知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

複数引用形式で開示のない態様の発明を請求した事例

2007-08-30 06:58:51 | 特許法36条4項
事件番号 平成18(行ケ)10542
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成19年08月28日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

『ウ 上記ア,イによれば,本件発明7は,本件発明3~5のいずれかの発明を引用するものであるが,本件発明3は,「…請求項1または2に記載されたガス遮断性に優れた包装材。」と記載されており,本件発明4は,「…請求項3に記載されたガス遮断性に優れた包装材。」と記載されており,本件発明5は,「…請求項3または4に記載されたガス遮断性に優れた包装材。」と記載されている。そうすると,本件発明7は,結局,本件発明1を引用するものであるから,無機薄膜は「…プラズマCVD法により形成された薄膜…」(本件発明1)であるが,他方,上記アに記載した本件発明7の文言によれば,上記膜は「シリコン酸化物膜がモノ酸化ケイ素と二酸化ケイ素の混合物を真空蒸着により被覆した膜」というのである
そうすると,本件発明7は,モノ酸化ケイ素と二酸化ケイ素の混合物を真空蒸着により被覆した膜であり,かつ,プラズマCVD法により形成された薄膜を,発明の内容として含むことになるが,前記2,(2),ア~ウに照らしても,このような複数の方法による被覆に対応する実施例は何ら記載されておらず,また,その他の発明の詳細な説明中の記載においても,これを実施するについての具体的な説明が記載されているとはいえない
以上によれば,本件発明7については,当業者が容易にその実施をすることができる程度に,その発明の目的,構成及び効果が記載されているということはできないから,法36条4項に違反するものである。したがって,本件発明7について検討するも,取消事由5は理由がない。』