20日の朝日新聞、“ 平成の大名人へ ” とあった。
68期将棋名人戦、羽生善治名人が4連勝で通算7期目となる名人位を守った。
一方で、つい先日、名人戦の立会人を務めた元名人に “ 慰謝料を支払え ” と東京地裁が命令した。
ことの次第は、元名人が、自宅の集合住宅で野良猫に餌をやり続けたため、悪臭などの苦痛を受けたとして近隣住民らが、住宅敷地内での餌やりの中止や慰謝料などを東京地裁に求めた。
世間は様々、猫が好きな人が10人いれば、嫌いな人も10人いる。
双方とも頭では理解しているのだろうが、気持ちが譲るに譲れないところまで煮詰まってしまったのだろう。
それで、裁判沙汰となったようう。
裁判長は、猫は、被告の元名人が飼育していると認め、《 迷惑を及ぼす恐れのある動物を飼育しないこと 》と定めた管理組合の条項に違反、原告らの人格権の侵害を認め、飼育するならまず、規約を改正しなさいとの判断を示したうえで、元名人に、“ 集合住宅敷地内での餌やりの中止と慰謝料の支払い ” を命じた。
判決について、「命あるものを大切にする私の信念は変わらず、餌やりも住宅敷地外で今まで通り続けたい」と元名人。
まさか、公有地や他人様の敷地で? その指し手、些か筋が悪いんじゃないと、わが耳を疑った。
私権は当然にして万人に認められるものだが、公共の福祉がそれに優先することを受忍しなければ社会は成り立たない。
聖書は、“ 人にして貰いたいと思うことを、人にもしなさい ”(ルカ6‐31)と教える。
これは、“ 黄金律と呼ばれ、『法いを求めない他者への愛の行為』で、古今東西(他の宗教の意)を問わずみられるもの ” と 「新約聖書(新共同訳)略解」は説く。
元名人、盤に向う姿勢が真面目に見えるがゆえに、また、敬虔なクリスチャンであると聞くがゆえに、その見えざるものに驚かされる。
今週の朝日俳壇 風光る猫を探すといふ遊び (入間市・峠谷清弘氏・金子兜太選)。
選者は、“『といふ』にこもる皮肉な含蓄、世相への風刺 ” と、評す、まさに様々。