「誇」-URAWA REDS-
共に…
 



リーグ戦再開。
14時、浦和発。
峠を抜けると次第に太陽が光を降り注いでくる。
水曜日、アウェイ。
気合を入れるには絶好の舞台。

GK山岸
DF堀之内・闘莉王・坪井
MF平川・啓太・伸二・アレックス・暢久
FW永井・達也
SUB都築・細貝・内舘・酒井・相馬・黒部・岡野
ロビー、ワシがドイツ合宿で負傷離脱。
代表組の復帰、そして達也。
ウォームアップとともに始まる「Super TATSUYA」。
福田正博を迎えた平塚競技場のようだ。
席詰めとともに通路に「移動」。
いつもの空間が還って来る。

“? どうした?”
始めの一歩で負ける、サイドが使えない。
ボールが落ち着かない。いや、落ち着きすぎて回らない。
新潟が速いのか、ウチが遅いのか。
やや不安定なレフェリングの中、新潟の勢いが増していく。
“アレ、消えてるよ”
“暢久、啓太もイマイチかな”
埼スタとは歩幅の違う通路。跳ねるリズムも掴めない。
12分、ゴール前に弱々しく転がるボール。
“クリア、クリアしろ!”
“入るな、外れろ!外れろ!!”
痛すぎる失点、取られるべきして取られた1点。
“しっかり!立て直そう”

何かがおかしい。
走らないのか、走れないのか。
仕掛ける平川が潰される、達也にキレが戻らない。
“試合勘、まだなのかな、達也”
伸二が中央に君臨する。
素晴らしいキープ力、パスは繋がらず。
受け手が感じないのか、伸二のミスなのか。
フラストレーションが溜まって行く。
30分経過。
伸二、闘莉王のシュートは決まらず。
“まずいな、GK乗ってくかも知れない・・・”
個人技、セットプレー。
得点の匂いはそこだけにしか感じない。
“どうしたんだよ・・・、一体”

“後半アタマが勝負かな”
“ギド、怒ってるだろうな”
11人で守る新潟、攻めあぐねる浦和。
“起きろよ!”
滴る汗、握り締めた拳。
休養十分の僕の体は思いのほか、軽い。
ヒラが貰ったファール、アレックスのFKはクロスバー。
“さぁ、ここからだ!”
達也が切り裂く。坪井、ホリが上がる。
“達也、戻ってきたかも”
相手GKに警告。
“遅延? もう守りかよ”
78分平川out黒部in。
永井が右に開き、黒部が前に入る。
“ヒラ、痛んでたからなぁ”

引いて守ってカウンター、新潟の策に嵌る。
70分、再び失点。2-0。
“諦めない、このままじゃ終われねーだろ”
右に開いた伸二が呼ぶ、オフサイドラインギリギリに出るボール。
追わない伸二。
“伸二っ!!”
好きで好きで堪らない選手の「背信」。
僕にはそう見えた。
76分伸二out相馬in。
“どこに入るんだ?相馬”
“ボランチだ・・・”

ギシが、ホリが懸命に防ぐ。
次々にピッチに倒れる新潟イレブン。
“出せよ!!”
ピッチ内で「治療」。
“仕切ってくれよ、主審”
今日の主審は家本氏。
80分永井out岡野in。
右サイドに岡野、闘莉王も前線へ。
“1点、1点返そう”
FKのこぼれ球が暢久の足元へ転がる。
“打つな、遠いよ”
美しい軌道を描いたゴール。
85分、2-1。
「浦和」が「浦和」らしくなって来た。
“諦めない、まだ行けるんだ”
新潟の露骨な時間稼ぎ。
主審の心証が明らかにウチに傾いている。
ロスタイム5分。
“終わらせない、絶対に”
掠れる声、ギラつく瞳。
“このままじゃ、終われない”
達也が、岡野が走る。
黒部が迫る、放つ。
決まらない。

試合終了、敗戦。
空っぽのココロに、スタジアムの歓声が通り抜けていった。


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唯々、そこから立ち去りたかった。
仲間を気にする余裕なんてなかった。
坪井、闘莉王、啓太・・・。
戦いを終えた選手が近づいてくる。
拍手?ブーイング?
どちらでもない。
いや、それをする余力はなかった。
「追い付ける」「追い越せる」
信じていたから。

力なく頭を垂れる選手たち。
“帰ろう・・・”
気付くと相方が僕の荷物を持って階段を登り始めていた。
足早に駐車場に向かう。
仲間も無言のまま歩いていた。

悔しくて、情けなくて。
どうしてそうなったのか、理解できなかった。

“ねぇ、赤城高原SAまでノンストップでいい?”
“いいよ”
新潟にはこれ以上、何も落としたくなかった。
長いトンネルを抜ける。
深々と降る雨。
“上里SAまで行こうか”
“そうだね”
“埼玉県だよ、ほっとするね”
“ここまで来たら一気に走れるけど”
所沢IC、ウラトコ、下大久保交差点、六間通り、ロイヤルパインズ。
次第に安息を取り戻す。
大きく空いた穴を、少しずつ埋めるように。

一夜明け。
まだ試合を振り返るほど、余裕はない。
「どうして? 何で?」
新聞も読む気がしない。
何もする気がしない。

立て直さなきゃ。




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