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「貴族」と「庶民」・・・金融危機の先にあるもの

2008-12-18 05:22:00 | 時事/金融危機
■ビック3を救済

自動車産業が本当に大変な事になってきました。
ビック3は、経営が好転しうる要因が全く無いのだから、
政府に救済されようが、されまいが、
ゆくゆくは市場から消える運命なのでしょう。
救済策は、ソフトランディングかハードランディングかの選択。

例え救済されても、結局、本業の車が売れなければ、
3ヶ月、半年で事業資金が底を付いて、The END
それまでに米国内の部品メーカーの救済や再編が出来ていれば、
日系自動車メーカーは生き延びられるでしょうが、
それも失敗したら、日系自動車メーカーも一連托生・・・。
まさに、「死なば諸共」状態で・・・・。
尤も、少しくらい工場が止まった所で、膨大な自動車在庫が溜まっているでしょうから、
その間にどれだけ、サプライヤーを確保出来るかがカギとなるのでしょう。

■ドルは持ちこたえるのか■

ビック3が倒産となった場合、一番心配なのはやはりドル。
ドル不安が一気に加速して、誰かがドルを売り始めたら雪崩を打って・・・・。
イヤー、想像するだけでも恐ろしい・・・。

ネットには新北米大陸共通通貨(アメロ)や、
新ドル紙幣(ブルーノート)の話も飛び交っていて、
さらに、CNNが「アメロ」絡みの報道をしたり・・・。
これって、任期あと僅かなブッシュ政権のイヤガラセですか?
「イタチの最後っぺ」みたいな。(かの国では、スカンクなんでしょうが・・・)

ドルの崩壊論などは今に始まった事では無く、
以前から幾多の本が出版されています。
「刃物を見て、手を切る事を想像してしまう」に近いものがあるかも知れません。
ドルの一極体制はそもそも危険な物なのでしょう。

■投資銀行は商売になるのか■

ビック3倒産などというのは、崩壊の引き金にはなるのでしょうが、
崩壊のそもそもの要因は、やはり金融の崩壊。

今、アメリカ政府は必死に金融機関に資本注入していますが、
今注入しているお金は、既に明確化している返済に充てるのが手一杯でしょう。
元投資銀行は新しい商品を組成して売る事が出来ないのですから、
こちらもビック3同様、商売は成り立っていません。
利払いと、CDSなどの清算だけがグルグルと回っている状態でしょうか。
元手は救済資金でしょうか・・・・。

リーマンの破綻だけでこれだけの大騒ぎですから、
ゴールドマンあたりがコケたら、回るものも回らなくなる。
既に、ゴールドマンは創業以来の赤字を計上しています・・・。

■楽観論と悲観論■

全くもって危機的な経済状況ですが、
楽観的な見方も出来ます。
「アメリカの現在の金融政策は日本のバブル処理に似ています。
日本のバブル処理が上手く行ったのだから、
きっとアメリカでも成功して、何年後かには経済は持ち直す。」
・・・そんな予測でしょうか。

しかし、今回の金融危機と日本のバブル崩壊には根本的な差があります。
日本のバブル崩壊は確かに無理な融資が積み上がった結果ですが、
その融資先はリゾートであったり、ゴルフ場であったり、現物が存在しています。
破綻して一旦は価値が下がりますが、担保としての価値が残ります。
幾分目減りはしますが、経済が持ち直せば、不良債権も又価値を取り戻します。
再生機構入りした企業も、多くが再生しています。

しかし、今回の金融危機の場合、
お金に対してお金でレバレッジを掛けています。
1万円の手元資金しかないのに、10万借り入れて金融商品を購入する。
時価会計で、見掛け上の時価総額が膨れ上がり、巨大な融資を受ける。
こんなデタラメが繰り返されたお陰で、
収益として見込まれていたお金は、実はフェイクだった・・・。
はっきり言って、「詐欺に引っかかった」と思えば分かり易いでしょう。

こう考えると、悲観的にしか考えられなくなります。


■借金は誰が返すの■

こうして膨らんだ借金を誰が返すのでしょう?
アメリカ政府がいくら資本を注入しても、
国家予算の何倍にも膨れ上がったフェイクマネーを実体化する事は不可能です。
そもそも、フェイクマネーの実態がドルなのですから。
誰かが、「大様は裸だ!!」と言った瞬間に、
ドルは大暴落して、フェイクマネーは紙切れとなるのでしょう。

輪転機をガンガン回してドルを刷りまくったり、
国債をバンバン発行したりすれば(現にそうしていますが)
結局ドル崩壊、アメリカ国債の暴落、アメリカ国家のデフォルト行き着きます。
そう言った意味でも、今回のアメリカの0金利政策も量的緩和緩和も
長期的に見ればドルの終焉を早めるだけです。
ただでさえだぶ付いているドルをさらに供給するだけですから。


■実体経済の失速こそが本当の危機■
               
債権化、証券化された金融商品は、リスクヘッジという名目で細分化されていますから、
サプライムローンの時の様に、損失が確定するまでに時間が掛かります。
遅延タイマー付きの時限爆弾のように、来年あたりに思わぬ所で爆発します。

それが怖くて、各金融機関は手元に資金をなるべく残そうとしますし、
金融株の下落が自己資本率を引き下げてしまいますから、
貸しはがしこそすれ、大口の貸し出しは出来なくなります。

企業の直接金融市場も停滞していますから、
CPを発行しても普通の利息では買い手が付かない・・・。
健全な企業でも、資金調達コストはどんどん高くなって行きます。

流動性の極端に低下した状態の中で、
大企業といえども企業活動は大きく制約を受け、
世界経済は負のスパイラルに突入します。

■20世紀の終焉■

今年は21世紀に入っても続いていた「20世紀型の社会」が終焉した年として
人々の記憶に残るでしょう。
「実際の生産力以上の消費を続ける社会の終焉」とも言えます。

20世紀初頭は帝国主義という格差と詐収によって、
後進国の富を先進国が吸い上げてきました。

21世紀に入ってからは、金融というトリックを使って、
国家間のみならず、自国や世界の未来の富を吸い上げて来ました。

もう富の生産以上の消費は限界に達しています。
仮にBRIC'S諸国が20世型の消費社会に突入しても
吸い上げる富が枯渇しています。
中国やインドの発展は、自国内の格差が生み出すものですから(安い労働力)
あっという間に疲弊してしまいます。

■新貴族社会■

富の生産は有限です。
基本的には太陽によってもたらされるエネルギーの変換によって生み出されます。
石油も石炭も、鉄鉱石までもが過去の太陽エネルギーの缶詰のようなものです。
この有限の富を分配する人間が増えれば、当然一人当たりの分け前は減ります。
分配する国が増えれば、当然、それぞれの国の分け前も減ります。

結局、グローバリゼーションが世界を均質化する過程の中で、
富は世界に拡散して、薄まってしまいます。
覇権国家という概念自体がグローバル化した世界においては成立しません。

労働の国際化は先進国の賃金を引き下げ、
優秀な人材の国家間の流動性を加速します。

最終的には、少数の富める者と、大多数の中流以下が出現します。
「貴族」と「庶民」と言い換える事も出来ます。
富の世代間の流動性が確保されていれば、アメリカ型の社会になりますし、
流動性が低ければ、ヨーロッパ型の貴族社会が出現します。
「銀のスプーンを咥えて生まれてきた者は・・・」ってやつです。

自動車メーカーの蹉跌は、その辺を読み違えた事にあります。
25万円のインドの乗用車は求められますが、
高級車に乗れる人は、どんどん減っていきます。
それが、グローバリゼーションなのだから。
昨今の高級車ブームは、金融トリックによって未来の富を使ってしまっただけなのです。

今回の金融危機を境に、
世界はデモクラティックの幻想を捨てなければならないかもしれません。
既に、アメリカの民主党次期政権だって、
労働者の権利とは程遠い政策を採らざるを得ません。

人間が「生き物」で、本質的に競争を望む以上、格差は発生します。
又、競争の無い社会や生物は衰退していく事は、社会主義の消滅でも明らかです。

21世紀の社会で、「貴族」になるか「庶民」となるかは
「生命力」や「欲望」といた根源的な活力の違いが決定するのかおしれません。

私はというと、・・・・やっぱり「庶民」ですね。





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