知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

製造方法が容易でないことを理由に、物の発明の本願発明が容易でないとする主張の当否

2012-06-04 22:38:40 | 特許法29条2項
事件番号 平成23(行ケ)10345
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年05月31日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明

イ 原告の主張に対して
 原告は,
 ○1 刊行物1記載の方法によって製造された砥粒分散液と刊行物2記載の方法によって製造されたスラリーとを混合した場合,・・・,混合前の粒径0.5μm以上のヒュームドシリカ粒子及び粒径1.0μm以上のヒュームドシリカ粒子とは粒子数が異なってしまうこと,
 ○2 刊行物1と刊行物2とでは,・・・高圧ホモジナイザーの圧力が異なるため,どちらの圧力で分散させるとしても,刊行物1又は刊行物2に記載された実施例とはヒュームドシリカ粒子数が異なってしまうことから,刊行物2に記載された事項を引用発明に適用するだけでは,粒径0.5μm以上のヒュームドシリカ粒子及び粒径1.0μm以上のヒュームドシリカ粒子の各粒子数を本願発明の範囲内とすることは容易ではない
と主張する


 しかし,本願発明は,粒径0.5μm以上のヒュームドシリカ粒子及び粒径1.0μm以上のヒュームドシリカ粒子の各粒子数を一定の範囲内とする半導体研磨用組成物についての製造方法の発明ではなく,物の発明である。粒子数を一定の範囲内とする方法は,上記①(混合)や②(高圧ホモジナイザーによる分散)に限られず,分級や加水による希釈などの周知技術も採用し得るのであり(乙1ないし4),これらの手段を適用することによって,粒子数を一定の範囲内とすることは可能であるから,半導体研磨用組成物の製造方法が容易でないことを理由に,本願発明が容易でないとする原告の主張は,主張自体失当である