なんだかんだ、かんだなんだ。慰めること慰めること。他の誰もそうしてくれないことが分かっているので自分で自分の所行言説、所在所信を宥め賺しする。それでいいとする。それもこれも是とする。いい加減なものだ。だからいずれも底が浅い。馬の足が見えているが、仕方がない。垂らしたスカート(裳裾)では隠せない。
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こうでなければならない。こうあるべし。こうせよ。これが正しいなどという条項も世の中には羅列している。これ見よがしだから、さぶろうだって見ていないわけでもないが、見て見ない振りをしてこの戒めを歩きすぎる。立ち止まったところでそれが出来るわけではない。不逞の輩の一人、さぶろうである。正しいことができるわけがない。
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閻魔大王様の最終の裁判があるのなら、通るわけがない。抗弁はするまい。抗弁くらいで庇いきれる算段は立たない。通れなかったらどうなるのか。そのまま地下牢に押し込められるのか。それとも押し返されるのか。やり直しを義務づけられたって、しかし、それで改悟ができる当てもないだろう。
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覚悟を決めておくしかない。といったって、策があるわけでもない。俎の鯉は跳ねない。鯉ほどの度量がないさぶろうは、万策尽きた態でそこにじっとしているだけである。
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玉名温泉を流れる大川沿いには菖蒲園がある。橋の上から見下ろしただけだが、花見客が溢れているようだった。立ち寄らずにそこも通り過ぎた。何事もそこそこにして通過する。可もなし不可もなし。可と不可とに執着をしなければ、裁判を逃れられるというわけでもないが。