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政治の道具としての地政学・・・戦争を正当化する理論

2014-04-24 10:37:00 | 時事/金融危機
 

■ 地政学が注目されて来た ■

コメント欄にウクライナを巡る米ロ関係や、アジアを巡る地政学のコメントが寄せられいるので、少しこれらの事についてまとめてみようと思います。(陰謀論的に)

最近、新聞などでも使われる様になった「地政学」という言葉。例えば「ウクライナはヨロッパとロシアの中間に位置し、歴史的にも地政学的リスクが高い地域でした・・・」などという使われ方をします。

ところで、「地政学」とは何なのでしょうか?

■ 古くて新しい地政学 ■

詳しい事はWikipediaを見ていただくとして、「地政学」とは特別な学問では無く、「国家や国際関係を地理的条件から分析する学問」と言えば分かり易いかも知れません。

例えば、大国に囲まれた海に面した小国が海洋国家となる理由を地政学的に説明するとすれば、「陸地側は大国によって進出を妨げられている為に、海を交易路とした事で航海技術が進歩し、遠い海外との交易で富を蓄えて国家が成長した」などとい言い回しになります。(超簡略化していますが)。

地政学自体は古くからある学問で、古代ギシシャ時代には既に地政学的な考察がされる様になっていました。

■ 地政学同士の対立 ■

一方、「地政学」が注目されたのは20世紀の2度に渡る世界大戦の時代です。地政学は大別するとドイツを中心にした「大陸系地政学」と、米英を中心にした「海洋国家性地政学」に大別されます。

「大陸系地政学」は、国境を接する大陸内部の国家が生き残る為に生み出された論法で、国家の「生存圏」の正等性を主張する事で侵略戦争を正当化します。

一方、「海洋国家性地政学」は、海洋交易によって比較的自由な交易圏を形成する事で、お互いの利益を拡大するという志向を持っています。

植民地時代になると、大陸国家も利権を求めて海洋に進出して来る様になります。ドイツやフランスも英国に遅れを取りながらもアフリカなどの利権獲得に勤しみ、ロシアも不凍港を求めて南下政策を取ります。

海洋国家の利権に割り込んで来た大陸国家を、海洋国家が看過する訳がありません。そこで「海洋国家性地政学」は国家間の対立を「ランドパワー VS シーパワー」という単純化に置き換え、米英を中心にした「シーパワー」が、ロシアやドイツといった「ランドパワー」と戦う事は地政学的必然であると主張する様になります。

■ 侵略戦争を正当化する為に利用された地政学 ■

実は日本では戦後、地政学はタブー視されてきました。日本は第二次世界大戦当時、ドイツの
「大陸性地政学」の影響を受けた人達が、「大東亜共栄圏」という理想を掲げて、泥沼の戦争に突入した経緯があるからです。

この様に、「地政学」は純粋な学問というよりも、「戦争を正当化させる為の理由」を学問の体裁で主張するという性質を持っており、領土的野心と不可分なものだとも言えます。

■ 冷戦構造を正当化した地政学 ■

第二次世界大戦後も地政学は世界運営に大きく寄与します。

東西冷戦は「シーパワー」である米英とその連合国家が、「ランドパワー」である中露を大陸に封じ込める為の対立と説明する事が出来るからです。

ここでは、暗黙の内に、「シーパワー」と「ランドパワー」は相容れない性格であるという前提条件が伏せられています。

「領土拡張的野心が強いランドパワーを、自由交易圏を重視するシーパワーが封じ込める」というストーリーを作る事で、米英は自分達の利権を守ろうとしたのです。

■ 戦争に利用される学問 ■

冷戦終結後、世界は「地政学対立」から「文化の対立」に充填を置く様になります。

1996年に政治学者のサミエル・P・ハンティントンが発表した『文明の衝突』は、「異なる文明が接触するとき、必ず戦争が起こる」とする事で、その後の「イラク戦争」を予言したと持てはやされます。

しかし、ハンティントンが『文明の衝突』を発表したのは、アメリカの外交を方向付ける「アメリカ外交評議会(CRF)」の発行する『フォーリンアフェアーズ』に掲載された論文である事を知る人は陰謀論者くらいです。

陰謀論者からすれば、『文明の衝突』はその後に起こる「宗教戦争」を正当化する為に発表された論文であり、アメリカの利権戦争を「宗教や文化の対立」にすり換える為のギミックに過ぎないのです。

■ 再度台頭する「地政学」が「地政学的危機」を煽る ■

中国の発展でアジア諸国やアメリカは中国の太平洋への進出を警戒しています。中国は外洋で運用出きる海軍を長い間持っていませんでしたが、最近10年の間に外洋艦隊を強化し、錬度も飛躍的に向上しています。

この様な中国の海軍増強に警戒感を隠さないのが、フィリピンやベトナムなど南シナ海で領土問題を抱えた国々です。日本も同様に「尖閣問題」によって中国脅威論が急激に高まっています。

「中国脅威論」の根底には、「中国が海洋進出すれば利権どころか領土も危うい」という「地政学的危機感」が存在します。そして、昨今の「地政学」への最注目は、中国への危機感を正当化する目的が見え隠れします。

ウクライナ問題も、ロシア海軍の重要な基地があるクリミア半島を巡る争いでもあり、こちらでもクリミア戦争時代の亡霊が目を覚ましています。

■ 利用される「正義」 ■

「地政学的危機」を煽る為には、ランドパワーとシーパワーの対立する理由が必要です。

ジュリアン・アサンジ率いるウィキリークスや、アメリカの諜報活動の機密を持ち出したスノーデン氏は、「アメリカが謀略によってロシアや中国の安全保障を帯びやかしている」という印象を世界に与えました。

ロシアがスノーデン氏を匿ったことで、ロシアはアメリカの良からぬ秘密を手に入れたに違い無いと考える事は自然です。

アメリカの覇権を望まない多くの人達は、プーチンをアメリカに対抗する救世主の様に見ています。欧米のマスコミはウクライナでのロシアの行動を非難しますが、ネットで情報を得ている庶民はプーチンとロシアの行動を必ずしも否定しません。

この様に、表のマスコミがロシアを避難するのに対して、世界のネット言論は「悪いのはアメリカや欧州だ」という論調になってきています。

これは一見バランスが取れている様で、その実、米ロの対立を正当化し、深刻化するようなベクトルで力を働かせます。

要は、「正義の告発」は、対立の深刻化に役立っているのです。これらの「正義の告発者」が情報を寄せるのは、何故なイギリスのガーディアン紙です。ジャーナリズム的には「スクープを獲得した優秀な新聞社とその記者達」と評価されるのでしょうが、イギリスの情報戦の巧みさを知る陰謀論者からすれば、なんとも胡散臭い臭いがプンプンするのです。

■ 目的に注目する陰謀論と、経過を重視する歴史 ■

仮に将来、中国やロシアと欧米や日本の間に軍事的対立が発生したとして、歴史はその仮定を重視し、ウクライナ危機や尖閣危機のような紛争の具体的発端が、地政学的に不可避な対立によって引き起こされたと分析します。

一方、陰謀論で重要なのは「目的」ですから、興味の対象は、地政学的に中ロを大陸に封じ込める事で、世界にどんなメリットがあるのかという事になります。

目的があるからこそ、コツコツと既成事実を踏み挙げて「戦争」という事態を正当化しているのだろうと考えるのが陰謀論的思考です。

ですから、「地政学」がクローズアップされるのならば、今、何故、「地政学」が必要とされるのか裏を色々想像してしまいます。


・・・戦争になるとは思いたくはありませんが、経済的な不都合が誤魔化しきれなくなった時、いつでも戦争という選択が為されて来たのは歴史の事実です。


「地政学」という「戦争の道具」が注目されればされる程、暗い未来の到来を妄想してしまいます・・・。

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18 コメント

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Unknown (muff)
2014-04-24 16:18:30
あらら、人力 様ともあろうお方が、随分と古めかしい
テーゼを掲げましたものですね。

...いささか、驚いております。

特に、国際社会での陰謀論者 or 陰謀大好き人間の人力
様が、カラー革命の陰謀論に触れないのには、首を傾げ
てしまいました。

...オレンジ革命の陰謀論、御存じですよね。

さて、国際政治における戦略を扱う「古典地政学」から
、戦争の正当化に利用されたカール・ハウスホーファー
の「ドイツ地政学」を切り出して、地政学の全ての様に
紹介するのは如何なものでしょうか?

マッキンダーやスパイクマンの流れを組む英米系の地政
学では、地理がベースになっている国際関係というもの
を固定化せず、ダイナミックなものとしているそうです
し。

また、奥山真司氏が提起する「未来の地政学」なんかも
ございますし、氏の「アメリカ通信」などを読まれれば
、色々とご参考になるかと思います。

→ http://www.realist.jp/geopolitics10.html (講
座の案内です)

また、地政学の上位?にある国際関係論として、田中宇
氏の「米英の単独覇権構造の解体から多極型の世界体制
へ移行」との論、それに付随する 「隠れ多極主義の暗
躍」 とかなんかは参考になると思います。

...戦争は、そのなかの手段の一つであって、戦争を
する為の理論というものは無く、戦争という手段も含め
た戦略の妥当性を論ずるものとの受け止めるが宜しいか
と思われます。

古くはポール・ケネディ氏の「大国の興亡」から、ジョ
ン・ミアシャイマーの「大国政治の悲劇」まで、その中
に書かれている 『衝突』 が全て戦争となる様に考え
るのは行き過ぎでしょう。
返信する
Unknown (東澤雅晴)
2014-04-24 23:21:36
国会議員の靖国神社参拝は中国・韓国のニュースが取り
上げるほど、重要なことなのか?

普通の日本人の感覚からすると、特に関西に住んでいる
となかなかピンときません。信心深く無いからなのでし
ょうか。七五三や厄払いなどでもよく神社やお寺に行く
ことがあります。歴史も人並みに理解しているつもりで
が。靖国神社もその中の一つですが、どうも中国や韓国
では他のお寺や神社の事はほとんど解説しません。キリ
スト教の人は何かあったとき、オーマイ・ゴット!なん
て言うらいしいのですが、他の宗教の人がけしからん!
なんていいません。イスラムの人がある種の肉を食べな
い!といっても、差別だと言って批判したりもしません
。好きにすれば!と、何もいいません。批判しても天に
向かってつばを吐くようで空しいだけです。

関西人にとって靖国神社も護国神社も同じです。コンコ
ンさんもお地蔵さんもエベッサンも庶民にとっては身近
な施設です。ランクが違う、一緒にしてはいけない。な
どとたまにいう人もたまにいますが、本音ではどちらで
もよく、他人の信仰にはいちいちクレームはつけないも
のです。みんなそれぞれの過去があり、故郷があり、親
がいて親戚もあります。
返信する
Unknown (人力)
2014-04-25 01:47:04
muff さん

田中宇氏は以前は購読していまいたが、「米英覇権主義
者と隠れ多極主義者」という対立構図は魅力的なのです
が、むしろ二重に捻じれていて本質を分かり難くしてい
る気もして最近購読を止めてしまいました。

その時代、時代において最適なシステムが選択されてい
るだけなのかなと・・・。

米ソ冷戦も、当時既にダボスやビルダーバーグで東西の
首脳が顔を突き合わせていた事などから、ある意味「作
られた対立構造」では無いかと。

要は、現在の世界において戦争は既に一つのファンタジ
ーであり、同時にビジネスであるというのが、陰謀丼者
としての私の認識です。

その上で「地政学」を眺めると、「戦争の理由」を一所
懸命に作っている、或いは「戦争の意義」を定義してい
る学問に見えて来ます。

私は現代の戦争は一種のショックドクトリンの機能を果
たしており、世界の変革の道具なのではないかと考えて
います。

以前はロックフェラーVSロスチャイルドなどという対立
軸を信じていましたが、現在はもっと大きな枠組みで世
界は運営されていると信じています。
返信する
Unknown (人力)
2014-04-25 02:00:26
東澤雅晴 さん

靖国神社は明治に作られた人工的な「天皇教=国家神道
」の象徴の一つとして、既存の宗教とは異質である事は
、日本人よりも中韓の人の方が良く知っているのかも知
れません。

日本人的には「兵隊さんが死んで日本を守る神様になっ
た」という感覚で、先祖を祀るのと同じ感覚で靖国に手
を合わせる事に違和感を感じません。

日本は古来、平将門の様な国賊も、菅原道真の様に政争
の敗者も神様として祭り、その怨念を鎮めるという風習
があります。これは、狭い国土の中で争いを永続化しな
い為の一つの知恵なのでしょう。

一方、中国や韓国の様な大陸国家は、戦いに負けた者に
連なる一族は皆殺しですし、儒教思想では敗者は永遠に
恨みの対象で、決して神様になどなる事はありません。

ですから、彼らが非常にファジーな日本人の靖国観を理
解する事は不可能ですし、同時に日本人が中国人や韓国
人の対日感情を本当に理解する事もありません。

その上で、その対立を日中韓それぞれが政治利用してい
るだけなので、この問題はお互い様なのでは無いでしょ
うか。

騒げば騒ぐだけ、この問題を政治的支持率のUPに利用す
る者や、或いは東アジアの軍事バランスを悪化させて一
儲けしようとする者達の思い通りの状況に陥るだけでは
返信する
Unknown (東澤雅晴)
2014-04-25 09:40:23
本当に韓国ドラマでも
政治的に失脚すれば家族もろとも島流し、死刑、リンチ
というのは馴染みませんね。北朝鮮のやっていることも
ツイテいけません。日本の統治時代にだいぶ直っていた
ということですが、あいかわらず根深く残っていて、ま
た李朝時代に先祖帰りしはじめているのかもしれません
ね。中国も清朝の政治体制と同じじゃないですか。観光
船の沈没でそのへんの本質的な問題を国のなかであぶり
だしていってもらいたいものです。
返信する
Unknown (人力)
2014-04-27 23:10:55
東澤雅晴 さん

日本人に日本人らしさを捨てろと言うのと同等に、韓国
人や中国人に変化を求めるのは難しいですし、彼ら自身
が本音と建て前を上手く使い分けています。

日本を非難するのは現状彼らにとってメリットがあるか
らで、特に政治基盤の安定の為には、日本攻撃は止めら
れないのでしょう。
返信する
Unknown (東澤雅晴)
2014-04-28 00:02:40
この一年で世界の流れがどう変わったのか

すでにその前からおかしかったのですが、ここに来ては
っきりその流れが変わりだしました。それまでは、中国
の経済成長が著しくやがてアメリカを抜き、世界を席捲
、日本、アメリカ、EUはさらに衰退していく!韓国はこ
の調子でいずれ日本を追い抜くのでは?と、いう情報が
一部から流れていました。全ては経済の成長力のみを見
ていての話です。ロシアも天然ガスと石油で経済が活性
化、アメリカのシェールガスはどこまで有効か判らない
?という認識でした。そこで韓国はさらに強気で日本に
対し揺さぶりをかけていました。アメリカやEU内での韓
国の立場が際立ち始めたからです。ところが中国の建築
バブルが崩壊、景気が低迷、ウオン高・円安が固定化、
生産技術の中国の追い上げ、さらに決定的だったのは中
国、韓国の人件費の高騰、労働条件の改定などで従来の
高度成長が行き詰まりました。

ロシア経済も停滞、反対にEUは経済危機から抜け出し、
日本経済もデフレから脱却、もう中国経済の躍進を信じ
る人はいません。インドも、ブラジルもこのままの高度
成長は考えられません。それぞれの国には複雑な固有の
問題を抱えているのです。アメリカもEUも日本も高度成
長ではなく“安定”成長に軸足を置き始めました。韓国
国民は自国の政治体制に自信をなくしています。観光船
の沈没で先進国ではないことが、いやというほど知らさ
れました。中国と韓国の政府はいまだ日本を批判はしま
すが自国の政治体制に批判の矛先が向き始めています。
返信する
Unknown (のり)
2014-04-28 07:23:15
オバマ大統領の訪日 訪韓はどうだったんでしょうか?
寿司屋ではオバマはあまり食べなかったとか、流鏑馬は、安倍首相の同行を断ったとか。オバマは国賓としてでなく政策協議をしに来たのに、安倍首相はもてなしばかり。TPPは難航し、共同声明は日本を去る前に出された。韓国では従軍慰安婦問題は人権侵害だとコメントした。安倍首相は従軍慰安婦に迷惑かけたと言ったので、認めてしまいました。民間がそういう施設を作ったかもしれないが、軍は関与しなかったと言う見解は、もう否定された訳ですね。こんなにこじれて、こういう結果になるのなら、靖国に戦犯を合祀しないというをすればいいと思うのですが。
返信する
Unknown (のり)
2014-04-28 07:28:15
戦犯になったのは敗戦国になったからではありますし、国のために彼らも行動したのかもしれません。しかし、一般の国民兵士は、少なからず日本軍自体のやり方に憤りをもっていた物もいたはず、特攻隊や玉砕など。国を動かす力を持っていたのだから、やめる力もあったはず。それをしなくて、無駄に多くの人を犠牲にしたことは責められても仕方ないことで、私は分祀すべきと感じています。
返信する
Unknown (東澤雅晴)
2014-04-28 08:36:16
日本は技術が遅れていたのではなくリスクを抱えた新製
品の投入の決断が出来なかったのです。

日本の家電メーカー・半導体メーカーが大胆なリストラ
を続けています。退社した人は当然韓国、中国などから
オファーがあれば短期間のヘッドハンティングに答えま
す。部品の注文のノウハウがあれば容易に購入すること
ができます。ここで問題などはやや時代遅れの商品が組
み立てられるのではなく、資金があれば出来るのに!い
いアイデアがあったのに、ここまで企画が出来上がって
いたのに!という商品が資金が投入され試作品として実
現することです。日本は技術が遅れていたのではなくリ
スクを抱えた新製品の投入の決断が出来なかったのです


海外の企業は日本を追い抜くためには大胆な決断を恐れ
ません。過去がないので抵抗する役員や同僚がいないの
です。しかし無理をして作りあげた新商品はサポートす
る人材まで育成出来ていず、商品にたいする愛情が決定
的に欠けています。日本企業に比べかなり殺伐としてい
ます。
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