ペトロとカタリナの旅を重ねて

あの日、あの時、あの場所で
カタリナと歩いた街、優しい人たちとの折々の出会い・・・
それは、想い出という名の心の糧 

ヴィンタートゥール展(後)

2010年11月15日 | 美術館 (国内)

 前回、印象に残った作品をそれぞれ何点かあげた。

 ペトロ とカタリナ、ともにあげた作品が、フランス象徴主義のオディロン・ルドン。小ブログでも、<こんなに日は>など、これまで何回か取り上げてきた画家である。

 Photo_5この美術展では、彼にしては珍しい風景を描いた小品「ブルターニュの港」、カタリナが絵葉書を買った彼定番のモチーフの「野の花」、そして「アルザスまたは読書する修道僧」の三点が架かっていた。

 「アルザスまたは――」に添えられた解説に、“ 修道僧が手にする本の表紙には、第一次世界大戦の勃発に対する不安を匂わせるアルザスという言葉が書き込まれている ” とあった。

 乏しい知識で少し補強すると、アルザスとは、フランス北東部のアルザス地方のこと。
 当時、重要な交通の要衝であったストラスブールを中心に、フランスとドイツが常にその領有を争った地で、そのことは以前、<11月がゆく>でも少し触れたことがある。

 1870年に始まった普仏戦争のため徴兵され従軍したものの、病気のために戦線離脱をした過去を持つルドン。
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1914年に勃発した一次大戦に、その当時の生々しい記憶が蘇ったのだろうか。

 眼球、首、怪物など奇怪な作品を手がけた「黒の世界」と呼ばれた時代を完全に放棄、柔らかな色彩による絵画を制作し始めた最晩年の作品にも拘らず、「アルザスまたは――」(1914年頃制作)には、戦争に対する不安感が、アルザスという言葉によって表現されている、ということのようだ。

 彫刻も含めて90点ほどが並ぶ 《ヴィンタートゥール展》、1時間ほどもあれば粗方の作品を見終われる規模の企画展だった。

 館外に出ると、路面がかなり濡れ小粒の雨も降っていた。

 蕎麦を食べた後、帰り道の途中にある<BBプラザ美術館>に寄ってみたが、次回の企画展の準備のため閉館中とあった。
 パーマネント・コレクションと併催するスペースがないのだろうと、勝手に思っている。

コメント
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