「誇」-URAWA REDS-
共に…
 



クラブの決断、中心部の解散。
積み重ねて来たものが、音を立てて崩れていくような喪失感。
こんな足取りの重い遠征は、初めてだ。
劇的に変えてしまうことが、選手に影響を与えないはずはない。
声を出せばいい、
一所懸命であれば伝わるというものではないんだ。

GK西川
DF森脇・那須・槙野
MF阿部・啓太・平川・宇賀神・梅崎・原口
FW興梠
リザーブ加藤・坪井・濱田・永田・直輝・関口・李
無観客試合となった清水戦は出場停止だった森脇が復帰、
柏木が怪我のためベンチから外れ、阿部勇樹がボランチに戻る。

「速いって…」
加速するコール。
「落ち着いて!」
意図的に手拍子を遅らせる、声に飲み込まれる。
「マズいな、これは」
スタンドの歪みは選手に伝播する。
跳ねることで立て直そうとしても、周りはそれに呼応しない。
「場所を間違えたか…」
周囲を見渡す、いつもとは違い過ぎる雰囲気。
住み分けのないゴール裏に、唇を噛み締める。

相手の芽を摘むような浦和の守備。
「安定してるな、今日も」
ゴール前の混戦、西川が抑える。
自然発生的に西川を称えるコールが起きる。
「速いって…」
「もっとゆっくり、選手たちを乗せてやらなきゃ」
右から左、左から右へと波打つ声。
「続けて!」
ボールを失うと息を飲んでしまう。
「マズいって、これじゃ」
心臓を失ったゴール裏が、彷徨っている。

7番、18番、10番、13番、6番。
危険な選手を上手く抑え込んでいる。
「頼むぞ、集中してくれ」
峻希が右サイドを駆ける。
「気を付けろ!」
クロスボールは中央に合わない。
「峻希は峻希だね」
遠くから見ていても分かる、
それほど好きだった選手が、袂を分かち敵となっている。

「繋がれ!」
槙野から宇賀神にパスが通る。
「来た!!」
35分、浦和先制0-1。
「ウメでしょ、ウメだよね!」
選手たちが独力で切り開いた得点。
「さあ、集中しよう」
勢い付かない、喜んで終わってしまう。
跳ねる意欲を失くし、試合に集中出来なくなる。
「どうしたらいいんだ…」

前半終了、神戸0-1浦和。

「危ない!」
相馬のミドル、西川が弾く。
「あっ!」
弾いたボールを相手選手が拾う。
「凄いな、西川」
西川がピンチを救う。
「前半飛ばしてたからな…」
ウチは90分間、運動量を持続できるのか。
神戸がプレスを掛ける。
「落ち着け、しっかり!」
後方でパスを回す浦和、手詰まりになり汲々とする。
「危ないな、ちょっと…」
立ち尽くしたままの足が強張る。
選手たちの力になれないもどかしさ、声を失っていく。

「ファールじゃ…」
森脇がボールを奪われる、主審がプレー続行を指示する。
「何で??」
7番がゴールに直進する。
60分、神戸同点1-1。
「やるか…」
手を叩く、気合を入れ直す。
「あれ…」
沈んでいる。
ゴール裏が、静まり返っている。
「チクショウ…」
失ったものの大きさに、動揺を隠せない。

63分、平川out李in。
「チュンソン、頼むぞ」
雰囲気を一変させてくれるのは、ヤツしかいないのかも知れない。
「森脇のクロスを使って!」
「槙野、突っ込め!」
攻勢を強める神戸、劣勢を立て直そうと邁進する浦和。
76分、梅崎out関根in。
「2試合続けて上手く行くかな」
今までなら、もっと奮い立たせてやれたのに。
ルーキーに申し訳ない気持ちになる。

自陣内、ミスを突かれる。
「やっちったか…」
78分、神戸逆転2-1。
リズムを失ったスタンドに影響されたかのような、
つまらない失点。
80分、啓太out直輝in。
「流れを変えるには、これしかないよな」
直輝の負けん気と展開力。
1点差なら、何とかなるかも知れない。
「チュンソン!」
シュートは枠を捉えられない。

アディショナルタイム4分。
「…。」
カウンターを喰らう、マルキーニョスに独走を許す。
91分、神戸追加点3-1。
天を仰ぐ。
情けないのは選手じゃない、自分だ。
僕らのせいで選手たちを厳しい状況に追い込んでしまった。

試合終了、神戸3-1浦和。
逃げるようにスタジアムを後にする。
今の僕に、何も語る資格はない。
リズムを整えることも、慌てずにプレーさせてやることも。
何も出来なかった。

悔しいよ。






コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
なんだろう。 (通りすがり)
2014-03-30 23:49:34
このブログに出てくる選手のほとんどが紫の選手というイメージで
なにより悔しく思うのはその部分なのは自分だけなのでしょうか…
 
 
 
調整 (otteru)
2014-04-01 23:47:35
もし紫色に見えるのだとしたら、
お手持ちのPCやスマホの画質を調節した方が良いと思います。
仲間内であれこれ言うのは自由ですが、
選手獲得に関して文句を言うのはどうかな、と。
何度も方針転換を図り遠回りをしてきたクラブが、
漸く覚悟を決め、迎えた3シーズン目。
ここで外野が騒いで揺らいでしまうのはもう、勘弁なんですよね。
 
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