あれは,あれで良いのかなPART2

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地域防災計画の見直しは,緩すぎても厳しすぎても無意味なので,「減災」を考えよう

2011年05月22日 23時05分09秒 | 災害・危機管理
東日本大震災の影響を受けて,各自治体において地域防災計画を見直す動きが出てきています。
また,各企業でも,BCPの改訂等が急務となっています。

14世紀に東南海・南海地震連動…伊勢神宮史料(読売新聞) - goo ニュース

基準が難しい

今回の大震災,過去の記録からみると,まさに「1000年に1度の災害」であったと言えるかもしれません。それくらい,凄惨な災害であったと言えるでしょう。
それを踏まえて,まずは災害想定範囲を見直そうというのが,防災計画改訂の第一歩になります。それ自体は,正しい発想です。
ところが,「それなら1000年に1度災害が発生するエリアまで網羅しよう」っていう厳しい計画を考えてしまうと,実は,結構微妙でして,いわゆる「狼少年現象」を発生させ,結果的に無用の長物になりかねないというリスクもあるのです。
分かりやすく言えば,1000年に1度災害が起こるエリアには,999年間,災害は起こらない訳ですから,毎回避難警報等を出しても,やがて信用されなくなり,警報自体が無視されてしまいます。そうなると,1000年目の大災害が本当に起こっても,避難活動をしない人が多数発生し,結果,被害がでてしまうというリスクが起こりうるわけです。
反面「じゃあ,現状で」ってすると,これまたやはり,1000年に1度の災害に対処できない訳ですから,やっぱり甚大な被害が発生してしまうのです。
したがって,このバランスが非常に難しいのです。

そこで,防災計画の改訂はもちろんのことですが,同時に「減災」のまちづくりをきちんと見直すことも必須となります。
ただし,ここで注意するのは,「なんでもかんでも作ればよい」っていう訳ではありません。いろんなバリエーションを検討する必要があるのです。
例えば,「スーパー堤防」がまさに1000年に1度の洪水に対応できるなどとして整備していますが,これはまさに「バランスを考える」べき事例です。スーパー堤防があれば,おそらく1000年に1度の洪水に対応できるでしょう。しかし,それにはべらぼうな予算がかかります。また,少しでも工事が終わっていないエリアがあれば,そこが切れます。さらに,川の洪水は守られるかもしれませんが,逆に雨水を河川に排出できず街中にたまってしまうリスクや河口付近で大潮状態になりうるなどというリスクも想定されます。そもそも,堤防が切れる雨量や河川の水量がどの程度なのかという客観的データを集積し,それに対応するべき手段がスーパー堤防以外にもあるかなどという点も検討に値します。
したがって,「スーパー堤防」が本当に妥当か否かについて,さまざまな条件を踏まえてきっちり考えていくことが求められます(決して,スーパー堤防が無用だとは言いません。)。

ところで,こうした計画を見直すにあたっては,今回の大震災の検証作業が必須となります。それは時には被災者の心情を逆なでしかねいない場面も出てくるかもしれませんが,決して誹謗中傷目的ではなく,将来の再発防止のためというものなので,ここは変なバイアスをかけることなく,時間をかけてでもきちんと検証をするべきです
検証ポイントは,いくつかありますが,私は亡くなった被災者のジャンル分け」を行なうことを推奨します。ざっくり言うと,次のような感じです。

1 絶対的被災者(どのような対策を講じても避けられない被害)
2 相対的被災者(想定外の対策を講じれば,避けられたかもしれない被害)
3 物的保全可能被災者(想定内の対策がきちんと講じられていれば避けられた可能性が高い被害)
4 人的保全可能被災者(被災者自身の行動や防災計画の周知徹底等により避けられた可能性が高い被害)


もちろん,複合するものもありますが,このあたりの割合が把握できれば,次にやるべきことが見えてくるでしょう。計画の見直しなのか,徹底なのか,減災のまちづくりなのかなどなどです。

それと,話は少し飛びますが,今回の災害では,長期間町ごと避難という状況を余儀なくされました。以前書きましたが,このようなリスクは原発だけではなく,火山や米軍基地などでも発生しうる話です。
しかし,それ以外の市町村によっても実は,ミニチュアではありますがこうした状況が起こりうる可能性があります。しかも,そのことにほとんどの市町村が対応策手づかずです。
それは,「水道・下水道・ゴミ処理」の施設崩壊です。特に,下水処理場の施設崩壊という災害が発生した場合,実はかなり甚大な被害が発生します。施設周辺住民は,相当期間避難を余儀なくされる可能性が高く,また下水道の広域処理が進んでいるため,使用不能時の下水処理対応は,浦安市のそれを数倍超える相当大変なことになってしまいます。
これも災害によるリスクの一つと言えますので,もしこのあたりのリスクを検討していない市町村があれば,早急にリスク対策や避難対応などについて検討するべきでしょう。

防災計画,作るのはかなり大変ですし,日本中100メートルの堤防でくるむような計画は確実にナンセンスですから,ある程度現実路線で検討しなければなりません。このあたりのバランス,非常に難しいと思いますが,住民の安全確保のため,きっちり見直してもらいたいものです。
そして,一番大切なこと,それは「周知徹底」です。防災計画は実践されてなんぼですから,作っただけで満足しては,単なるアリバイ作りに過ぎません。住民の全員が知っていること,そしてその市町村に来ている人が避難場所等を把握できるようにしておくこと,これが一番大切なのです。極論ですが,今の防災計画をほとんど見直さなくても,この周知を100%行なえれば,実はそれだけでも災害の被害を最小限にすることができるのです。それくらいの内容が網羅されているのです。

みなさんは,自分の避難場所,ご存知ですか?学校や職場にいるときの避難場所はご存知ですか?非常用の食料や水等はどのくらい備蓄していますか?このあたりが全く分からない場合は,もしかすると,「アリバイ作りだけの防災計画」の市町村っていう可能性もあり得ます。そうなると,本当の災害の時,まったく計画どおり動かないっていうリスクもありますので,すぐにでも非常食等の確保や自分の避難場所等を確認しましょう。きっと,市町村役場の配給はあてになりませんよ。
逆に,きっちり把握していれば,ある程度安心して生活していても大丈夫でしょう。


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