※ 続・ローマとナポリにバロックの奇才を訪ねる旅 (7)
サン・ルイージ・デイ・フランチェージ教会、ローマに在り乍らフランスの守護聖人サン・ルイを祭祀する。
そのコンタレッリ礼拝堂に架るカラヴァッジョ(1573-1610)の 「聖マタイの召命」(1599-00年)。
本作、この時期とこの場所に相応しいものだったらしく、“ 使徒の改宗にまつわる聖書の物語を忠実に再現した ” (「カラヴァッジョ」西村書房刊)とされている。
それは、聖王ルイ・<ルイ9世>の後継者アンリ4世がカトリックに改宗、“ ローマのフランス社会はこれを祝福していた ” という時代背景があったからとされている。
主題は、“ 私に従ってきなさいと言われ、彼は立ちあがってイエスに従った ” と、マタイ自身が福音書に記している場面。
画面では、礼拝堂の中央から差し込む光が、出現したイエスの光輪や差し出す手をかすめ、反応する右端の二人の若者の目に当たっている。
ものの、それを無視する左端の若者の目には届いていない。
イエスの眼差しに捕らえられたレビ、後のマタイが 「呼んだのは俺か?」と、自身を指差している。
裕福な徴税人であったレビ、イエスによって暗闇から神の光のうちに召される劇的な啓示の瞬間を、静かな雰囲気のなかに見事なまでに切り取っている。
が、近年レビは、その場のことなど素知らぬ風に一心に銭を数える “ 左端の若者 ” という説が有力らしく、なるほど、如何にも臍曲がりカラヴァッジョらしい、と思うのだが、はて?
指し示すイエスの右手、自身を指差すレビの左手、俯いて銭を数える若者の両手の表情が面白い。
そのイエスの右手は、ミケランジェロ(1475-1564)のシスティーナ礼拝堂の天井画 「<アダムの創造>」のアダムの左手を反転させてい、その遊び心もまた面白い。
Peter & Catherine’s Travel. Tour No.1242
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