知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

まとまりのある1個の技術としての周知技術の認定、文言が明確でない特許請求の範囲の解釈

2013-05-01 22:38:26 | 特許法29条2項
事件番号 平成24(行ケ)10126
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成25年01月31日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 土肥章大、裁判官 部眞規子,齋藤巌

3 本件審決の理由の要旨
・・・
イ 周知技術2:ピストンリング手段がシリンダの噴射ノズルが取り付けられるリング領域を通過する直前の段階で,潤滑油を噴射すること(周知例3及び4)
・・・

第4 当裁判所の判断
・・・
そうすると,シリンダ油を注油することが噴射に相当するとしても,シリンダ油を噴射する時期については,ピストンリング手段がシリンダの噴射ノズルが取り付けられるリング領域を通過する直前の段階で潤滑油を噴射する構成が含まれているものの,その構成のみが独立して周知例3記載の技術の持つ課題を解決するものではないから,上記構成をまとまりのある1個の技術として周知であると認定することはできない
 したがって,周知例3によって,周知技術2を認定することはできない。
・・・
 また,被告は,本件補正発明の特許請求の範囲には「ピストンリング手段がシリンダの噴射ノズルが取付けられるリング領域を通過する直前の段階で,潤滑油を噴射する」とは記載されていないから,原告の主張は,特許請求の範囲の記載に基づくものではないとも主張する。

 特許請求の範囲の文言自体は,必ずしも明確ではないが,本件補正発明は,前記1のとおり,シリンダ油を特定の時間に各部に供給し,そのシリンダ油は,ピストンが上方向に移動する際,ピストンが潤滑箇所を通過する前にシリンダの表面上に分散されるようにして,シリンダ周面上にオイルを一層良く分散させ,オイルをより有効に利用することができるとともに,シリンダ寿命とオイル消費との関係を期待どおり改善することができるというものであるから,ピストンリング手段が前記シリンダの前記リング領域を通過する直前の段階でオイルミスト噴射を起動させるように制御手段が作動可能なものであると解することができる。したがって,被告の上記主張は理由がない。

著作権登録の際の説明義務

2013-05-01 22:15:09 | 著作権法
事件番号 平成23(ワ)40129
事件名 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成25年01月31日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 高野輝久 ,裁判官 三井大有,志賀勝

第3 当裁判所の判断
1 争点1(文化庁長官の行為が国家賠償法上違法であるか否か)について
(1) 原告は,原告が本件各登録申請を行った際,文化庁長官は,本件担当職員をして,原告に対し,本件各登録をしたからといって著作権の権利者という地位は保証されない等の説明をさせるべき職務上の法的義務を負っていたのに,これを怠った違法があると主張する。

 しかしながら,文化庁長官がかかる義務を負うことにつき定めた法令はないし,仮に文化庁長官が「著作物でないもの」や「著作物かどうか不明なもの」を著作権登録しているという事実を認識しているとしても,これにより文化庁長官が上記のような義務を負うこととなるわけではなく,その他文化庁長官がかかる義務を負うことを認め得る根拠もない。したがって,原告の主張は,前提を欠くものであって,採用することができない。