ペトロとカタリナの旅を重ねて

あの日、あの時、あの場所で
カタリナと歩いた街、優しい人たちとの折々の出会い・・・
それは、想い出という名の心の糧 

ルドン(1) ‐ オルセー美術館(13)

2012年07月22日 |  ∟フランスの美術館

 待望の第40室、この部屋には、カタリナ が推す<オディロン・ルドン>(1840-1916 / フランス・象徴主義)、これまで何度か小ブログにも登場した。の、油彩が架かっている。

 まずは、ルドンの最も重要な作品のひとつ「目を閉じて‐ 瞑目」から。
 それまでの作品は、木炭画「笑う蜘蛛」 (左/オルセー美術館蔵)の様に一見不気味で奇怪な世界を木炭やリトグラフを用い、黒という単色のみで構成される色彩で描いたものが大半である。

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 水面らしき地平の彼方で眼を閉じた巨大な女性が描かれている「目を閉じて」(右)
 
それまでの作品と異なり、心に染み入るような温もりを感じさせる豊潤で幻想的な色彩が溢れる

 長男が生後6カ月で死去し大きな失望を味わったルドンが、その3年後に次男を授かったことで、画家自身が里子に出され孤独な幼少期を過ごしたことも含めて、これまでに得ることができなかった幸福感に満たされたことが、画家の作風に決定的な影響を与えたとされている。

 ところで、前回、ゴーギャンのことを書いた。
 ルドンとゴーギャン、表現スタイルの違いから交遊はないと勝手に考えていたが、同時代にパリで活躍したふたりが出会わない筈がなく、最後となった印象派展にルドンが参加した時に出会ったとされている。

 ゴーギャンが亡くなった年、ルドンは美術誌上で、“ ゴーギャンは自由な洗練された野人、超然として汚れなき彼の美しき作品たちを目にしようではないか ” と述べたとされているが、その「ポール・ゴーギャンの肖像」が架かっていた。

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  訃報を受けて描いたとされる「ポール・ゴーギャンの肖像」(左/右)、
 いかにもルドンらしい佇まいのなかにゴーギャンがいる

 ところで、彼はパステル「アポロンの二輪馬車」(オルセー美術館蔵)など神話を主題にした作品の他に、「エヴァ」や「エジプトへの逃避」など宗教を主題にした油彩も描いている。

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 創世記に登場、禁断の実を食べた「エヴァ」、
 彼の抱く永遠の女性像とそこに生まれる崇高な美を体現(左)
 
ユダヤの王ヘロデからの迫害を前にエジプトへ逃避する聖家族を描いた「エジプトへの逃避」、
 神秘的で不安定な闇に包まれながら放つ光で表現
している(中)
  そして、少し珍しい題材の「蕪」(右)

 美術誌によれば、“ 無意識下の世界を描写したかのような幻想性と夢想性に溢れた独自の世界観 ” を表現したフランス象徴主義の巨匠オディロン・ルドンの油彩。観る者を神秘の世界に引きずり込んでやまない。

 注)絵はオルセー美術館の公式HP、解説はロズリーヌ・バクー著「オディロン・ルドン」(美術出版社刊・本江邦夫訳)などを参考にしました
 Peter & Catherine’s Travel Tour No.491

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1 コメント

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オルセー美術館で初めて「目を閉じて」を見たとき... (旅人)
2012-07-22 09:00:39
オルセー美術館で初めて「目を閉じて」を見たとき、静かな中になんとも言えない温かさを覚えたことを、懐かしく思い出しています。[E:foot]
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