「誇」-URAWA REDS-
共に…
 



事件が起こった。
平常心ではいられなかった。
内包する問題を、制止することが出来なかった。
「どうして?」
色々な思いが交差した。
消化し切れぬまま迎えた一戦。
一部のサポーターという言葉で処理してはいけない。
スタジアムに集う皆で考え、行動し、守らなければならない。
その一歩が、始まる。

GK西川
DF森脇・那須・槙野
MF阿部・啓太・平川・宇賀神・柏木・原口
FW興梠
リザーブ加藤・坪井・濱田・梅崎・矢島・関口・李
那須が復帰、ベンチを外れたのは水輝ではなく永田。
平川がスタメン、森脇が1枚下がり柏木は1枚上がる。
梅崎がベンチに下がり啓太がボランチ、
昨シーズンを踏襲したメンバーで挑む。
特定の選手へのブーイング、異様な数の記者。
何が良くて何が悪いのか、置かれた状況に戸惑う。

「気にしないこと、いつも通りでいい」
僕自身が汚い野次を飛ばしたことはない。
旗を掲げたこともない。
過剰な意識は選手に悪影響を齎すに違いない。

局面勝負で広島を上回る浦和。
「1対1なら負けてないな」
森脇の動きが鋭い、槙野が攻撃を自重している。
相手の両サイドを抑え込む。
「中央がね、パスが通らないな」
ボールを失うと潮が引くように自陣に戻る広島。
「これじゃなかなか点取れないな」
互いに特長を消し合う、青山も啓太も縦に入れることが出来ない。
「抜かれた!」
DFの裏にボールが抜ける。
西川がエリア外に飛び出しクリア。
「流石だな」
安定感がチームに、僕らに安心を与えてくれる。

「上がった!」
槙野のドリブル、中央に切れ込む。
「持ち過ぎか!?」
ラストパスを送る。
「来たか!?」
シュートはGKに阻まれる。
「向こうもいいGKだな」
少ないチャンスを生かすことが出来ない。
柏木のCK、右に流れたボールに平川が追い付く。
ふわりと浮かぶ、ネットが揺れる。
「入った、でしょ!?」
副審が得点を認めている。
43分、浦和先制0-1。
「誰?興梠??」
誰でも良かった。
苦しい試合、厳しい精神状態。
選手たちが、僕らを救ってくれた。
「しっかり、しっかり守ろう!」
勝ちたい、どうしても勝ちたい。

前半終了、広島0-1浦和。

「こんなに晴れるって、珍しくない?」
市内は晴れてもここは雨。
晴れていたのに突然振り出す雨。
ビックアーチの天気はいつも悩ましかったのに、
顔が痛くなるほど、日差しが強い。

「仕掛けて来たな」
先制を許した広島が前に出る。
「いいぞ、森脇」
DFがそれを阻止する。
背走する原口、柏木が喰らい付く。
選手たちから気迫が伝わる。

突っ掛ける原口、右サイドを駆ける平川、槙野のミドル。
乗せる、僕らを乗せてくれる。
「いいぞ、そうだ!」
旗に遮られ集中を欠くこともない。
69分、広島が2枚入れ替える。
「そっか、上手く行ってないってことだな」
寿人がいなくなり、恐怖心が和らぐ。
「チュンソン、呼ばれてるね」
「誰と代えるんだろう?」
79分、興梠out李in。
「今日もシャツはinだな」
身体を張る、振り向きざまに狙う。
シュートは枠の外。
「まだ戻らないか、チュンソン」
もう3試合目、そろそろ結果が欲しい。

82分、柏木out梅崎in。
「違うね、ミシャの采配」
交代の為の交代ではなく、戦術的な意図を感じる。
「しっかり、集中しよう」
攻撃の度合いを増す広島、ボールが前に収まらない浦和。
声を張る、跳ねる。
1週間の苦しさや悔しさをピッチに、勝利のために転化する。
「勝ちたい、どうしても勝ちたい」
「ウメ!!」
右サイドを突破する。
「いるぞ、真ん中!」
チュンソンが詰める。
「流れたか!?」
体勢を崩したままシュートを放つ。
「惜しい、万全だったら決められたかも…」
追加点が奪えない、広島が攻める、必死で逃れる浦和。
「森脇!西川!」

「ヤジが出るのか…」
29番が呼ばれている。
「いや、違う」
90分、森脇out坪井in。
「堅いな、ミシャ」

アディショナルタイム4分。
「もう少しだ、このまま逃げよう」
勝利が、目の前に近づく。
原口がボールを受ける。
「行け、行け、グッチ、グッチ!」
右足を振り抜く、ボールがネットに突き刺さる。
91分、浦和追加点0-2。
原口が、原口が決めた。
エンブレムを叩き付け、看板を超え、原口が雄叫びを上げる。
「良くやった、ありがとう、原口」
僕らの思いに、9番が応えてくれた。
嬉しくて嬉しくて、堪らないゴール。

「あ、カードだ…」
91分、交代した森脇に2枚目の警告。
「ピッチ入ってただろ、アイツ」
緩くなった涙腺を、森脇が笑いに変える。
「しょうがないな、全く」
「集中しよう、ゼロで抑えよう」

笛が待ち遠しい。
残り時間はあとどれくらいだろう。
時計を見ない主審。
「まだか、まだかよ…」
攻め込まれる、ボールが切れる、主審の手が挙がる。
「勝った!」

選手たちが、希望を与えてくれた。
迎えよう、称えよう。
無遠慮なカメラマンを払い、選手が僕らの前に来る。
監督もスタッフも、僕らと対峙する。

やり直そう、もう一度。
みんなで、みんなで取り戻して行こう。
もう揺らぐことはない。
浦和を、僕たちの浦和を。
タオルマフラーを掲げる仲間たち。
「行こっか」
スタンドに待機するクラブスタッフに
「ありがとうございました」と声を掛ける。
「すみませんでしたって言えば良かったかな」
背後から凱歌が聞こえる。
「今日は歌っていい日だよね」

嬉しくて、嬉しくて。
浦和が、好きなんだ。







コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )



« 長い道のり 背中越しの想... »
 
コメント
 
 
 
サポーター (浦準)
2014-03-17 22:53:46
この試合、また現地の方の姿を見て自分が浦和レッズのサポーターで本当に良かったと感じました。色々な記事を見て泣きました。かなり遠回りをしているけど、真のビッククラブになるために頑張りましょう!
 
 
 
険しい道のり (otteru)
2014-03-17 23:30:55
浦準さん、こんばんは。
これからです。
今回は選手たちに助けてもらいました。
でも、全てうまく行った訳ではないんですよ。
2選手には全くコールをしませんでした。
途中出場のある選手には、
そうした場面がなかったということもありますが、
もうひとりの選手は、
無失点勝利の立役者のひとりだと思います。

まだまだ、内包する問題がすべて解決してはいないんですよ。
こちらは時が解決してくれればよいのですが…。

ひとりひとりが当事者として取り組んでいかなければ、
新たな道は切り開けないでしょう。
共に、頑張りましょう!
 
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。