知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

禁反言の法理を適用した事例

2009-12-23 10:53:43 | Weblog
事件番号 平成21(ワ)18950
事件名 特許権侵害差止請求反訴
裁判年月日 平成21年12月16日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 岡本岳

(3) 構成要件Fについて
ア 本件発明の構成要件Fは,「送信後3つのチャンネルの信号を再構成しモニター上に蛍光の映像と背景の映像を融合させ,同時にかつ同じ画面で見るところを特徴とする」であるところ,「3つのチャンネルの信号を再構成しモニター上に蛍光の映像と背景の映像を融合させ(る)」の技術的意義は,本件特許請求の範囲の記載からは必ずしも一義的に明らかではない。

イ (ア) そこで,本件明細書を見ると,「発明の詳細な説明」には次の記載がある。(甲2)
・・・
(イ) 上記のとおり,・・・,上記のような3色方式以外の構成(・・・)は,本件明細書の詳細な説明及び図面には示されていない。
・・・
 したがって,本件明細書の詳細な説明及び図面に記載されているのは,白黒CCDの前に濾過フィルターを置き,青,赤,緑の3色の照明光を照射して得られる信号を,・・・1対1対応の関係でモニターに入力することによって,3色の照明光により得られる3つの信号のすべてをモニター表示に用いる発明であると認められる。
・・・

ウ(ア) さらに,原告は,平成15年7月10日付け「特許異議申立に対する意見書」(甲9)において,本件発明について,次のとおり主張している
・・・
(イ) このように,原告は,上記引用箇所において,本件発明の映像は青,緑,赤の3つのチャンネルの信号(3色)から構成されているので,赤と緑の2色しかない甲6(特表平10-500588)発明に比べて優れている旨を繰り返し主張していたことが認められる

エ 上記イ,ウのとおり,本件明細書の記載及び特許異議手続における原告の主張内容からすれば,本件発明の構成要件F「送信後3つのチャンネルの信号を再構成し」とは,CCDの3つのチャンネルの信号をすべて用いてモニター上に映像として再構成することをいい,また,そのような構成に限定されるものと認めるのが相当である。

 この点,原告は,本件発明の構成要件Fについて,CCDの3つのチャンネルの信号をすべて用いて再構成することに限定されない旨の主張をするが,同主張は,特許異議手続における前示の経緯に照らし,いわゆる禁反言の法理に反するものとして許されないというべきである

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