■ AIって何? ■
AIとはartificial intelligenceの略で、日本語に直せば「人口知能」です。
昨今のAIブームは2012年頃からの第三次AIブームの流れによるものですが、これは「ディープラーニング」とよ呼ばれる計算方法の進化によってもたらされました。
AIは人の脳を模した「ニューラルネットワーク」と呼ばれる小さな計算機の並列計算によって構築されます。
1) 入力に対する「解」を出す様に構築する
2) それぞれの計算機のパラメーターを微妙に調整して誤差が生じる様に構築する
3) 誤差が最小になる様にパラメーターを調整する
4) パラメーターの調整をフィードバックによって最適化する
私的には上記の様なシステムだと妄想しています。人間の脳も脳神経細胞の複雑な絡まり合いで出来ており、それぞれの脳細胞は刺激に対して様々なアウトプットをします。その信号を統合し調整しながら、正解と思われる刺激を伝えた伝達ルートを選択的に強化する事で、人の脳が学習して行きます。
1) 赤ちゃんがお湯を見る
2) 脳の中で「触ってみる」という演算結果と、「触らない」という結果が並列する
3) 「触る」という優先度が勝つ(好奇心)
4) 触った結果熱いと感じる=エラーと判断
5) 脳は「お湯」を見たら「触らない」と選択するネットワークを太くする
実際にはもっと複雑なのでしょうが、こう書くと分かり易い。
要はAIの開発者がAIにインプットを与えて適切な答えが得られる様に様々に計算アルゴリズムを試行錯誤しているのですが、以前はパラメータの調整を人の手で行っていたものが、第三世代と呼ばれるAIでは、フィードバックによってAI自らがパラメーターを調整する様になった事が、昨今のAIの目覚ましい発展に繋がっています。
■ ビッグデータとAI ■
最近では「将棋のプロ棋士にの名人にAIが勝利した」なんてニュースも有りましたが、ルールによって勝敗が決まるゲームはAIの得意とする分野です。
1) 過去の多くの対局のデータをインプットする(ビックデータ)
2) AIは棋譜の順番と勝敗を分析して、それぞれの局面で有利な手を学習する
実際にはもっと複雑なのですが、要は人間が将棋や碁を覚える場合は「定石」を本などで学習しますが、AIは定石を自ら高速で学習していくと考えれば良いかと・・・。そして、さらに多くの「対局」を解析する事で「定石」以外の手に対する最適の対応も学習します。
この様に「過去の超大なデータ=ビックデータ」から「特徴」を抽出する事は、AIの得意とする分野です。
■ ヒット曲はAIが作る時代になった ■
「クリエイティブな仕事はAIには向かない」と漠然と考えられていましたが、ビックデータと結びつく事で、「クリエーティブな仕事はむしろAIに向いている」と言われる様になりました。
アメリカでは既に「ヒット曲」を探す事にAIが活用されています。毎日大量に生み出される楽曲と、過去のヒット曲の「特徴」を照らし合わせて、「人々に好まれそうな特徴」を持った曲をAIに抽出させるのです。今まではプロデューサーの勘に頼っていた作業を、AIによるデータ解析に置き換えたと言えます。
さらに最近では、AI自らに作曲や作詞をさせる試みも進んでいます。過去のヒット曲や、最近のトレンドをAIが「抽出」して、それに即して作曲や作詞をさせる。多分、最期は人の手による微調整が必要だとは思いますが、それなりにキャッチーな曲が出来上がる様です。
これで革新的な作品が生まれるとは思いませんが、昨今の金太郎アメみたいな楽曲程度の先品は作れるはずです。
この様にビックデータとAIの結びつきによって「感性」を数値化、或いは「特徴付け」する事で、クリエーティブな仕事の分野でAIが活躍する時代がやって来ています。
■ 金融の短期トレーディングでは人は既にコンピューターに敵わない ■
金融の分野ではHFT(高周期トレーディング)と呼ばれるプログラムが活躍しています。これは相場のトレンドをコンピューターが監視し、誰かの買い注文(売り注文)が入る一瞬で、コンピューターが高速で売買を繰り返す手法です。買い注文(売り注文)を入れた人は、自分と取引が確定した時には利ザヤがほとんど消失している事に愕然とします。
HFTの為には取引所の売買を覗き見る必要が有ります。証券会社は自分のシステムを取引所のサーバー内に置いたり、取引所の直近で回線速度の一番早い建物内にシステムを置く事で、取引の盗み見を実現している様ですが詳細は不明です。(これ詐欺だと思うのですが)
この様に単純は高速の判断では個人はコンピューターに敵いませんから、デイトレーダーなどは痛い目に遭う訳です。
さらに昨今ではAIを用いたアルゴリズム取引の研究の盛んになっています。過去の取引のデータをAIに解析させるのです。これもビックデータとAIの組み合わせの得意とする所ですから、将来的には金融取引はAIが席巻する事になるでしょう。
■ 天才は生き残る ■
クリエイティブな仕事や頭脳労働の一部がAIに置き換わると、この分野の人材は失業します。生き残るのはAIを効果的に使役する人、或いはAIを効果的に教育出来る人材となるはずです。
そして、いつの時代も「天才」は生き残る。
AIの欠点は「多様性の欠如」です。過去のデータの解析で抽出された特徴は、どのAIも似たり寄ったりでしょうから、AIの出す答えは似通っています。
例えばAIの作曲した曲はどれも似ている・・・なんて現象が起こり得ます。
実は過去のヒット曲をその当時に遡って分析すると「特異」であるという特徴が抽出されるハズ。「今まで聴いた事が無い」「これ新しくない?」っといったインパクトがヒットにつながる。
結局AIが進歩してもしばらくの間は、「天才」や「ユニークな発想」には勝てません。多分、クリエーティブの分野の7割の仕事がAIに置き換わったとしても、3割の仕事は人の手で為されるでしょう。この3割に入れるかどうかが、将来的に生き残れるかどうかのボーダーライン。でも、これって普通にクリエーティブの仕事に就いていれば当然の事で、終身雇用が解消されたら、この分野で生き残れる人の割合ってやはり3割だと思うのです。独立して成功する人は1割は常識。
■ 生産性の低い仕事はロボットに置き換わらない? ■
AI同様に将来的に私達の仕事を奪う可能性が指摘されているのがロボットです。
かつて駅の改札は駅員さんが並んで切符にハサミを入れていました。自動改札の出現によって改札要員の駅員さんはほぼ全滅しています。「切符にハサミを入れる」といった様な単純作業は機械に向いています。
但し、器械は壊れるので、修理費用や点検費との兼ね合いで、自動改札がコストダウンになるのはある程度利用客数の多い駅に限られていました。しかし、スイカの登場で自動改札から「機械稼働部分」が無くなると、ローカル線の無人駅にもスイカの端末が置かれる様になります。
この様に従来は単純作業はロボットに向いていると考えられていました。
一方で最近は「生産性の低い仕事はロボットに置き換わらない」とも言われています。例えな牛丼チェーンのカウンターで働く人がロボット化出来るか想像してみましょう。
1) 客の注文とチケットを受け取る
2) 前の客の食器を片付ける
3) 水を出す
4) 厨房に注文を伝える
5) 客に品物を出す
6) 手が空いたら洗い物を手伝う
7) この間、愛想笑いを要求される
8) 手違いなど不測の事態に対応する
まあ、ざっとこんな仕事の流れですが、これを並行して10人位の客相手に長時間繰り返します。これをロボットで置き換える事は大変に難しい。
発想を変えて、発注から受け取り、食器の片づけまでを客側が行えば、メニューを限定すれば無人化も可能でしょうが・・・。これ、マックですね・・・。スマイル0円のお姉さんが魅力でしたが、最近はオバサンやお爺さんになって魅力が薄れました。
実はロボットに代替え出来ない生産性の低い仕事とは「賃金が仕事の内容に見合わず、労働者にとって生産性の低い仕事」の事を指します。逆に経営者にとっては「低賃金ゆえに生産性は高い」。
■ 美容師などもロボット化が難しい ■
キラキラ職業として人気の有るアパレルの店員や美容師ですが、将来的には明暗が分かれます。
アパレル業界はネット通販に代替え可能だからです。
40代位の方達まではネットで衣料品を買うのには抵抗が在ります。しかし、今時の若者はネットで平気で衣料品を買います。それも結構高価な服でも・・・。
ネット通販で服を買うと、サイズが合わなかったり似合わないというリスクを負いますが、実は若者達はネットオークションを活用してこのリスクをヘッジしています。娘なども何回かしか来ていない新品の服でも似合わなかったり、飽きたりするとオークションですぐに売ってしまいます。そしてオークションでまだ新しい服を買う。そして又売る・・・。
こうして、ある程度の新しい服がオークションに出品される限り、ネット通販のリスクは回避されます。そして、リアルな店舗はどんどん売り上げを落として行く。
一方、長時間労働と薄給でキラキラな割りにブラックな美容業界ですが、これは通販で代替えする事が出来ません。
美容師の卵たちは、営業後、夜中の1時2時まで店に残ってトレーニングをし、休日返上でカットモデルの子をモデルハントし、さらにセミナーやヘアショーで自己研鑽に励む。そして日々の接客の中で客を喜ばせる会話を学んでゆく。
彼らは技術とセンスを身に付けていますから、これをAIやロボットで代替えするのは難しい。
■ 少子高齢化のデメリットはAIとロボットとネットによって軽減される ■
「超少子高齢化で日本の労働力が不足する」と言われますが、AIとロボットが進化すると、ある程度の労働力はこれらに置き換わるでしょう。
さらに、生産性が低くロボットに代替え出来ない仕事は、現在同様に外国人労働者で代替え可能です。
■ AIやロボットから人頭税を取れるか? ■
問題が有るとするならば、AIやロボットから所得税が取れない事では無いかと私は妄想しています。
例えば、ある会社で今の1/10の人材で現在と同じ利益を上げたとします。AIやロボットの経費まありますから、利益が微増だとすると法人税もそれ程は増えません。ところが、雇用が失われるので所得税は確実に減ります・・・。
いやいや、ロボットやAIの開発は人の力が必要だから・・・そう思ってAIの開発会社を覗いたら、高度なAIがシステムを開発していた・・・ロボットの生産工場を覗いたらロボットが働いていた。物流は自動運転のトラックだった・・・。
人間は、AIやロボットの補助的な作業をするだけだった・・・・。
おおーーーと、妄想が暴走してしまいましたが、なんだかターミネーターで描かれた未来の世界の様だ・・・。
かくなる上は、AIとロボトから人頭税を取って、我々は遊んで暮らそう、ベーシックインカムで。
・・・ほら、バラ色の未来が見えて来た・・・・。
と、その時、政府の中央コンピューターの行政AIが判断を下します・・・「人が居なくなれば、無駄は減らせる」と。こうしてロボット達の人間狩りが始まったのです・・・・ウァー、やっぱりターミネターみたいな未来しか想像できねぇーーーー!!
問題はAIとロボットを使役する企業は、世界の何処の国でもそれなりの生産性を上げられるという事。国家が法人税の課税を強化するならば、グローバル企業は税金の安い国に移って行くだけ。
法人税の課税強化が出来ないのは世界的な傾向で、かと言って所得税も消費財も増税には国民が反対するので、結果的に先進国では政府債務が膨らみます。
確かにAIとロボット化と、そして製造コストの安い国での生産によって、物価は下がりますが、これはデフレ圧力になって経済を停滞させます。一方で、デフレによる低金利は政府の借り入れコストを下げるので、「成長なき継続」という日本をトップランナーにしたニューエコロジーが先進国のトレンドとなるのかも知れません。
いますが、製造コストが下がって会社の利益になれば法
人税が取れ、製品価格の低下に繋がるなら雇用者から消
費者への所得転移が起こることになります。ということ
は、今後AIとロボットが発展していくなら、企業と消費
者への課税を強化して行けばそれで良いことになる気が
します。あまり本質的な問題はないのでは?
個人的に大問題だと思うのは、AI・ロボットが人間のよ
うな消費意欲を持たないことです。AIを開発して走らせ
るにはソフト技術者とサーバー(と電気)が必要です
し、ロボットも製造して維持するコストはかかるのです
が、それだけです。
これでは本質的に(需要を増やすという意味での)経済
の活性化に繋がりませんし、たぶん社会を豊かにするこ
ともないでしょう。