生まれてからの７９年間＋生まれる前の厖大なα時間を加えた全期間、わたしは守られて来ました。助けてもらいました。導かれてきました。必要不可欠のパワーを惜しげもなく与えられてきました。強欲なわたしは、宇宙の重さの分広さの分のエネルギーをありったけ消費させてもらいました。
貰い過ぎています。明らかに貰い過ぎています。
貰い過ぎているのにまだ欲しがっています。まだまだ生きたいと願っています。強欲が過ぎます。
これから先の分の幸福請求書、長生き要求書なんか出さずに、これまでの１兆億枚の領収書で満足をしていいはずです。いつだって終わりが来てもいいはずです。これまでの分の圧倒的なサポート量の多さにただただ感謝していていいはずです。つくづく強欲が過ぎているなあと思います。
病苦を苦にしています。お爺さんは死ぬのを苦にしています。
朝食後、台所で、昨日一日ベランダに干していた高菜の、塩揉みをした。右手に力を加えてザックザック音出して。塩揉みした後は、大きな桶に列べた。乾燥唐辛子をぱらぱら撒いて加えた。お爺さんでもこんなことくらいならまだできる。
畑の高菜をみんな抜いた。ベランダの水洗い場で丁寧に洗った。籠に列べていま干しているところ。明日になればまた塩揉みをして大きな桶に加えようと思っている。塩加減が難しい。不足すると蛆が湧いてしまう。我が家の１年分の高菜漬けにする。
痘痕（あばた）が笑窪（えくぼ）に見えるって、いいなあ。平和だ。人を好きになると、そう見える。マイナスなんて気にならなくなってしまう。
＊
その反対はイヤだなあ。人の笑窪も痘痕にしか見えないって、イヤだなあ。そう見えているときには、疎んで、戦争を仕掛けたくなるだろう。人を憎むとそうなる。
＊
痘痕は笑窪なのだ。笑窪も痘痕なのだ。窪みに過ぎない。それを人の目がどう見るかで、違いが出る。どっちにでも転ぶ。
＊
此処は地獄にも極楽にもなるところだ。イヤダイヤダをしていると地獄になるし、いいなあいいなあしていると極楽になる。
＊
イヤダイヤダの地獄は住みにくい。住みにくいところに住んでいるよりも住みやすいところに住んでいる方が気楽だろう。
＊
桜が咲く頃になった。何処へ行っても桜が出迎えてくれる。キレイだキレイだを百回つぶやいて、浮かれることにする。笑窪を拵えて、浮かれ勝ちにする。
＊
桜が咲くのは一年に一度のこの頃だけ。一年待っていたことになる。キレイだキレイだには１年分がぎゅっと凝縮されている。
＊
人を好きになると、世界が好きになる。美しい風景を愛でていると世界全体が美しく見えて来る。そういう世界に己が生きていることが嬉しくなってしまう。
四月１日。エイプリルフール。嘘をついていい日なのだが、嘘をつく相手がいない。お天気がいい。桜が一斉に開花しただろう。サクラサクラサクラなのに、あはれ、桜見の仲間もいない。
隣町の「吉野麦米店」に行って、茄子苗２本、ミニトマト苗２本、大玉トマト苗２本を買ってきた。草丈１０ｃｍほどの小ささ。どれも１苗５５円。ここの店のが安い。
帰宅して、畑に植え付けた。今春のお爺さんの砂遊び土弄りの始まり始まりー。草取りをして畝を盛り上げて、耕有機鶏糞をどっさり撒いて、ふかふかになるまで耕して、そこに苗を移植して、たっぷり水撒きをした。
ここまで２時間経過。小さな家庭菜園が誕生した。お爺さんはままごとをしてよろこぶ幼稚園児の、そのあどけない顔になった。ままごと遊びは老いても楽しいのだ。（顔自体はしわしわのお爺さん顔だが、嬉しがるこころが皺をほほえみ波にしている）
外は夏日。暑かった。気温は２１℃もあった。夏だ。汗を掻いた。着ていたシャツを脱ぎ変えた。
