知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

特許請求の範囲の解釈事例

2012-06-07 23:06:41 | 特許法29条2項
事件番号 平成23(行ケ)10277
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年05月31日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明


(ア) 本願発明の意義及び相違点について
 本願発明の特許請求の範囲は,第2の2記載のとおりである。
 本願発明の特許請求の範囲の記載によれば,挿管液体吸入法用液体呼吸剤が全液体呼吸のための呼吸剤であるとの限定はないこと,同明細書の記載を参照しても,「部分液体呼吸」を排除する記載がないこと,引用例A及び乙1文献によると,本願の優先日当時,液体呼吸には全液体呼吸と部分液体呼吸があることは,当業者に周知であったと認められること等を総合すると,本願発明における挿管液体吸入法用液体呼吸剤は,全液体呼吸のみに使用され,部分液体呼吸への使用を排除するものと解することはできない

 他方,上記(1)によれば,引用例Aには,・・・,部分液体呼吸のため,挿管液体吸入法に使用することが開示されているといえる。そして,前記ア及びイも総合すると,引用例Aに記載されている発明(本件引用発明)の内容は,「・・・,部分液体呼吸に用いられる挿管液体吸入法用液体呼吸剤」であると認められる。
 そうとすると,本件引用発明が「部分液体呼吸に用いられる」挿管液体吸入法用液体呼吸剤であるとの点は,本願発明との相違点にはならない。したがって,本願発明と本件引用発明との相違点に関する審決の認定に誤りはなく,本願発明と引用例A記載の発明との間に第3の1(2)記載の相違点2があるとの原告の主張も,採用できない。