のら猫の三文小説

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香奈とコシロの子供たち No.6

2013-06-04 00:04:16 | 香奈とコシロの子供たち

チャとココの秘話




コシロと関係を持った茶色の猫は、三匹の子供を産んでいた。白い猫が二匹と茶色の猫が一匹生まれていた。白い猫の一匹はよちよち歩きの時にスイスからきた留学生に見つかり、引き取られていた。茶色の母猫は苦労して、二匹の子猫を育てて、厳しく躾ていた。


コシロが死んだ時に、夢枕に立ち、茶色の猫に別れを告げ、子供たちには大きな使命があるので、宜しく頼むと言った。三匹の子猫が生まれ、一匹の猫はやがて多くの人を慰め、元気づけ、多くの猫たちをまとめるようになるので、幼くして別れても嘆かないように、そして残った二匹がその土台を作る猫になる。宜しく頼むと言っていた。


茶色の母猫は、この二匹の猫には、よちよち歩きの時から、寒い窓の外から大学の授業を聞かせ、勉強させていた。茶色の母猫は、いつもコシロが天才猫で、お前たちはその血を継いでいるのだと口癖のように子供たちに話していた。コシロ譲りの頭の良さのある二匹の子猫は、賢くなった。大学食堂の残飯で食うや食わずの毎日だったが、気位の高い猫に育っていった。コシロは、又突然この茶色の母猫の夢枕に立ち、子猫たちを香奈に預けるように言った。 



コシロ「君の事が気になるのだよ。早いけど、こっちで一緒に住む時期になったようだ。」、
茶色の猫「この頃、胃が痛いの、やっぱり駄目なんですね。」、
コシロ「君には、迷惑をさせた。こっちで、のんびり二人で暮らそう。青不動さんの元でゆったり暮らしていけるよ。子猫達には、香奈の手元に預けよう。あの子猫達は、香奈を助けて、やるべき仕事があると青不動さんが言っていた。もう一匹の子猫は海外で人を慰め、元気づける筈だ。君の身体の後始末もしてくれる事になっている。いずれにしても魂は僕と一緒だよ。明日の夜中に君を迎えにくるよ。翌日のお昼頃に真っ赤な屋根のない車に子猫達が乗るように言ってくれ。美術館の前で暫く止まるから、降りるように言ってくれ。後は足が勝手に動く筈だ。」


茶色の猫は、子猫たちに別れを告げた。




茶色の猫「私ももう永くない。お前達に話しておきたい事がある。」、
白い子猫「そんな気の弱い事を言わないでよ。」、
茶色の子猫「そうだよ。」、
茶色の猫
「私はお前たちを厳しく躾てきた。お父さんから言われていたからね。今晩、お父さんが私を迎えにくるんだよ。私はお父さんとは一晩しか一緒にすごしていない。今度はゆっくりと二人で暮らそうと言ってくれたよ。猫は猫同士でゆっくりくらそうとも言ってくれたよ私は喜んでいるよ。一夜だけだったけど楽しい夜を過ごしたからね。人間は知らないけど、一夜の逢瀬が一生の宝となるのが猫の生き方だよ。そう思われる猫になってね。エサなんかに惑われないでね。猫としての矜持を持ってね。


お前達には、お前達の使命があるとお父さんはいっていたよ。明日の昼頃、屋根のない真っ赤な車が大学に来る。それに隠れて、乗りなさい。私の身体は、もう一匹の子猫が、見つけてくれる事になっている。心配しないで、魂はお父さんと一緒なんだよ。お前達をお父さんと一緒に見守っているよ。頑張るんだよ。まだまだお前達の知識も経験も不足している事を忘れないでね。謙虚に知識を求め、経験を積むんだよ。それが猫の生き方なんだよ。



真夜中、茶色の母猫は、足をしきりに動かして、死んでしまった翌日、白い子猫を拾ったスイスからの猫好きの留学生が、スイスに帰ろうと準備していると、白い子猫がしきりに鳴くので、子猫を拾った付近を見て、なにげなく部室の裏を除くと、茶色の猫は冷たくなっていた。スイスからの留学生は、猫好きだったので、茶色の猫の死体を持って帰ると、白い子猫は茶色の猫の死体に泣き崩れ、感じ入ったその留学生は茶色の猫を火葬して、その骨をこっそり、部室の裏に埋め、やがて一部の骨を子猫と一緒にスイスに持って帰った。



茶色の子猫と白い子猫は、冷たくなった母猫と一晩過ごし、黙祷して部室裏から去り、母猫の言われた取り、屋根のない車で大学を後にしていた。涙を浮かべた二匹の子猫は、その車の中から、大学を見ながら、車は敷地内へと走りさっていた。


二匹の子猫は、こっそり外を見て、道を心に刻んだ。車を運転していた良平は、一般道を最短距離を通って、美術館に着いた。奈津実との待ち合わせ時間より早く着いた。良平は暫く美術館前で止まり、少し美術館付近を散歩して、奈津実が来るのを待った。二匹の子猫は不安そうな顔をして車から降りた。二匹の子猫は敷地内に入っていった。知らない場所なのに、足は勝手に動いていた。