■ 失業率が6.5%になるまで金融緩和を継続するアメリカ ■
日本の周回遅れのFRBですが、ここに来てペースを上げてきています。
連邦公開市場委員会(FOMC)では次の決定があった様です。
1) MBSの月額400億ドル買いいれ継続
2) 米国債のツイストオペの中止
3) 新規長期米国債(6~30年)を月額450億ドル買いいれ開始
4) これらの政策は失業率が6.5%に低下するまで継続する
合計月額850億ドルを市場に供給し続けるとしています。
80円/ドル 換算で、1ヶ月6.8兆円、1年間で81.6兆円の緩和になります。
■ 雇用を口実に、金融市場に資金を供給し続けるFRB ■
FRBは失業率が6.5%に低下するまで緩和を続けるとしています。
これは、表面上は「実態経済を回復させる」と言っているに等しい。
しかし、供給されたドルは、金融市場の借金の穴埋めに使われるのです。
リーマンショックで不良債権の山を築いた米金融業は、
定期的な資金供給が無ければ、借金を返済出来ません。
ですからFRBが毎月、ゴミ同然のMBSや、
将来ゴミとなるかも知れない米国債をせっせと買い上げて、
銀行に資金を供給し続けています。
供給されて資金は、債券金融市場の拡大につぎ込まれます。
債券金融市場は、借金が借金を生む市場ですから、
市場縮小は、市場の崩壊を意味します。
リーマンショックが良い例です。
どこかで信用不安が発生すると、それが全体に波及するシステムなのです。
既にアメリカの債券金融市場は、リーマンショック以前の水準を超えて拡大しています。
拡大を続けるしか、この市場を維持する事が出来ないからです。
ですから、FRBの供給する資金は、この市場に滞留し続け
自体経済を潤す事はありません。
当然、失業率を直接低下させる事も出来ないのです。
■ 間接的に失業率の低下を促す ■
FRBの言い分は多分こうでしょう。
MBS市場が安定すれば、住宅ローンが組みやすくなって、
住宅市場が回復するに違いない。
確かに2012年後半は住宅市場が持ち直していると言われています。
住宅価格の下落が、地域によっては上昇に転じています。
しかし、これはバブル後の日本でも起きた事です。
本当に価値のある物件が、値下がりで値ごろ感が出てきて、
投資資金がそれに目を付けただけでは無いでしょうか?
住宅着工件数が上昇しているというご指摘もありますが、
これも有り余る調子資金の一部が、集合住宅建設に向っているだけの事です。
これらの資金は流動的で、景気が下方に向うと判断すれば、
一気のこの流れは断ち切られます。
■ 雇用の質が低下する中で、住宅市場が回復する訳が無い ■
アメリカの失業率が7%台になったとアメリカ人は大喜びです。
しかし、これには二つのトリックがあります。
1) 就職を諦めた人達が労働市場から退場して失業率が下がる
2) 正規採用からパート雇用へ、労働の質が低下している
先にシティーバンクの1万人規模のリストラが発表されていますが、
アメリカでは、高額所得者が減少して、低額所得者が急増しています。
■ 構造改革と所得推移 ■
かつて、自動車工場に勤務していた人達は年金も含めて高額の報酬を受け取っていました。
ところがアメリカで製造業が衰退すると、
それらの人達は生産性の低いサービス産業へと流れます。
ウォールマートの安い自給で働くようになるのです。
その後、アメリカではIT革命や金融革命など
生産性の高い産業が台頭し、リーマンショックまでは好景気を謳歌します。
ところが、ITバブルが弾け、
金融バブルが弾けた為に、
これらの産業の所得の高い雇用は、再び減少する事になります。
今では、ウォールマートのレジ打ちですら奪い合いです。
従来、高校生のアルバイトだったファーストフードのアルバイトに
大学を卒業した若者が着くようになりました。
弾き出された、低学歴者やスキルを持たない人達は失業者に転落しています。
この様なアメリカの労働環境において、新規の住宅需要がどれだけあるのでしょうか?
結局、「住宅市場を回復させる為」と説明されるMBSのFRBの買い入れは、
金融機関の不良債権の買取意外の何物でも無いのです。
さらに、MBSの買い入れは長期金利の上昇を押さえる効果があります。
ですから、FRBはツイストオペを停止して、
短期国債購入に重点を置く事が出来るのです。
■ 膨らみ続けるFRBのバランスシート ■
FRBは金融緩和の長期化で、バラランシートが膨らみ続けています。
「米国債はドルの裏側みたいなものだから問題は無い」という意見もあるでしょう。
しかし、米国債にしてもドルにしても、紙切れに価値を与えているのは市場の信用です。
確かに自国通貨で発行される米国債をFRBが無限に買い付ければ、
米国債の崩壊は回避する事は可能です。
しかし、そんな通貨を機軸通貨として誰が認めるでしょうか?
「アメリカはドルを刷りさえすれば、世界から買い物し放題だ」と世界の人が気付いたら
ドルが暴落する事は必至です。
当然、機軸通貨の立場も失うでしょう。
そうなれば、アメリカは THE END デス!!
■ 「財政の崖」の先にあるものとは? ■
「財政の崖」に注目が集まっています。
しかし、よれよりも重要なのは2012年末にも、
米国債が発行上限に達する事です。
アメリカは米国債の信用を確保する為に、
米国債の発行残高の上限を議会承認して、無節操な米国債の発行を抑制しています。
しかし、2011年8月に決定した上限に、今年度中に到達してしまいます。
再ば、議会は紛糾し、米国債市場に巨大な圧力が掛かります。
■ 財政出動を促すFRB ■
この様な状況にあって、バーナンキ議長は「目標達成は金融緩和だけでは不可能だ」と発言しおています。
これは、自民党の安倍氏の主張と同様に、「財政出動」を示唆していると思われます。
周回遅れだったアメリカが一気に日本に追いついて来た様です。
しかし、米国債に対する世界の目は厳しい。
■ ルール無用のチキンレースがスタートする ■
FRBの緩和策は、実質的には変化していません。
MBSの買取
米国債の買取
ツイストオペ
この順番で上限額を決めて実施していたオペレーションを、
同時に実施して、期間を無期限に延長しただけの事です。
これって、日銀の「時間軸」と同じ手法とも言えます。
金融緩和がこの先継続されるという安心感で、期待インフレを高める政策です。
しかし、日銀の緩和策は、円キャリーに利用されただけでした。
日銀の金利引き上げが遠因となってリーマンショックを引き起こしたとも言われています。
アメリカの「無期限のドル供給の継続」の破壊力は日銀以上でしょう。
もし、FRBが利上げをする状況が生じたならば、
世界は震撼するハズです。
FRBもECBも日銀も、ルール無用のチキンレースを繰り広げています。
誰が一番最初にブレーキを掛けるかで、
崩壊の発生する場所が代わってきます。
今までは、日銀が周回リードしていましたが、
リーマンショック後、FRBとECBが猛追しています。
そして、とうとうFRBが持ち前にビックパワーを生かして首位に踊り出ようとしています。
カーブを曲がりきれずにコースアウトするのか?
それとも、カーブ手前で急ブレーキを掛けるのか?
何れにしても、市場はその瞬間がいつなのか固唾を呑んで見守っています。
手元の車券が一斉に宙に舞う瞬間は、はたして訪れるのでしょうか?
してる様に感じますが・・・・。誰もドル帝国の崩壊なんて
信じてないのでは?。
この金融オペ真っ最中の状況下で、利上げの口実となるのは?。
ってか、なんで今ここでドル高なんでしょうか?。
ドル高・・・どうも円キャリーが発生しているみたいですね。日銀の緩和マネーが世界を徘徊しているみたいです。
債務上限・・・「財政の崖」と抱き合わせで議論されているのでしょうか?ドルが無くなる訳は無いと思いますが、リーマンショック直後は真剣に世界がドルの崩壊を心配しました。結局、信用とは「慣れ」なのかもしれません。危機に慣れすぎて、信用の基準も大幅に緩和されているのでしょう。