のら猫の三文小説

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香奈とコシロの子供たち No.21

2013-06-19 00:29:39 | 香奈とコシロの子供たち


マリア、不思議な取引手法




ジブトラストで働き始めたマリアは、正子と気が合い、話をするようになった。正子は4時頃家に帰るが、3時過ぎ頃から打ち合わせをしていた。正子も夜はゆっくりするようになっていた。神太郎、神子、そして神之助とも話をしていた。マリアは相場なんか出来ないと思い、単に社長室の指示をヨーロッパの取引チームに渡して、ヨーロッパの取引チームが、海外の子会社に指示したり、調整するのを見ていた。


その内にマリアも相場に興味を持ち、香奈や正子に少し、先物をしたいと言うようになった。正子はあっさりと承諾し、香奈も釣られて、認めてしまった。海外の子会社の取引口座を一つ与え、1千万ユーロの資金で先物を取引し始めた。マリアはお腹が大きかったので、そんなには長時間出来なかった。始めは少し買って、上がったら直ぐに売り、少し売って下がったら、直ぐに買い戻していた。正子はもっと長期間保持し、売り買いも両方行っていた。初心者みたいな売り買いをしているマリアには関心もなかったし、もはや、ジブトラストでは1千万ユーロのお金程度ではそんなに影響もなかったので、みんなの関心は薄かった。損が出れば本体から、補填する約束もしていた。マリアのお腹は大きくなり、産月の1ヶ月前には休む必要があった。つわりが酷くて数日間休んで、夕方ようやくジブトラストに来て、自分で手じまいして、直ぐに帰った。



香奈「マリアさんが、少し先物を取引したいと言うのよ。私はお腹が大きいし、相場も初めてだし、止めた方がいいと言ったけど、正子さんがおばさん、少しくらいいいですよと言うから、ジブドイツにマリアさん用の口座を作らせて、取引していたのよ。一千万ユーロで始めて、損が出れば、本体から補填する事になっていたの。


マリアさんは今は休んでいるけど、ジブドイツから連絡があってね。2億ユーロになっているから、どうしましょうとか言っているの。ジブドイツは、精々年間10億ユーロ程度にしか運用利益がないのよ。海外でも低い方なのよ。取引チームの人は、それが5分の1しかないのは、どこに問題があるか調べろとか言ったのよ。それが違うのよ。マリアさん一人で4ヶ月間程度で稼いだらしいのよ。ジブドイツはそんなに先物はしないのよ。株式と商品相場専門みたいな所なの。正子さんの指示で、先物を時々する程度なの。香奈オフィスの時も相場はそんなにしないの。年間の運用利益としては、今年も10億ユーロ程度になるけど、マリアさんの稼いだお金の処理について聞いてきたのよ。

「ユーロと云うのは、いくら位なの。」

香奈「今は120円くらいかな。」

「じゃ、240億を一人で4ヶ月間程度で稼いだの。凄いね。」

香奈「それも12億から始めてね。」

「それは正子さん以上だね。」

香奈「そうなのよ。神子ちゃんも驚いているわ。そんなに大きな波乱もなかったのよ。しかも1日五時間も取引していないのよ。神懸かり的な運用よね。

「でどうするの。」

香奈「一応、ジブドイツとしての取引だからね。利益はジブドイツになるけど、運用手数料に相当する二千万ユーロはマリアさんのものにすると、ジブドイツは言っているの。税金の処理とか色々ややこしいのよ。マリアさんは、まだジブトラストの株主や社員にもしてないのよ。ジブドイツでは税務処理して、マリアさんに、ジブドイツの会社の株を無償配布して現金も渡したいと言って、ジブトラストの了解を求めて来たの。

「そうするの。」

香奈「その方向だけど、でもマリアさんの取り分をそのまま無償配布すると、ジブドイツの株を一杯渡さないといけないから、分散させて、ジブトラストの株も無償配布する予定なの。」

「直接お金は出さないの。」

香奈今度はビキナーズラックかもしれないから、取りあえず社員にして、2億円のボーナスはつけるけど、無償配布を中心として処理するつもりなの。

「それでいいの。マリアさんは文句言わないの。」

香奈「話をしたけど、彼女はあんまりお金には興味ないのよ。」



切人誕生、マリアの取引依然として好調



マリアは男の子の切人を産んだ。その時は、稲妻も鳴らず、流れ星も流れなかった。ただアフリカの砂漠で珍しく雨が降っただけだった。マリアはしばらく産後の回復に努めていた。香奈は検討したが、マリアの身分も不明確だったので、今後マリアの取引による利益の10パーセントをマリア指導料として本体に送金し、必要な処理をしてマリアに渡すが、今回は、マリアの手数料相当分は、本体とジブドイツが話し合い、本体のヨーロッパ担当の取引チーム預かりとしてマリアには、給料の形で2年間に分割して払い、損が出れば差し引く事にし、ジブヨーロッパのロンドン、フランクフルト、チューリッヒの子会社で、300万ユーロ相当の株を無償配布して、ジブトラストの株も3億無償配布する事になった。


マリアとしては手取りは減ったが、ジブトラストのヨーロッパ取引の部長待遇とし、三つの子会社でも特別取引部長になり、マリアチームを作った。子会社には、取引も出来るが、孫会社を作り取引する気もなく、管理の仕事をしている人もいた。そんな人たちをマリアチームとして、管理も兼任しながら、マリアの取引の処理をして貰う事にした。大した仕事もないだろうと思っていた。


マリアチームには、お世話料として、マリアの稼いだ利益の中から、少しは利益比例のボーナスも出る事にした。マリアが稼いだお金の中から、マリアの給料や特別取引部の経費を子会社が引く事にした。子会社は、マリアのために、それぞれ三千万ユーロ相当の資金を用意した。マリアは、ヨーロッパの市場でマリア独自の判断で取引してもいい事になった。


フランクフルトは、マリアが稼いだ資金の一部をロンドンとチューリッヒに送金して、その分を各社へ貸す事になった。香奈はその範囲ならば、損が出ても、問題ないだろうと思っていたし、ジブドイツもマリアの運用で利益も入っていたので従った。マリアも特に文句は言わなかった。


その後もマリアはヨーロッパの市場で取引をしていたが、徹行が迎えに来ると家に帰った。マリアの不思議な儲け方は続き、直ぐに用意された資金の何倍も稼ぎだしたので、ロンドンとチューリッヒは、フランクフルトにお金を返し、独自にマリアのために、倍額の資金を用意した。そしてその額はマリアが稼ぐ度に増えていったが、5億ユーロ相当になり、それ以上の枠の増額は、マリアが断った。


結局マリアは、各子会社で5億ユーロ相当の資金で運用する事になった。マリアは、10時過ぎにはジブトラストから帰った。早い時は9時頃帰った。運用もそれぞれ5億ユーロ相当の資金内で取引をしていた。ヨーロッパの先物は正子も保有株を考慮して、時々指示を出していたが、マリアは別の視点で先物をするようになった。アメリカでも神子や研究所の報告を元に、正子は、時々先物の指示を出していた。正子は、売りから考える癖が身についており、買いは少なかった。


マリアは、大体中立的なスタンスが多かった。買いをしておきながら、細かく手じまいして、新規の売りも入れ、短期、中期の両方で稼ぎ、各市場を万遍なく一巡して、動きそうな市場を中心に取引した。運用枠も余裕を見て、ゆったり取引した。神子のレポートも読んだが、参考にして囚われる事もなかった。どんな優れた取引指針でも、投資は自己責任だと思っていた。無理もしなかった。時間も限定してゆったりと取引した。マリアが買えば上がり、マリアが売れば下がると云う、相場がマリアの云う通りに動いていた。利益は細かいが、損しないので、利益が蓄積されていった。