おじたん。的ぶろぐ生活。

おじたん。である。語るんである。

駅長になれなかった猫。

2009-05-12 10:32:27 | 我思う、故に書くなりよ。
岡山の「コトラ」と福島の「ばす」…猫駅長同士が対面(読売新聞) - goo ニュース

ほほえましいですな…。

昨今じゃ、猫が駅長になってもそれが当たり前な感じで、猫好きはもちろん、動物好きな人にはたまらないのでしょう。リアルゆるキャラとしての存在価値や、経済効果までもが語られていますからね。

おじたん。も、かつて、そんな猫がいると聞き付け、取材して記事にしようとした事があります。

ま、場所は書かない方が良いですね…。駅もまだあるし、猫だって、代を受け継いだヤツがいるかもしれません。首都圏の近郊って感じなところでした。

実際に駅へ行き、取材を始めると、その猫はスタスタ…と、やって来て、改札の上へ飛び乗り、身繕いをした後で昼寝を始めます。

駅員さんに聞くと、昼間の利用者が限りなく少ないので、こうして寝ていても邪魔にもならないし、学校帰りの学生さんがなでなでして可愛がっていたりもするとの事。朝夕はラッシュにもなるので、猫はどこかに隠れているのかと思えば、通り過ぎる乗降客を見守っていたりもする事があると聞きました。

そう。今で言えば立派に『駅長さん』です。

写真も撮り、取材を終えて、会社に戻り、記事を書いていると、鉄道会社から電話がありました。

「記事にしないで欲しい。記事にするなら、猫は処分します。」

鉄道会社の広報の人は、確かにそう言ったのです。耳を疑うってのも確かにあるんですな…。駅としては猫の存在を自然の一部として捉え、その存在を黙認していたワケでありますが、鉄道会社、企業としては記事にされると困ると言うのです。

「本来、猫でも犬でもいるべき場所じゃない所ですし、猫を快く思わないお客さんもいらっしゃるワケで、猫がいる…と言う事が広く知られては困る…」

まぁ、そんなのが理由として伝えられたワケです。ただ、この時点では既にローカルな新聞では報じられた後で、一般紙では良くて、専門誌だとダメなのか? って疑問はありましたが…

「この猫に関して記事にするなら処分します。」

の一点張りでしたな。コイツは処分という意味がホントに判ってンのか? と、怒りも覚えましたが、穏やかな寝顔でひなたぼっこに夢中になっている、あの猫が処分されるとなれば、記事は書けませんわな…。

当初、そうした猫の存在を記事にする事を編集部で話していたので、出来上がった記事が違っていたワケですから上席に叱られましたっけ…。

そんなこんなを含めて記事にしちゃえ! って声もありましたけれどね、鉄道会社の敷地内の事だし、そこでの飼育を前提に存在する猫でもありませんから、処分する権利も主張も鉄道会社にあるワケでね、結構な時間、すったもんだした挙句に結局は記事はボツになったのであります。

そりゃ悔しかった。いろんな意味で。

駅からちょっと離れた高台に、駅を見下ろせる公園がありました。そこで、泣きました。記事に出来なかった事が悔しかったワケではないんです。他にも書ける記事はあったし、締め切りに追われていたワケでもなかったですからね。

もしかしたら、自分が取材した事で、あの猫が処分されてしまうかもしれない…って事と、処分は免れても、安息の地を追われてしまうんじゃないかと悩んだんです。そう考え始めたら、とても心配になってきて、取材と称して会社を抜け出し、駅へ…。

駅長さんは不在でしたが、次席の方がいたので全てをお話しし、猫が今まで通りであって欲しい事を伝えると…

「ウチもひでぇ事言うなぁ…誰だ? 広報って? 心配ないですよ。駅だけじゃなく地域のアイドル始末しちゃマズイでしょ、いくらなんでも…」

その言葉が聞けただけで、ものすごく力が抜けちゃったんです。

駅を見下ろす公園で泣いていると、駅では見なかった別の猫がやってきました。
誰に飼われているでもない、ひょっとしたら1週間後はあの世へ送られてしまうかもしれない猫です。

「おまえも、駅へ行け。アイドルになれば少しは…」

動物愛護に関する法律が出来る前でしたから、野良猫や野良犬ってモノがモノだった時代です。今でも基本は変わりませんが、遠慮無く炭酸ガスであの世へ送られる事も取材していたので。

多少の悪さはしても、多くの人を和ませる力が人よりも強いのに…と思うと、涙がぶわぁぁぁ…っと…。猫1匹救えないのか…オレは…とも痛感しましたよ。専門誌で猫の記事書いてるのに、猫に報いる事が何一つ無い…。

まぁ、迷惑な存在として…って事も確かにあるので、ムズカシイんだと思うんですな、企業としては…。今でも同じだと思うのです。そこに、癒しだとか、安らぎとか、そうしたトコロを見いだしてあげれば、野良が野良でなくなるし、与えるだけでなく、受け取れるものも大きかったり出来るのですね。

あの頃、こうした駅長さんの誕生は、密かな夢でもありました。誰を待つでもなく、駅を利用する全ての人を見守る人間以外の小さな存在を、出来れば伝えたかったんですけれどねぇ…。非公式ながら、そうした存在は当時幾つかの駅で確認はしていたのですが、記事にはしませんでした。鉄道会社から「取材も掲載もOKです」って所もあったのですが、あの猫に何かが及ぶんじゃないかと…。

いつも通り…で、いてくれたらそれでいいと思ったんです。記事にする事で、あの猫のいつも通りが変わってしまう事があったら、猫に報えない…。

あの猫に出会ってしまった、あの時代がくやしいですな…。


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