知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

明示的示唆がない場合に組み合わせの動機づけを認めた事例

2013-05-26 22:53:52 | 特許法29条2項
事件番号 平成24(行ケ)10183
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成25年02月14日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
特許法29条2項 動機付け

 また,原告は,エンコーダ自体は周知技術ではあるが,引用例にはエンコーダ等によりバンドの位置を自動的に測定することについて特段の示唆はないから,引用発明に,胸部圧迫装置に係る引用発明とはその機能が本質的に相違する周知例1ないし5の周知技術を適用する動機付けを認めることはできないと主張する。

 しかしながら,引用例には,引用発明の電気モータをマイクロプロセッサ回路により制御することを示唆する記載があるところ,自動的な制御を実現するためにはバンドの位置情報を把握することが必要であることは明らかであるから,エンコーダ等の測定機器を用いることについて,動機付けを認めることができる

 また,周知例1ないし5は,胸部圧迫装置に係る文献ではないが,エンコーダに係る周知技術は,幅広い技術分野にわたるものである上,人体の一部に巻き付ける帯状物の巻付け状態を把握するという目的において共通しており,当該目的のために胸部圧迫装置に適用することを妨げるものではないし,原告が主張する機能の相違も,引用発明と周知例1ないし5との技術分野の相違に伴う用途の相違にすぎないものである。

確認の利益が認められないとされた事例

2013-05-26 22:41:18 | Weblog
事件番号 平成24(ワ)2303
事件名 ドメイン名使用差止請求権不存在確認請求事件 
裁判年月日 平成25年02月13日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 大須賀滋、裁判官 小川雅敏,西村康夫

 すなわち,被告は,本件ドメイン名の登録に関し,原告とJPRSと間の法律関係を規律する本件登録規則(及びそれと一体をなす本件紛争処理方針及び本件手続準則)に則して,登録契約内容の変更(登録の移転)を求めているものであり,その主張する事由は,米国シティバンクの本件各商標に由来する権利又は正当な利益ではあるが,被告自身が本件各商標について,商標権や専用使用権を有することを主張するものではない

 したがって,仮に,本件訴訟において被告に本件各商標についての商標法上の使用差止請求権が存在しないことを確認してみても,被告が本件各商標について米国シティバンクから許諾を得ているという事実関係が本件ドメイン名の登録の移転を基礎付け得るものである以上は,原告の本件ドメイン名の登録に関するJPRSとの間の契約関係に基づく地位についての不安,危険は除去されないものといわざるを得ない。
 そして,原告と被告との間には,本件訴訟提起以前において,本件裁定に係る申立て以外に紛争はなかったのであるから,本件各商標の商標権に基づく本件ドメイン名の使用差止めという紛争は存在しなかったというほかはない。

 そうすると,本件は,判決をもって法律関係の存否を確定することにより,その法律関係に関する法律上の紛争を解決するものではないから,確認の利益が認められない

 この点,・・・,本件ドメイン名を使用する権利があることの確認を求めるのが相当であったと解される。なお,当裁判所は,原告に対し,本件ドメイン名を使用する権利があることの確認を求めるか否かを釈明したが,原告は訴えの変更をしなかったものである。

(3) 以上のとおり,本件訴えは,確認の利益がなく不適法であるから,却下を免れない。

引用例の組み合わせを否定した事例

2013-05-26 22:11:52 | 特許法29条2項
事件番号 平成24(行ケ)10181
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成25年02月07日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 池下朗,古谷健二郎
特許法29条2項

 また,甲2公報に開示された上記(1)の式は,甲1発明とは異なり,電流の条件に応じた式の使い分けをするものではないから,甲2公報に開示された式を甲1発明に適用するためには,甲1発明について,電流変化の状態に応じた条件分岐を取り除く変更を行う必要があるが,このような変更を行うと,甲1発明が対象とするアーク放電による発熱についての計算を行う(3)式の適用ができなくなり,甲1発明の果たしていた機能(・・・)を達成することができなくなる

 以上検討したところに照らすと,甲2公報に開示された式を甲1発明に適用することが容易に想到し得たとはいえない。