくれば、格好な売り場を提供する事になるかも知れません。
■ PKOは許されても、株の買い上げは許されない ■
私体の年金資金をリスク運用すること自体問題が無くはないのですが、それでも日本株市場の安定が私達の社会に与える恩恵を考慮すれば、結果的に国民の利益に貢献します。
その意味においては、年金資金のリスク運用は、株価が大きく下がった時に下支えに利用されるべきです。株価が底抜けしなければ、株価はやがて回復して、年金運用にも利益が出ます。
従来の日本の年金資金運用は、PKO(プライス・キープ・オペレーション)と呼ばれる下ねの買い支えで実績を上げて来たと思います。
ところが、株価操作宜しく、上値をさらに買い上げる様な事をすれば、株価はいつかは下落に転じますから、大きな損失を生む事は確実です。
■ 安倍政権は国民の敵に変貌したのでは? ■
政権発足時から私はこのブログで何度も指摘しましたが、自民党清和会の安倍政権は、小泉政権と非常に似た政権です。
国民の耳触り良い政策を掲げ、その実、アメリカの構造改革要望書的な政策を着実に実行に移しています。
国民に「70歳まで働け、年金は75歳からの支給にするぞ!!」というクレージーな事を言い出す政権を、どうして国民が支持するのか全く理解に苦しみます・・・。