※ 続・ローマとナポリにバロックの奇才を訪ねる旅 (16)
バルベニーニ宮・国立古典絵画館に架るカラヴァッジョ(1573-1610)の 「<ホロフェルネスの首を切るユディト>」、彼自身が持つ暴力性と残虐性に聊かたじろがされた。
今回は、それと並んで架る彼の初期の作品 「<ナルキッソス>」(1597年)、小編、再登場である。
主題は、ギリシャ神話に登場する美少年ナルキッソスが、ある日、水面を見ると、中に美しい美少年がいてひと目で恋に落ちる場面。
ナルシシズムと言うらしいが、程度の差はあれ人間誰しも自己愛というか自惚れを持っている。
本作、古代ローマ時代の詩人オウィディウス(BC43-AD17)の 「<変身物語>」を典拠としていることは知られている。
少し長くなるがそのあらましを追うと、ギリシャ神話に登場する男神は総じて女性にだらしなく、その代表格とされるのが主神ゼウス。
その妻であり結婚の守護神の女神ヘラは嫉妬深く、ヘラの監視からゼウスが逃れるのを森の妖精エコーが歌とおしゃべりで助けた。
ためにエコーはヘラの怒りを買い、自分では口が利けず他人の言葉を繰り返すことのみを許されてしまう。
そのエコー、美少年ナルキッソスに恋をしたが、彼の言葉を繰り返す以外に何もできなかったので、退屈になりエコーを見捨ててしまった。
エコーは悲しみのあまり姿を失い、ただ、声だけが残った。
これを見た復讐の神ネメシスは、ナルキッソスをただ自分だけを愛するようにしてしまうのである。
水中の美少年から離れることができなくなり、やがてやせ細って死んでしまったナルキッソス、そのあとには水仙の花が咲いていた。
その花のことを欧米では 「narcissus・ナルシス」と呼ぶらしいが、今、盛りに甘い香りを振りまいている。
Peter & Catherine’s Travel. Tour No.1265
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