■ リフレ派と反リフレ派の違いは、市場の影響力をどう読むかにある ■
安倍政権の発足を前にして、リフレ派の鼻息が荒くなってきました。
この所の円安、株高が彼らに自信を与えています。
一方、反リフレ派(財政規律派)は、国債金利の上昇に警鐘を鳴らしています。
一見彼らの意見は真っ向から対立する様ですが、
日本経済の基本認識には、それ程差は見られない様です。
リフレ派も「流動性の罠」や「構造改革」の重要性、
あるいは、日本が抱える「少子高齢化による需要の低下」は十分理解しています。
リフレ派は「金融緩和」と「財政出動」を今しなければ、日本経済は破綻すると主張しています。
仮に財政赤字が増えたとしても、日本国債の所有者は90%が国内だから大丈夫と主張します。
一方、反リフレ派が懸念するのは、財政規律が悪化する事で、
日本国債の需給関係が短期的にせよ悪化する事です。
国債金利が短期的にでも跳ね上がる事があれば、国債金利の逆ザヤが生じ、
国内の金融機関の経営を圧迫するというのが、反リフレ派の主張です。
それに対するリフレ派の反論は、以下の通りです。
1) 国債金利の上昇は、景気回復局面で発生する
2) 景気が起伏すれば、国債以外の資産価値が回復するので金融機関の経営は圧迫されない
3) 海外の国債売りに対しては、国内の購入余力が上回ので、問題にならない
4) そもそも、日本国債を暴落させたら、ヘッジファンドの手元に残る円が暴落してしまう
反リフレ論者にはマーケットに携わる人達が多く、市場の恐さを熟知しています。
1) 金利上昇は一瞬にして発生する
2) マーケットの雰囲気が反転した場合、変化は一気に進行する
3) 景気回復による資産価値の上昇には、一定の時間を要する
4) ヘッジファンドは日本国債を暴落させるのでは無く、金利変動によって利ざやを抜く
どちらが正しいか・・・・私には良く分かりません。
■ 日本国債売りを目論むヘッジファンド ■
ヘッジファンドは日本国債の2%程度の金利変動を演出できれば利益は莫大だと主張します。
海外ヘッジファンドの日本国債の保有高は50兆円以上。
場合によっては70兆円を超えると言われています。
残存の短い国債を保有し、基本的には償還時の利息で利益を確保しています。
国債の金利変動で利益を出す為には、先物市場とCDSの組み合わせが利用されます。
1) 国債とCDSを購入し、国債価格を吊り上げる(国債利率を下げる)
2) 日本国債の先物売り、空売りのポジションを組む
3) 同時に国債に対するネガティブな情報を流す。(CDSのスプレッドの上昇とか)
4) 現物売りを仕掛ける
上記に様な方法で、仮に10年国債の金利が2%上昇すれば、
ヘッジファンドは充分な利益を確保するでしょう。
では、はたしてヘッジファンドの思惑通りに金利は変動するでしょうか?
■ 日本国債売りは失敗の歴史 ■
海外のヘッジファンドによる日本国債売りはこれまでは失敗に終わっています。
それは、国内の金融機関が巨大な預金超過を抱えている為に、
金融機関が損を被る日本国債の下落に対して、買い支えで抵抗していたからです。
■ 国内金融機関の当座預金残は40兆円超 ■
リフレ派の多くは日本には200兆円を超える金融機関の預金超過が存在すると主張します。
しかし、金融機関の預金超過分は、日本国債で運用され、
銀行の手元に200兆円がある訳ではありません。
一方で、金融機関の余剰資金は日銀の当座預金口座に積み上がっています。
この額は、40兆円を超えています。
もし、ヘッジファンドが日本国債を売り浴びせても、
この巨大な日銀の当座預金が、売りを吸収してしまいます。
ですから、ヘッジファンドが日本国債を売り崩すには、
50兆円とか、70兆円などという巨大は売りを発生させる必要があるのかも知れません。
■ いざとなったら、日銀が買い支えたり、国債を償還すれば良い ■
国内の金融機関で買い支え切れなければ、
日銀が買い支える事も可能です。
あるいは、余剰国債を政府が償還してしまうのも手でしょう。
短期政府証券を日銀に買い取らせて資金を捻出する事も出来ます。
■ 景気の回復局面がヘッジファンドのねらい目では? ■
こうして考えると、ヘッジファンドが日本国債を売り崩すには、
もう少し、日本国債の需給関係が悪化するのを待つ必要がありそうです。
しかし、日銀がさらなる金融緩和を実施すれば、
金融機関の日銀当座預金には、さらなるブタ積みが発生します。
とかく悪者にされがちな、ブタ積みですが、
日本国債の安全装置として機能しているとも言えます。
景気が回復基調に乗り、民間の資金需要が回復し始めると、
日銀の当座預金の残高は減少し始めるでしょう。
それと同時に、国債でしか運用されていなかった資金が
より高い金利を求めて、民間に貸し出され始めます。
こうして、金融機関の預金超過や日銀当座預金が減少し始めた時、
景気回復から、日本国債の金利が緩やかに上昇し始めます。
ここをヘッジファンドが狙って来ると私は思います。
要は、「出口」が一番危ない。
■ 日銀が景気回復の目を摘んで来た理由 ■
かつて日銀は景気の回復局面で、早すぎる引締めを実行し、
景気の芽を何度も摘んで来ました。
この日銀の不可解な行動に、日銀はデフレを作っていると非難する人も居ます。
しかし、私は白川総裁がエレガントにデフレを継続したのには意味があると邪推します。
それは、景気回復局面で、日本国債に大きな利上げ圧力が生じる事を熟知しているからではないでしょうか?
だから、日銀はマネタリーベースを不用意に拡大してインフレを誘発する事を避け、
さらには、緩和の裏側で、円をせっせと回収して景気回復を押さえ込んで来た。
■ 建設国債発行という意味 ■
自民党が建設国債を発行する意味も大きいと思います。
建設国債ならば、海外の金融機関が保有していないので、
売り浴びせを回避できると考えているのではないでしょうか?
(当然、償還期限が60年というのも魅力ですが)
日銀が緩和した分で、金融機関に入札させれば、需給が急激に悪化する事もありません。
それでも償還期限60年などという国債を金融機関は保有したがりませんから、
最終的には日銀が買い上げれば良い。
これで、日銀の直接引き受けでは無いと、言い逃れが出来ます。
■ マネタリーベースは確かに景気回復に繋がるが・・・ ■
アベノミクスの怖い点は、景気がある程度回復する事にこそあるのかも知れません。
マネタリーベースを拡大し、公共事業を拡大すれば、確かに景気は若干は回復します。
しかし、日本国債の金利上昇圧力というリスクも平行して大きくなります。
景気回復は、緩やかに進行します。
しかし、ヘッジファンドの日本国債売りは、ある日突然始まります。
そして、日銀がをれを直接買い支える様な事態になった時、
日本国債の安定性に多くの人が疑問を抱く様になります。
確かに金利上昇は日銀の買上げで防げますが、
日本国債の危険性が意識される事で、
日本国債の金利が一段か踏みあがり、
巨大な発行残高を抱える日本国債の需給は不安定になり、
さらなる金利少々圧力が生まれます。
そこから先は、ヨーロッパの国債市場で私達が見てきた事が繰り返されるかも知れません。
ヘッジファンドは何度も日本国債売りを仕掛け、
その度毎に、売りが増大して、ヘッジファンドは金利変動で儲けを上げる様になるかも知れません。
その様な状況では、せっかく芽生えた景気回復の目も詰まれてしまいます。
こうして、景気が減速するのに、金利が上昇する様になれば、
さすがに国内の金融機関も、日本国債を買います事に躊躇するでしょう。
■ 楽観論に支配されるリフレ論 ■
経済は楽観主義でなければ成長しません。
その意味においてリフレ論の言説は、正しいとも言えます。
一方、ヘッジファンドや市場は冷酷です。
彼らは楽観論の隙を見逃しません。
確かに私の見方は、悲観的過ぎるかも知れません。
しかし、市場を長く経験している人達がリフレ論に手厳しいのは、
彼らが市場の冷酷さを十分に熟知しているからでは無いでしょうか?
■ 「信用」という抽象概念の裏に潜むもの ■
反リフレ論者は「通過の信用が失われる」「国債の信用が失われる」と発言します。
しかし「信用」とは抽象概念で、今一つ、どうしたら「信用」が失われるのか理解出来ません。
ですから、もっと具体的にどういう状況が発生するのか
明確に語るべきだと思います。
経済学の論争は、難しい式や、限定的な条件の話に終始して、
私達庶民には理解し難い所があります。
一方で、市場は「空気」に支配されている所もあり、
難しい数式など無視して、「儲かるという勘」によって動きます。
「信用」の限界とは、案外、市場参加者達の「勘」の作動点なのかも知れません。
それを明確に定義する事は難しいのでしょう。
本日は雨なので、お出かけも出来ず、
不毛な妄想に浸ってしまいました・・・。
というと、短期間での、急激な金利の動きは今のところは、
国内問題に限って言えば、まあ無いでしょう。あとは、
ドルとユーロ、そして米国、いやロスチャイルドの意を
受けた中国の動き方次第、ですが。只、ここまで、
低金利バブルを続けてしまったニッポン、長期金利が、
1%から1.8%に上がっただけで、借金の多い多くの企業に、
つまりは株価時価総額と有利子負債の関係ですが、又、
上場していなくとも、銀行管理で、低金利で無ければ、
本当はお前はもう死んでいる企業も多数あります、
そこにどのような変化があるのか。少々の円安で、
企業の海外流失が収まるのか、無理でしょう。規制を掛け、
格差を是正し、国民の末端にまでお金を廻し、
少子高齢化を止めなければ、景気は回復はしません。
ネットではリフレ派だ、いや違う、と言い争っていますが、
本当の問題は、数字の話ではなく、国民に貧しくとも
中流幻想を与え、5年後、10年後の生活が、
思い描けるようにする政策が必要なのですが、
小泉・竹中の規制緩和と構造改革は、
その真逆の結果となりました。但し、日本国民が、
円、に対する幻想を捨てることはまず無いでしょう、
たとえ日本国債売りが仕掛けられても、唯一の国内通貨、
ですから。問題はやはり、ドル、の動きでしょうか。
TVが無いので、NHKの番組の内容が分かりませんが、短期的には金融緩和や財政拡大の好影響が出てくるでしょう。しかし、現在の日本で力強い景気回復は想像出来ないので、財政赤字拡大の悪影響が次第に優性になると思われます。
問題は、悪性インフレが顕著となった場合に、金利を引き上げると日本の経済が崩壊するという事に尽きると思います。アメリカも同じ問題を抱える訳で、限界を超えた緩和政策は、崩壊を迎えるまで止める事が出来ないというのが私の予想です。
アメリカは2013年から新100ドル紙幣を使用するそうですね。それが、早速空港で大量に盗まれるという事件が発生しています。
新ドル紙幣はオレンジ色の鐘がデザインされているとか・・・。アメリカは2011年の新ドル札発行を中止していますが、偽100ドル札が裏の世界の通貨として流通している事を考えると、新札の発行は、アメリカ国内の権力構造の変換とも絡むので、非常に興味深いイベントです。
はたして、2013年に何が起きるのか・・・米景気の大復活では無い事は確かでしょう・・・。
少なくとも円安に振れれば、輸出企業は一息つけます。ただ、パナソニックの携帯電話がシンガポール製であるなど、既に製造業は日本ブランドであっても輸入品も多くなっています。その場合、円安で国内価格が上昇し、売上た低下したり利益が減少するケースも発生します。
日本は既にある一線を越えているのかも知れませんが、金利の上昇がコントロールできなくなるまで、リフレ派の勢いは止まらないのかも知れません。
景気回復は日本人の悲願ですが、アメリカの状況を見ると楽観は出来ませんね。
それはあくまでも内需なんですよね。貿易赤字がガンガン膨らんでいる現状、
無駄な一人相撲の内需を発生させる事に、意味はあるのでしょうか?。
民間企業が景気の先行きを不安視している間は、投資を控えるので、資金需要が無い状態で金融緩和には高価が有りません。実際に、円キャリートレードが復活している様です。しかし、今回の自民党の様に財政政策で強引に仕事をばら撒けば、名目GDPは拡大します。問題はそれを起爆剤に本格的な景気回復が始まるかどうかです。
リフレ派の主張は、過去に3回程あった景気回復局面を日銀が早すぎる引き締めでことごとく潰して来たというものです。
私は日銀はそれ程バカでは無いので、景気回復に何らかのリスクが存在するのではないかと考えます。それが、日本国債の金利上昇ではないかと邪推しています。既に日本の財政は、金利上昇に耐えられないのでは無いでしょうか?
もう一つの可能性は、アメリカの資金元として、日本の金利を低くしておかなければ、ドル体制が崩壊するというものです。円高故に、民主党政権下で為替介入を行われ、何十兆円かがアメリカ国債に姿を変えています。さらには、金利を求めて日本のマネーは海外に流出しています。日本の資本収支は赤字を続けています。この資金の流れが逆転すると、米経済に悪影響があるのかも知れません。
しかし、実際に実体経済の景気回復させるイベントなどが
これからあるのでしょうか?。なんか、”景気が良い・悪い”の
意味さえ分からなくなってきました。