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イギリスですら議会制民主主義は形骸化している・・・シリア空爆の意図

2015-09-16 22:50:00 | 時事/金融危機
 

■ 議会承認無しにギリシャを空爆したキャメロン首相 ■

フランスと並び近代議会制民主主義の元祖と言えるイギリスですが、その原則が厳密に運用されているかと言えば日本同様にルールの運用は弾力的な様です。

8月21日にイギリス空軍はシリアを無人機で爆撃しました。その結果、ISに所属するイギリス人2人を含む3人を殺害。

イギリスはイラクの空爆に参加していますが、これは議会が承認したものです。一方でシリアへの空爆は議会に否認されています。しかしキャメロン首相は議会承認無しに今回の空爆を行い、事後承諾として議会に報告しています。

今回殺害されたイギリス人IS兵士は、イギリス国内での殺害計画に関与していたとされ、「自国の防衛」の為に空爆が実行されたと説明されます。キャメロン首相は空爆に先立って法務長官に意見を求めた様ですが、法務長官は「法的根拠」を認めた為、空爆は実行されました。野党が法的根拠の詳細の説明を求めていますが拒否されています。

■ 議会が有名無実化したイギリス ■

さすがにこの問題は議会制民主主義の根幹に関わる問題だけにイギリス国外でも報道されています。

キャメロン首相は以前より自衛の為のシリア攻撃は否定しないという立場でしたので、それを実行した事になります。ただ、今回の空爆は「刑法」を適用する様なので、作戦は「戦闘」では無く「処刑」に近い扱いとなるのでしょう。

いずれにしても宣戦布告も無しに他の主権国家の領土内を空爆する事は国際法にも違反している可能性が高いのですが、イギリス政府は「詭弁」で押し通す様です。

■ シリア空爆という規制事実を作りたかったキャメロン首相 ■

今回のイギリスによるシリア空爆は、イギリスの国内法に照らしても、或いは国際法に照らしても真っ黒クロな行為ですが、イギリス政府は国連憲章第51条を持ち出してその正当性を主張しています。

国連憲章51条によれば「武力攻撃を受けた国連加盟国は、安保理が国際的な平和と安全を維持するため必要な措置を採るまでの間、自衛の権利がある」。

今回の作戦は「自衛」の為に必要であり合法であると主張するキャメロン首相ですが、陰謀論者の私は彼の本当の目的を色々と邪推してしまいます。

実はキャメロン首相が議会で事後報告をした9月7日にフランスのオランド大統領も「(ISが)フランスやシリアに対して何をもくろんでいるのか知る必要がある」「偵察を行えば空爆の準備が整う」として、空爆参加の意向を明言しました。

フランスも今まではシリア国内でのISへの攻撃はアサド政権を助けるので行わないとの立場を取っていました。

ここに来てイギリスとフランス政府が強引にシリア空爆への道を開こうとするのには訳が有るはずです。多分、遠からぬ将来において、「有志連合」におけるシリア国内のISに対する大規模な空爆が実行されるのでしょう。

■ シリア難民をヨーロッパに誘導している組織が有るはずだ ■

今回の空爆に連動するかのようにシリア難民がヨーロッパに押し寄せています。ヨーロッパ各国では彼らに同情的な意見が出る一方で、将来的に安い労働力になるであろう彼らと仕事を奪い合う層を始めとして難民を敵視する人達も現れています。

同情的な人達も、敵視する人達も、難民問題の根源はシリア国内でのISの勢力拡大だとの見方は共通で、欧州の世論は次第に「シリア国内のISを掃討すべき」という方向に誘導されてゆくはずです。

シリア難民は以前より東欧諸国やギリシャに押し寄せていましたが、ここに来て何かに突かれたかの様にドイツや北欧諸国を目指し始めました。裏で彼らを先導している組織がある事が邪推されます。

難民の移動と同時に欧州メディアが難民問題の一大キャンペーンを張り、この問題に国民の関心が集まる様に仕向けています。

■ IS空爆を口実にアサド政権打倒を目論む欧米諸国 ■

戦争の原因を作る為にアメリカを始め多くの国は「偽旗作戦」という物を実行して来ました。日本陸軍が起こしたと思われる「盧溝橋事件」など、自作自演がこれに当たりますし、事前に攻撃情報を入手していながら攻撃を黙認した「真珠湾攻撃」もルーズベルトの「偽旗作戦」と言えます。これは、参戦に消極的だったアメリカ国民の世論を参戦に傾ける目的を達成します。

第二次世界大戦以降も、ベトナム戦争へのアメリカの参戦の原因となった「トンキン湾事件」や、湾岸戦争におけるイラク軍の残忍性を議会にアピールした「ライナ事件」など、戦争の口実は「ヤラセ」である事が次々に明るみになっています。

そして、その最大の作戦は「テロとの戦い」を正当化させたアノ事件でしょう・・・。

今回の「シリア難民」の事件は、IS攻撃を正当化させる為に仕掛けられていると思いますが、シリア空爆が実行されたとして、その目的はアサド政権の打倒でしょう。

ISは元々アメリカや湾岸産油国などが出資して作られた組織ですが、支配地域の原油売却によって資金が捻出されていると言うのは真っ赤なデマでしょう。イラン制裁を例に取るまでも無く、テロ組織が市場で原油を売ろうとする事を阻止するのは容易です。もし仮にISの販売する原油が市場で流通しているのであれば、それは欧米諸国が彼らの資金獲得を黙認している事に他なりません。

さらにイラク国内ではイラク正規軍と米軍が共同でISの掃討作戦を行っていますが、イラク軍がISに挟み撃ちに合ったりと成果は上がっていません。その最大の理由は、米軍の提供する情報がウソばかりだからと言われています。ISが集結しているとの情報で出動しても、そこに彼らが居ないなんて事も。

この様にかつてのアルカイダ同様にISはアメリカや欧米諸国が中東で軍事行動を実行する格好の原因を提供していますが、今回はシリア空爆の口実にされます。しかし、空爆で破壊されるのはシリア軍の軍事施設であったり、政府の建物である可能性が高い。

そして、シリカ国内はさらに後輩して、アサド政権が崩壊する事になるでしょう。後はリビア同様に内乱へと進んで行きます。これで、シリアへのロシアの影響力も排除されます。

■ ロシアやイランは指を咥えて傍観するのか? ■

ここから先が読みにくい所ですが、アサド政権と友好的なロシアやイランが欧米諸国のシリア空爆を黙認するかです。

ロシアはシリアに軍港を持っており、地中海への足掛かりとしています。アサド政権が崩壊すれば、これを失う可能性が有ります。

イランはアメリカとの関係修復中ですが、アサド政権の崩壊はシーア派のイランにとっては脅威となり得ます。

しかし、ロシアは既にウクライナ問題で経済制裁を受けており、この上シリアに軍事進攻して国際世論を敵に回す事に躊躇するでしょう。イランは下手にシリアを援護すれば、巻き添えで自国が攻撃される恐れがあるので、援助以上の支援は行わないと思われます。

■ 中東の軍事バランスは大きく変化する ■

リビア、エジプト、シリア、イエメンとかつての「汎アラブ主義」国家はことごとく崩壊に瀕しています。対イスラエルの急先鋒であったこれらの国の崩壊は中東の軍事バランスを大きく崩す事になります。

一見すれば「イスラエルに有利」と思える状況ですが、政権打倒後の内戦状況の中でアルカイダーやムスリム同胞団やISなどイスラム原理主義の過激組織が勢力を伸ばしています。

しかし、不思議な事にこれらのイスラム過激派はイスラエルを標的にしたテロをあまり起こしていません。むしろシーア派VSスンニ派の様な、イスラム教内での対立を煽る役割を果たしています。

■ 不安定さを増すサウジアラビア ■

この様な中東の急激な不安定化に怯える国が有ります。サウジアラビアです。

サウジアラビアはスンニ派のワッハーブ教を信仰するサウジ王家が支配する国家ですが、ワッハーブ教は少々特殊な宗派で、信者の数も多く有りません。むしろかつてイギリスが作った新興宗教の様な物で、イスラム教の中でも特殊な宗派です。

サウジアラビアの財源は東部の湾岸地帯の油田ですが、この地域にはシーア派が多く、サウジ王家はシーア派が離反する事を何より恐れています。シーア派の革命を輸出するイランをサウジアラビアが敵視するのはこれが原因です。

しかし、昨今、サウジアラビアにイスラエルがミサイルを提供するなど、従来の両国の関係では考えられない事が起きています。イランはアメリカの仲介でイランとの関係も修復しつつ有ります。

一方、かつてはアメリカの傀儡であったサウジ政府は、最近ロシアとの交流を活発化させています。産油国同士である両国の利害が一致するからだと思われますが、軍事的な交流も進める様なので、中東の次の軍事バランスの構築が始まっているとも言えます。

■ 中東の不安定が拡大する中で、安定を維持しようとする国が結託する? ■

サウジ、イラン、イスラエルは中東に残る「古い勢力」となってしまいました。周りは「不安定と混沌」が支配しています。

「古い勢力」の「奇妙は協調」が今後どう発展するのか見当も付きませんが、シリアでアサド政権が倒れた後の中東は、急激に流動化する事だけは確かでしょう。






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1 コメント

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Unknown (高橋)
2015-09-16 23:15:26
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こっちが、勝手に砂漠に書いたボーダーライン、もう一度、書き直して、どこが悪い。
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