誰よりも君の名を叫んでいたよ。
「しっかりしろ!」
「ちゃんとやれ!」
「ぼーっとすんな!」
「何やってんだよ!」
ウチに初めて入った「超高校級」。
青いユニの10番、FW。
どん底で喘いでいたウチの希望の光だった。
「暢久最高!」
懐かしいね。
チリチリ頭の若者は、ムラっ気が酷くてね。
「どうしてお前はそうなんだ」
やればできるのに。
清水のアレックスが中に逃げるんだぜ。
アイツは代表に選ばれるべきだ。
柳本?名良橋?
違うだろ!?
強い相手に滅法強く、格下相手にチョンボする。
「またギドに怒られてるよ…」
初めて首位に立った時はストッパーだったね。
進化の途中、迷い道の中に君はいなかった。
あの時だけだよな、試合に出られなかったの。
2000年も、君はそこにいた。
本当は下のカテゴリーなんて嫌だったんじゃない?
案の定、格下相手にそれなりで。
らしいと言えばらしいんだけどさ、
結構ムカついたんだぜ。
やっと選ばれた代表は、カシマでおしまい。
もう1回呼ばないのかな。
それは、叶わなかった。
まさかね、キャプテンだなんて。
「ギド、分かってんのかなぁ」
「スゲーな、やっぱり」
「やりたいってずっと言ってたからなぁ」
トップ下、鮮やかなパフォーマンスで僕を魅了してくれた。
「それ、決めちゃうんだ」
「ギド、さすが分かってるよなぁ」
君がチームメイトに囲まれてシャーレを掲げる日が来るなんて、夢のようだった。
いや、なんだか笑っちゃったよ。
2番はディフェンダーみたいだからイヤ、
暑いのは嫌い、
サイドじゃなくて真ん中やりたい。
ご飯おいしくないから帰る。
子供かよ。
「右で使えないのかな」
「そろそろ出してもいいんじゃ」
「やっぱりやる時はやるよな」
「メンバーに入ってたらな…」
いい選手だよね、巧いし強いし。
出場機会が減り、ベンチから外れることもあった。
それでもね、
いつの間にかレギュラーに戻ってるんじゃないかって思ってた。
競り負けるなんて、
また気が抜けてるんだろうって思うことにしてた。
いないと存在の重さが分かる選手じゃなかった。
いて当たり前の選手。
ピッチにいるだけでわくわく、そわそわした。
決してレジェンドなんかじゃない、
ヒーローでもなかった。
アイドルだったのかな。
山田選手、ヤマ、山さん。
違うな。
タリーさん?
誰だよそれ。
ありがとね、暢久。
もう一度、シャーレを掲げる姿を見たい。
僕らはゴールを決めることは出来ないけれど、
出来ることを精一杯やろう。
魂込めて闘うから。
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