「僕は僕の宇宙の中心へ中心へと向かう」 薬王華蔵
僕を掘って掘って掘って行ったら?/何処へ行き着くんだろう/どっかへ行き着くはず/僕はその疑問に駆られて/今日は思い切って/勇気を奮い起こして掘り進んでみた/
僕の足の下にも/古い僕がいて/その僕の足があって/その足の下にもまた/それより古い僕がいて/その僕の足があって/その足の下にも/またまたより古い僕がいて/その僕の足があって/こうしてずんずん深くなる/
掘り進める掘削機の下にすぐ次の僕が覗いている/古くなった僕がいる/地下二階建て/地下三階建て/地下四階建て/こうしてずんずん深くなる/ここにエレベーターを設置する/掘削機を載せて下りていく/こうやって僕の宇宙の/中心へ中心へ向かう/
不思議なことに/掘り下げた僕はどれも生きている/死んだと思っていたのに/死んでいない/全く新しい構造になって生きている/もちろん物質ではない/物質次元ではない/これが僕の宇宙の神秘の構造なのだ/
一番新しい僕/つまり西暦2017年に生きている僕だけが/まだ物質になっている/非物質の僕は/10の10乗の/そのまた10乗の10乗ほどもいて/それからさきはもう不可算になっている/その分だけ次元が新しくなっている/古くなるほど新しい次元に進んでいる/
僕は僕の方向が分からなくなる/古くなる分だけ/新しくなるなんてことが/あるだろうか/先に死んだ僕であればあるほど/新しい次元を生きている/こんなことが/実際に起こっている/それを目の当たりにしながら/僕は僕の地球の中心へ中心へ向かう/
音楽が聞こえる/楽しい音楽が聞こえる/僕は次へ次へ楽しくなる/その音楽もまた/どんどん楽しさを倍加させていく/