知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

通常実施権者に独占的通常使用権が認められなかった事例

2007-12-15 22:24:03 | Weblog
事件番号 平成19(行ケ)10169
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成19年12月13日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 田中信義

『第4 当裁判所の判断
1 原告は,本願発明1の目的について,「被粘着側のフィルムが薄いことと,この薄いフィルムに対して引き裂くことなしに複数回粘着と剥離を繰り返すことができるということの双方を同時に満たすところにある」とし,本願発明1は,このような目的を達成するために「包装本体の厚さとテープファスナの『動的剪断強度』なる物性値の双方を構成として規定している」ところ,審決は,相違点1,2について個別に判断したために進歩性の判断を誤ったと主張する

 原告の上記主張に理由があるというためには,本願明細書の特許請求の範囲の記載や発明の詳細な説明の記載から,審決が認定した相違点1,2に係る本願発明1の構成が互いに関連していることが裏付けられる必要があるほか,引用文献に記載された発明に基づいて,相違点1に係る構成と同2に係る構成を同時に採用することに阻害要因があるなど,本件特許出願当時の技術常識から,当業者が上記各相違点に係る構成を同時に採用することが容易であるということができない事情が認められる必要がある。・・・』

『・・・
3 特許請求の範囲の記載及び上記2の本願明細書の記載によると,請求項1には,フィルム包装紙の厚さと接着ファスナシステムの動的剪断強度について個別に記載されており,本願明細書には,その技術的意義に関して,フィルム包装紙は,他の補強する手段を要しなくとも破れることがないよう,また材料コストを減少させる観点から,厚さを約0.020㎜(0.8mil)~約0.036㎜(1.4mil)にした比較的薄いものを採用することが記載されているものの,動的剪断強度との関連でその厚さを決定したかどうかや,動的剪断特性を約900g/cmよりも大きくした場合に,フィルム包装紙の厚さを変化させるべきかどうかについての明確な記載は見当たらないといわざるを得ない。

 そうすると,本願明細書において,本願発明1のフィルム包装紙の厚さと接着ファスナシステムの動的剪断強度についての事項が,相互に技術的な関連性を有する事項として記載されているとまでいうことはできないから,審決が相違点1と同2を認定した上,個別に判断したことに誤りはないというべきである。』

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