「誇」-URAWA REDS-
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勝てばいい、勝てば決まる。
優勝を逃した。
けれど、
ACLの権利なら自力で手繰り寄せることが出来る。
「勝ちたい」
「ACLに行きたい」
最終戦独特の雰囲気を醸し出すスタジアム。
「浮つかなければいいが」
浦和の敵は浦和。
そうならないことを願う。

GK山岸
DF森脇・那須・槙野
MF平川・阿部勇樹・啓太・原口・柏木・宇賀神
FW興梠
リザーブ加藤・坪井・永田充・暢久・直輝・梅崎・関口
平川がスタメン、梅崎がベンチスタート。
マルシオは復帰出来ないまま。
連勝しても連敗しても同じメンバー。
これがいいことなのか、そうではないのかは、
きっと誰にも分からないのだと思う。

「上手く守ってるぞ」
相手FWの侵入を許さない。
「今日は落ち着いてるかな」
気負い過ぎず、適度な緊張感が伝わる。
縦にパスが入る、柏木が飛び出す。
「いいね!」
興梠が裏を狙う。
「来たか!?」
シュートは枠の外。
勝てばACL。
どうしても掴みたいアジアへの挑戦権。
「1点でいいんだ、慎重に行こう」
C大阪との相性は悪くないはず。
先制すれば自分たちのサッカーが出来るはず。

右から崩す、柏木が繋ぐ。
「やった!!!」
24分、浦和先制1-0。
やっともぎ取った先制点、待ちに待った点が齎される。
「いいぞ、原口!」
これで行ける、アジアへの扉が開く。
「しっかり、集中しよう」
ここから10分我慢すれば勝利の可能性は高まるはず。
「落ち着いて、ゆっくりでいいんだ」
勝てばいい、内容なんてどうでもいいんだ。

「サイドの裏、なんだよな」
狙われている、森脇が、槙野が防ぐ。
「頼むぞ、やらせるなよ」
原口の突破、GKが零す、陽介が詰める。
「浮かせたか…」
追加点ならず。
「畳み掛けられればな…」
相手が息を吹き返す前に、もう1点取れたら。

「打たせるな!」
強いシュート、DFがブロック。
「ギシ!」
浮かぶボール、山岸の頭上を越える。
「マジか…」
40分、C大阪同点1-1。
「ツキもないのかな」
弾いたボールがネットに吸い込まれる。
ウチに勢いがあれば、外れたのかも知れない。
「落とすなよ、流れはウチだったんだから」
またやり直せばいい、前半はこのままでも仕方ないんだ。

「しっかり!」
「打たせるな!」
山岸が弾く、拾われる、山岸が弾く、奪われる。
「人数いたのに…」
混乱した守備の隙を突かれる。
45+1分、C大阪逆転1-2。
「またかよ…」
振りかざした拳から、力が抜けていく。

前半終了、浦和1-2C大阪。

「2点取るのか、厳しいな」
他会場の経過は関係ない。
勝てばいい、そのはずなのに。
爆発力のない攻撃、粘り強く戦うしかないのか。

「真ん中、しっかり!」
ミドルシュート、山岸が得点を許さない。
「落ち着け、大丈夫だから!」
これ以上離される訳にはいかない。
僕らに出来ることは、
得点を呼び込む雰囲気を作ってやることだけなんだ。

53分、C大阪追加点1-3。
「柿谷、か…」
「3点取らなきゃ、ってことか」
希望が薄れていく。
「どうして…」
54分、平川・宇賀神out関口・梅崎in。
「サイドが悪かった訳じゃないと思うけど…」
劣勢を一気に覆す劇薬が欲しい。
「危ないって、しっかり!」
前のめりになる浦和、
受け止めて仕掛けるC大阪。
「ギシくん!」
決壊しそうなDF、山岸が踏み留まる。

69分、那須out直輝in。
「9得点を代えるのか…」
貴重な得点源を下げる。
「どうする気なんだろう」
「ここでCKだもんな…」
「阿部勇樹、頼むぞ!」
シュート、GKが弾く。
「まだだ!」
72分、興梠が決める。
「あと2点、取るぞ!」
ACLが待っている。
もう一度アジアで戦いたい。

「良く防いだ!」
攻守の切り替えが早くなる。
「惜しい!」
興梠のシュートはDFがブロック。
「慌てるな、抑えろ!」
「しっかり、しっかり付いて!」
76分、C大阪追加点2-4。
ゴール前の混戦、防ぐことが出来ない。
「ダメなのか、もう…」
残り20分、今の浦和が3点奪うことなんて。
諦めない、諦めてはいけない。
分かってる、分かっているけど。
選手を奮い立たせる前に、自分が萎えてしまいそうになる。
「最後まで、最後まで戦おう」
関口が駆ける、直輝がボールを引き出す。
時間が流れていく。

「そうか、そうなのか…」
86分、C大阪追加点2-5。
「何で、どうして?」
声が出ない、身体が動かない。
1年間、必死に戦った。
それなのに…

原口のシュートがクロスバーを越えていく。

試合終了、浦和2-5C大阪。

何も残らなかった。
タイトルも、ACLも、捨てた天皇杯も。
虚しさだけが去来する。
社長挨拶に合わせ巻き起こるブーイング。
「たまに来てそれはないよな…」

広州で始まった2013シーズンが、終わった。

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君が浦和を去る時が来たら、
きっと泣いてしまうだろうって、
ずっとずっと思ってた。
「9番」のときだって泣いていないのにね。
それほど君は、僕の中で大きな存在だった。

あんな試合の後だからかも知れないけれど、
何だか実感が沸かなくてね。

名前をアナウンスされてもいないのに
マイクの前に立った時も、
「あれ、段取り間違ったんじゃないの?」
「人の話ちゃんと聞いてたのかな?」
なんてね、いつものように心配しちゃったよ。
「大丈夫かな、普通に話せるのかな」
永田拓也も野田くんも、
自分の言葉で自分らしく話せてたから、不安だったんだよ。

妙に甲高い声で、貫録なんて微塵も感じられなくて、
「そう言えばキャプテンだった頃もそうだったな」
「クネクネしなくなっただけ大人になったよね」
なんてね、感傷に浸る余裕なんてなかったな。

君が僕らの前で自分の思いを伝えることなんて、
初めてかな。
20年間ってさらりと言うけれど、
本当に共に歩んで来たんだよね。
幸せでしたなんて言わないでよ。
それは、僕らから君に伝えなきゃいけない言葉なんだから。
浦和が大好きだなんてらしくない言葉、照れるじゃないか。

弄られっぷりも相変わらずで、
ちょっとだけ涙を見せる姿も君らしくて。
これでお別れだなんて、全然思えなくて。

引退を決意するまで、浦和にいて欲しかった。
そんなクラブであって欲しかった。
まだやれる、君は凄い選手だよ。
隣町のクラブだっていい。
現役を続けて欲しい。

アレ山田が沸き起こるスタンド。
声を出すのが勿体ない気がして、
君の姿を追いながら、心の中で叫んでいたんだ。

「暢久最高!」
「ノブヒササイコー!」


君のいない浦和。
ぽっかり穴が空いたようだよ。


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「諦めない」
口に出すのは容易い。
1週間で立て直せるような守備なのか。
ずっと改善されずにここまで来たのに、
そのような芸当は出来るのだろうか。
首位との勝ち点差は4。
勝つことだけを目標に、
それまで積み重ねてきたやり方を変えることはあるのか。

GK山岸
DF森脇・那須・槙野
MF梅崎・阿部勇樹・啓太・原口・柏木・宇賀神
FW興梠
リザーブ加藤・坪井・永田充・暢久・直輝・平川・関口
梅崎が右、平川がベンチ。
「ここに来て代えるって、どういうことだろう」
監督はまた迷っているのか、
それとも確固たる信念があってのことだろうか。

「さあ、やるか!」
一気にボルテージを上げる。
勝つことでしか、挑戦権を得ることは出来ない試合。
「やっぱりそうなるのか…」
激しいプレスに後手を踏む浦和。
「負けんな!」
那須が豊田に喰らい付く、
森脇が10番をマークする。
「それでファールかよ…」
鳥栖のFK。
「危ないって…」
山岸がパンチングで逃れる。
「気を付けろ!」
14番のミドルが襲う、山岸が弾く。
「しっかり!」
動きが硬いのか、研究されて身動きが取れないのか。
「なんでそこなんだよ…」
15分、CKから鳥栖が先制1-0。
零れ球に付いて行けず、失点。
「ほら、負けねーぞ!」
何回も繰り返される過ち、それでも諦める訳にはいかない。

啓太が下がる、サイドに散らす、寄せられる。
効果的な攻撃を創れない浦和。
「よし、左足だ!」
「惜しい!」
柏木のシュートはバーに嫌われる。
「ツキがないのかな」
接触するたびに笛が鳴る、リズムが作れない。
主審は高山氏。
「厳しいな、ちょっと…」

31分、那須に警告。
「それでなの!?」
審判を味方に付けることも出来ない。
「行け、行けるぞ!」
原口がDFを交わす。
「GK、当たってるな」
追い付けない。
「やられたか?」
裏を抜かれる、槙野が追い縋る。
「入るな、ギシ!!」
転がるボール、ラインを越える、マウスに吸い込まれていく。
37分、鳥栖追加点2-0。
「どうして…」
キツい、辛い失点。
「まだまだ!」
萎えそうになる気持ちを奮い起こす。

前半終了、鳥栖2-0浦和。

「槙野かな」
左からのFK。
「阿部勇樹だ!」
直接狙ったシュートは壁に当たる。
「壁の距離、近いよ…」
審判のジャッジにも感情的になってしまう。
「立ち上がりで変わらないと、ヤバいかもな」
鳥栖の雰囲気に飲まれるスタジアム。
声を張ってもピッチに響かない。
「またか…」
カウンター、DFの裏を突かれる。
「ギシくん!」
「助かった…」
これ以上失点しては追い付けなくなる。

「興梠!!」
必死に足を延ばす、届かない。
柏木も、興梠も、原口も、戦っている。
何かが違う、何かが噛み合っていない。
「これが限界なのか…」
爆発力のない攻撃、跳ね返す力はあるのか。
63分、梅崎out関口in。
「左が先じゃないのかな…」

関口が右サイドを駆ける。
「クロスだ!」
1点返せば分からなくなる。
「早く、早く!」
原口のクロスに興梠、バーに嫌われる。
「まだある!」
「関口!!!」
GKに防がれる、得点を奪えない。
「PK!」
槙野が倒される、笛は鳴らない。
「そんな…」
鳴らす審判が笛を鳴らさない。
「ちくしょう…」
時間ばかり過ぎていく。

「もう1人代えた方が…」
ベンチが動く気配はない。
「何か変えないと、後がないんだよもう」
交代選手を注ぎ込む鳥栖、
相手DFを崩せない浦和。
「何で、どうして?」
攻め倦む、攻め急ぐ、カウンターを浴びる。
「フリー!!」
陽介のシュートはDFに当たる。
「何分なんだろう」
時計の見えないアウェイ側。
「あと10分ないのか…」
勝てなくてもいい、追い付こう、意地を見せよう。

槙野がPA内に進出、倒される。
「PKだろ!?」
流される。
「ジェスチャーが大き過ぎたのか?」
中央を突破される、啓太が背走する。
「あ…」
相手選手が倒れる、笛が鳴る。
「PKかよ…」
そうしなければやられていた。
退場じゃなくて良かった。
そう思うしかないのか。
89分、鳥栖追加点3-0。
「どうして…」
捲っていた袖を降ろす。

アディショナルタイム5分。
90+2分、那須が決める。
「興梠!!」
決められない。
「起きろ、興梠!」
陽介のミドルがバーを掠める。
握った拳に力が入る。
「マジか…」
ボールを奪われる、決められる。
90+6分、鳥栖4点目。
声を失う、全身から力が抜ける。
中心から鼓舞する声がする。
「やらなきゃいけないんだけど、分かってるんだけど…」
コートを羽織る、空を仰ぐ。
どうしても声を出せない。

試合終了、鳥栖4-1浦和。
崩壊する守備、
悪循環に陥ると立て直すことの出来ない脆さ。
辛く、悲しい敗戦。

無言のまま駅に向かう。
列車に乗る、誰とも話す気になれない。
「ACLだけは、ACLだけは何としても」
拠り所はもう、それしか残されていないのだから。






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