兵庫県立美術館、「小倉遊亀回顧展」を見てから常設展を廻った。
鑑賞者の姿が殆どなく、展示室ごとに交代制でいる係員の方がはるかに多い。
その閑散ぶり?に、こんな有様でまともに運営できていると言えるのだろうかと、要らざる心配をする。
コンクリート打ち放しの階段室を二階へ上ると展示室が二分され、右が小磯良平、左が金山平三の記念室。
ふたりとも、神戸生まれの洋画家で、金山さんが20歳年長だそうだ。
この美術館は県立で、近くに市立小磯記念美術館がある。
作品を寄贈された遺族の意思もあったのだろうか、公立の美術館と記念室、近くに同じようなもんを作ってしもうてと、税金で飯を食ってる人の考えることに首を傾げてしまう。
話が逸れてしまった。
小磯良平さん、今更書くまでもないが、人物、なかんずく女性を描かせると実に巧みで、踊り子や婦人などを多才に描いている。
ここでは、「T嬢の絵」が架かっていたが、和服の女性が椅子に深く腰掛け、前に組んだ手の瑞々しさに印象が残った。
「斉唱」(写真上)は、構成の巧みさと臨場性に富んでいて、日本の洋画家には数少ない集団肖像画として、その力量をいかんなく覗かせている。
金山平三さんの作品では、雨降る町の雰囲気を描いた「雨のプラス・ピガール」が佳品。
「秋たけなわ」は小品だが、少し霞んだような諧調に山の秋が表現されていて、絵の前で足が止まった。
彼の傑作とされる「大石田の最上川」(写真下)は、キャンバスの真ん中に雪の最上川がゆったりと流れる静かな絵だ。
この記念室、今回の展示でふたりとも、国威発揚画、そんなジャンルがあるのかどうか知らないが、戦争をテーマに描いた素描や未完の作品、数点ずつを展示。
不承ながらも時代に沿わざるを得なかったのか、己の信念に依るものなのか分りたくもないが、名の知れた画家の国策に迎合した作品に心が痛む。
一番苦しんだのは当の本人なのかも知れないが・・・。
常設展示室に、象徴主義の画家オディオン・ルドンのリトグラフが10点ほどあったが、そのなかに、あの「アポロンの二輪馬車」を連想させる作品があって驚いた。
ところで、フェルメールに無沙汰をしてしまったようだ。
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