知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

反論の機会(主引用にしないように受取れるを引例を主引例として審決)

2006-06-04 06:30:57 | 特許法29条2項
事件番号 平成17(行ケ)10710
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成18年05月31日
裁判所名 知的財産高等裁判所

『拒絶査定は,拒絶理由通知における理由を引用したものであるところ,拒絶理由通知では,請求項1(本願発明)の関係で,「引用文献1」として特開平11-069024号公報(甲6)が引用されているにとどまり,審決で刊行物として引用されている特開平11-088521号公報(甲7)は,「引用文献2」として,請求項2及び3の関係で引用されているにすぎない。
したがって,本願発明との関係では,審決で引用されている刊行物は,拒絶理由通知及び拒絶査定においては引用されておらず,審決において初めて引用されたものであるから,審決は,本願発明について,拒絶査定とは異なる理由により容易想到性の判断をしたものであり,特許法159条2項にいう「拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合」に当たるというべきである。』

『また,実質的にみても,拒絶理由通知において,引用文献2に開示された事項として指摘されているのは,「広告情報として,複数のものを表示し,ユーザが選択可能にすることは,周知の事項である」というものであり,同通知を受けた特許出願人(原告)が,本願発明に関して,審決が認定したような引用発明(受信側の携帯電話機の表示画面を広告媒体とし,該表示画面に受信側に対し通話時に予め依頼された広告を表示するようにする携帯電話機を通じた広告方法。)が開示されていることを想起させる余地のないものであるから,特許出願人は,この点に関して意見書の提出等の手段を講ずる機会を実質的にも得られなかったものである。したがって,審判手続において,上記の点に関する新たな拒絶の理由を通知しない限り,特許出願人は,上記の点に関して反論の機会を与えられないまま審決を受けることを余儀なくされるものであり,これが特許出願人の防御の機会を不当に奪うものとなることは明らかである。』

<拒絶理由通知の記載ぶり>
『「この出願の下記の請求項に係る発明は,・・・下記の刊行物に記載された発明に基づいて,
・・・容易に発明をすることができたものである」
「記(引用文献等については,引用文献等一覧参照)」
「請求項1・・・について引用文献1
引用文献1には,サーバ装置が,通信端末からの情報に広告を付加して,相手端末に送信
することが記載されている。・・・
発側端末から発信者番号が相手端末に伝達されることは,本願出願前に周知である。」
「請求項2,3(請求項2を引用する場合)について引用文献1~3広告情報として,複数のものを表示し,ユーザが選択可能にすることは,周知の事項である(文献2,3参照)。
 引用文献等一覧
1.特開平11-069024号公報
2.特開平11-088521号公報」』

<拒絶査定の記載ぶり>
『「この出願については,平成14年10月17日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって,拒絶をすべきものである。」
「備考
出願人は,平成14年12月26日付け意見書において,引用文献1(特開平11-069024号公報)記載の発明が,・・・本願発明とは相違し,本願発明が引用文献記載の発明を基にしても当業者にとって容易になし得たものではないと主張する。・・・
・・・出願人の主張は妥当でなく,本願の請求項1,4に記載された発明は,当業者であれば容易になし得たものと認められる。
なお,請求項2,3,5,6に係る発明についても,平成14年10月17日付け拒絶理由通知書で指摘したとおり,当業者であれば容易になし得たものと認められる。」』